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JASDIフォーラム 「MRとMSLという敵対組織、すごく嫌だ」杏林大・若林氏

公開日時 2019/07/22 03:52
日本医薬品情報学会主催「令和元年度第1回JASDIフォーラム」が7月20日、東京都内で開催され、今後期待されるMRの情報活動をテーマにディスカッションを行った。医薬品情報の受け手の立場で発言した杏林大学医学部付属病院薬剤部の若林進氏は、「製薬企業という1つの組織の中に、MR、MSL(メディカル)という敵対する2つの組織があるような感じ。すごく嫌だ」と指摘。「売らなくていい人達(MSL)が正義というのは如何か。販売情報提供活動GLができたことで、情報提供活動が少しおかしな方向にいっているように感じる」と述べ、ここ最近の製薬企業の対応に警鐘を鳴らした。医師の立場で発言した横浜労災病院乳腺外科の千島隆司部長は、「MRが医療者と一緒に世の中のために貢献したいというのであれば、既存のままでは駄目だ。構造改革に取り組まなければならない」と述べ、「その道のプロとして職種を独立して立ち上げないと、今の規制の中ではMRの活動はできない」と強調した。

この日のJASDIフォーラムは、「マルチチャネル時代の医薬品情報とMRの情報活動」をテーマに各演者とフロア間で議論を行った。厚労省の販売情報提供活動GLが施行されたことで、MR活動そのものに変革が求められているとの警戒感が製薬業界内に広まっている。フロアからは、従来のMR活動について「マーケティングの圧力が強い。その結果、どうしても情報バイアスがかかっている」など、構造改革に取り組む必要性に言及した意見が見られた。

◎「薬害根絶デーを通じ、安全性を意識するMR活動に転換」MR認定センター・近澤氏

MR認定センターの近澤洋平事務局長は、「これまでのように医師に‟(自社品を)使ってください“とお願いするやり方が通用しなくなってきた。不適切使用を助長するような、エビデンスに基づかない情報提供はNOだと言われている」と強調。「だったら、いままでの延長じゃないことをやらないといけない」と述べ、MR活動の変革に取り組む決意を鮮明にした。

その上で近澤氏は、「私は、安全性情報の収集を徹底すべきだと考えている」と述べ、「これは販売情報提供活動GLに全く抵触しない。ビクビクしながら有効性の話をするのでなく、安全性について徹底的に話をするような機会を期間を決めてやらないか」と提案。8月24日の「薬害根絶デー」をあげ、「今年は無理かもしれないが、来年は業界全体で意識し、安全性を意識するような(安全性情報集中)月間を設けることを提案したい」と述べた。

◎「売らなくてもいい人達(MSL)が正義というのは如何か」杏林大・若林氏

杏林大医学部付属病院薬剤部の若林進氏は、「いま医療現場にいると、MRのほかにメディカルのMSLが訪問してくる。ただ、MRとMSLはあまり仲良くなさそうだ。そこには壁がある」との認識を披露。続けて「MSLがきて‟いまから話すことは中立的な話だ“という。そうなんだと思って聞いているが、何故、MRが同じことをできないのか疑問に思っている」と述べ、「1つの組織の中に敵対する組織が2つあるような感じ。すごく嫌だと思う」と述べた。加えて、「売らなくてもいい人達(MSL)が正義というのは如何か。販売情報提供活動GLができたことで、情報提供活動が少しおかしな方向にいっているように感じる」と、GL施行後の製薬企業の対応に疑問を投げかけた。

◎「患者のナラティブを意識した活動へ」横浜労災病院・千島部長

横浜労災病院乳腺外科の千島隆司部長は、「国は薬剤費を抑えたいからMRの情報提供を厳しくして医薬品の販売を抑えている。MRに対するハラスメントとも思える」と述べ、MR活動が逆風に晒されている状況を擁護した。ただ、「ビジネスマンとして考えるならマーケティングの発想は重要だが、もし医療者として世の中のためになりたいというのであれば、MR活動についても構造改革に取り組まないと駄目だと思う」と述べ、薬効だけでなく、患者・家族が笑顔になれる医療について考える「ナラティブ・ベースド・メディシン(NBM)」を意識した情報提供活動に転換して欲しと訴えた。

◎「2軸バランスは難しい問題」コニカミノルタPMジャパン・小牧ディレクター

コニカミノルタプレシジョンメディシンジャパンの小牧弘典ディレクターは、「そもそも製薬企業の使命がある。新薬メーカーであれば、アンメッドメディカルニーズに応える新薬を開発し、届けることだ」と強調。ただ、公的医療保険の中でのビジネスと、株主対策という2軸のバランスは昔から論じられながらも「難しい問題」と滲ませた。

フロアから発言した日本製薬工業協会(製薬協)の田中徳雄常務理事は、「株主に対し、不適切なことをやって利益あげるということではない」と指摘。「いまやらないといけないことは正しいことをやって利益をあげることだ。当たりまえの話なのだが、利益をあげないと会社が潰れるという人がいるが、それは間違いだ」と強調した。その上で、製薬協として「3だけ活動」の排除を徹底的に行っていることを報告。「その場だけ良かったらいいという活動、売上だけ、利益だけあがったらいいという活動、さらには自分だけ、自分の部署だけ、自分の会社だけよかったらいいという活動、これらを徹底的に排除している。正しい活動を行えば、利益は自然と上がる」と訴えた。


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