新薬薬価収載 5製品が即日発売 がん種問わないロズレートレクなど
公開日時 2019/09/05 03:51
新薬12製品が9月4日に薬価収載され、このうち中外製薬のロズリートレクカプセル(一般名:エヌトレクチニブ)など5製品が即日発売した。同剤は、がん腫を問わずに使用できる抗がん剤で、NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発固形がんを効能・効果とする。また、10年後に売上189億円を見込むアストラゼネカの3剤配合COPD治療用吸入薬・ビレーズトリエアロスフィア56吸入(ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物)も発売を始めた。
発売日(予定含む)が分かった9製品は次のとおり(カッコ内は成分名、製造販売元)
【9月4日発売】
▽ロズリートレクカプセル100mg、同200mg(エヌトレクチニブ、中外製薬)
薬効分類:429(その他の腫瘍用薬(内服薬))
効能・効果:NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発固形がん
薬価:100mg1カプセル5214.20円
200mg1カプセル 9889.90円(1日薬価:2万9669.70円)
がん腫を問わない抗がん剤となる。NTRK融合遺伝子から作られる融合TRKにより、がん細胞の増殖が促進されると考えられている。同剤はTRKの働きを阻害し、増殖を抑えるとされる。NTRK融合遺伝子を標的にする初の薬剤となる。
NTRK融合遺伝子は、様々な固形がんで認められるが、非小細胞肺がんや結腸・直腸がんなどの患者数の多いがん種では1%未満とされる。一方で、患者数の少ない神経内分泌腫瘍、唾液腺がんでは多く認められるという。
▽デファイテリオ静注200mg(デフィブロチドナトリウム、日本新薬)
薬効分類:391(肝臓疾患用剤(注射薬))
効能・効果:肝類洞閉塞症候群(肝中心静脈閉塞症)
薬価:200mg2.5mL1瓶5万3108円
この疾患は、血液がんなどの治療に実施される造血幹細胞移植の合併症として知られている。症状は、ビリルビン値の上昇、体重増加、肝腫大、腹水、黄疸などだが、重症の場合は多臓器不全により死亡率が80%に至る。同疾患に適応のある承認薬はない。医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議を経て、厚労省が開発要請した品目。
▽ユルトミリス点滴静注300mg(ラブリズマブ(遺伝子組換え)、アレクシオンファーマ):
薬効分類:639(その他の生物学的製剤(注射薬))
効能・効果:発作性夜間ヘモグロビン尿症
薬価:300mg30mL1瓶71万7605円(1日薬価13万3587円)
適応疾患は、後天的な遺伝子の突然変異で、慢性的な血管内溶血(赤血球破壊)を引き起こす造血幹細胞疾患で、指定難病。
▽ビベスピエアロスフィア28吸入、同120吸入(グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物、アストラゼネカ)
薬効分類:225(気管支拡張剤(外用薬))
効能・効果:慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解(長時間作用型吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
薬価:28吸入1キット1780.30円(1日薬価254.30円)
長時間作用性抗コリン剤(LAMA)と長時間作動型β2刺激剤(LABA)の配合吸入薬。
▽ビレーズトリエアロスフィア56吸入、同120吸入(ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物、アストラゼネカ)
薬効分類:229(その他の呼吸器官用薬(外用薬))
効能・効果:慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド剤、長時間作用型吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
薬価:56吸入1キット4074.80円(1日薬価291.10円)
吸入ステロイド剤(ICS)、長時間作用性抗コリン剤(LAMA)、長時間作動型β2刺激剤(LABA)の3剤配合吸入薬。
【9月10日発売予定】
▽ロナセンテープ20mg、同30mg、同40mg(ブロナンセリン、大日本住友製薬)
薬効分類:117(精神神経用剤(外用薬))
効能・効果:統合失調症
薬価:20mg1枚278.40円
30mg1枚401.30円
40mg1枚520.20円(1日薬価:1040.40円)
ロナセンは同社が創製した非定型抗精神病薬。すでに錠剤が承認されている。テープ剤は40mgを1日1回貼付し、患者の状態に応じて最大80mgを1日1回貼付できる。24時間ごとに貼りかえる。経口剤に比べて食事の影響を受けにくく、食生活が不規則な患者や、経口服薬が困難な患者への投与を可能にする。
【9月11日発売予定】
▽アジマイシン点眼液1%(アジスロマイシン水和物、千寿製薬)
薬効分類:131(眼科用剤(外用薬))
効能・効果:結膜炎、眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎
薬価:1%1mL302.20円(1日薬価19.40円)
同成分を含有する経口剤、注射剤はすでに承認されている。
【10月10日発売予定】
▽ヴァンフリタ錠17.7mg、同26.5mg(キザルチニブ塩酸塩、第一三共)
薬効分類:429(その他の腫瘍用薬(内服薬))
効能・効果:再発又は難治性のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病
薬価:17.7mg1錠1万9694.90円
26.5mg1錠2万6582.10円(1日薬価:5万3164.20円)
がんの増殖に関与するとされるFLT3の働きを阻害し、増殖を抑えると考えられている。1日1回26.5mgを2週間経口投与し、それ以降は1日1回53mgを経口投与する。
急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄における白血病細胞の異常な増殖の結果、正常な血液細胞の産生が著しく阻害され、治療しないと短期間で致死的になる予後不良な血液疾患。FLT3-ITD変異はAML患者の約25%に認められるとされる。FLT3-ITD変異を有する患者は、変異のない患者と比べ、再発率が高く生存期間が短いとされている。
【10月25日発売予定】
▽イナビル吸入懸濁用160mgセット(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物、第一三共)
薬効分類:625(抗ウイルス剤(外用薬))
効能・効果:A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療
薬価:160mg1瓶4164.40円(1日薬価4164.40円)
既存薬も吸入剤だが、同剤ではネブライザーに懸濁した薬液を投入し、霧状にすることで、自発呼吸で薬剤を吸い込めるよう設計した。5歳未満の小児や、気管支喘息など肺機能が著しく低下する呼吸器疾患を合併している患者でも使いやすくする。既存薬では添加剤として乳糖水和物を含有していたため、乳製品に対し過敏症の既往症がある患者は、慎重投与とされていたが、今回の新製剤には添加されておらず、慎重投与扱いにはならない。