レスリング選手のドーピング問題訴訟 沢井製薬と陽進堂は争う姿勢
公開日時 2019/11/18 03:50
レスリングの国内トップクラスの男子選手が服用した胃炎・胃潰瘍治療薬に、本来含まれていないはずのドーピングの禁止物質が混入していた問題で、選手が薬を販売する沢井製薬などを相手取り、慰謝料など総額約6000万円の損害賠償などを求めた訴訟の第一回口頭弁論が11月15日、東京地裁(徳岡治裁判長)であった。沢井製薬と、同社が原薬を購入した陽進堂はいずれも争う姿勢を示した。
この問題は、選手が服用した胃炎・胃潰瘍治療薬・エカベトNa顆粒66.7%「サワイ」にドーピングの禁止物質の1つアセタゾラミドが混入していたというもの。選手は、ドーピング規則違反の疑いで、半年間の資格停止処分を受けていた。
訴状によると混入は、陽進堂が原薬を輸入していたインドのナコダ社で起こっていた。このため選手側は、「ナコダ社が製造している原薬はわずか8種類しかなく、今回含まれていたアセタゾラミドなどの物質が混入する可能性を想定することは極めて容易であったと言わざるを得ない」などと主張。そのうえで、「アスリートに全く過失のないドーピング事案で、製薬会社が一切の責任を負わないということは極めて不均衡だ」と訴えている。
これに対し沢井製薬は、答弁書で「日本薬局方に規定されているエカベトの純度試験にはアセタゾラミドを検出するための試験方法は含まれていない」と指摘。「試験を行わなかったことは結果回避義務違反とはならない」などと訴えた。
陽進堂は、今回の問題は「そもそも医薬品製造販売業者としての被告が防止、回避するべき責任の範囲外で製造上の欠陥はない」などと主張した。