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日医有識者会議が緊急提言 エビデンス十分でない新型コロナ治療薬「拙速な承認」に反対

公開日時 2020/05/20 04:52
日本医師会COVID-19有識者会議(永井良三座長・自治医科大学長)は5月18日、新型コロナウイルス感染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言を発表し、「エビデンスが十分ではない治療薬、特に既存薬」については拙速に特例的な承認を行うことに反対姿勢を明確に示した。観察研究に基づく迅速承認に対しても懸念を表明。適切なコントロール群を置き、一定の患者数を対象としたランダム化比較試験(RCT)を実施する必要性を強調した。既存薬であれば、その適応が承認されていなくても、適応外使用できることも指摘した。

新型コロナウイルス感染症をめぐっては、レムデシビル(製品名:ベクルリー)が5月7日に特例承認を取得。8日以降、臨床での使用が可能となった(関連記事)。同剤の承認の根拠は予備的解析で、一部データが明らかになったに過ぎないが、この時点では承認されている国はなかったと説明。「治療薬として使用するためには、今回のように早期に承認を得る必要があった」と理解を示した。

◎「有事だからエビデンスが不十分」断じてならない

ただ、「有事だからエビデンスが不十分でも良い、ということには断じてならない」と強調した。国内の承認申請には、適切にコントロール群を含むランダム化比較試験の実施が求められている。重症化する一方で、自然軽快もある新型コロナウイルス感染症のような疾患では、「症例数の規模がある程度大きな臨床試験が必要」と説明。さらにRCTに比べ、エビデンスレベルの低い観察研究だけでは、「有意義な結果を得ることは難しいことを指摘しておきたい」と続けた。

◎「数々の薬害事件を忘れてはならない」 今日の薬事制度は不幸な歴史を乗り越えるもの

現在、注目を集めるアビガン(一般名:ファビピラビル)や、フサンやアクテムラ、イベルメクチンなどは、新型コロナ以外の効能で承認を受けた既存薬だ。そのため、有識者会議は、「適応外処方であるものの、日本の医療保険制度のもとでは一律には禁止されておらず、医師の裁量および患者のインフォームドコンセントにより、現時点でもCOVID-19に対する処方は可能」であることも指摘。早期承認のためにエビデンスレベルを下げるという「誘惑には抗うべき」と強調した。「科学を軽視した判断は最終的に国民の健康にとって害悪となり、汚点として医学史に刻まれる」とも訴えた。

日本はサリドマイドをはじめとした薬害の歴史を持つ国でもある。過去には早期承認の結果、副作用が発生した経験もある。有識者会議は、「数々の薬害事件を忘れてはならない」と呼びかけ、「品質、有効性、および安全性の検証をないがしろにした結果の不幸な歴史を乗り越えるべく、今日の薬事規制が存在している」として、エビデンスに基づいた承認申請の重要性を強調した。

なお、レムデシビルの承認に至ったエビデンスについて、有識者会議は、米国立衛生研究所(NIH)のアレルギー感染症研究所(NIAID)が主導した「ACTT1」試験を紹介。登録された1063例のうち、回復した606例を対象にした予備的解析の結果、回復までの期間(中央値)がレムデシビル群で有意に短縮したとの結果が示されている(ハザード比:1.31、95%CI:1.12-1.54、p<0.001)。この予備的解析の結果について有識者会議は、「周到な研究デザインのもとにレムデシビルの効果を検証したこの結果は画期的」としながらも、標準治療薬に位置付けられるかは「肝障害などの副作用もあり未知数」として承認後も慎重に適正使用を行うことを求めた。

◎安倍首相 アビガンは観察研究など活用で早期承認目指す

安倍晋三首相は5月14日の会見で、アビガンについて観察研究などを活用した申請を視野に入れ、「有効性が確認されれば今月中の承認を目指す」と強調。フサンやアクテムラ、イベルメクチンなど、日本発の既存薬について、「別の病気での治療薬として副作用なども判明し、それを踏まえて処方すれば安全性は確認されている」との見解を表明していた。いずれも治験や臨床研究が進行中だが、「この感染症への有効性が確認され次第、早期の薬事承認を目指す」と述べていた(関連記事)。

厚労省医薬・生活衛生局の医薬審査管理課と医療機器審査管理課長は5月12日付で、新型コロナ治療薬の承認申請に際し、「臨床試験の試験成績を提出しない合理的理由に該当する可能性がある」ことを示した通知を発出している。事実上、観察研究でも承認を認めることとなり、波紋が広がっている。通知では、「厚生労働科学研究費補助金等の公的な研究事業により実施される研究の成果で、医薬品等の一定の有効性及び安全性が確認されている場合」で、研究が国際的な科学的、倫理的水準を満たし、信頼性が確認できることや、実施された研究の結果を裏付ける企業治験を実施することなどの条件も示している。

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