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薬食審・第一部会 新薬6製品の承認了承 初の頬粘膜投与のてんかん重積状態治療薬など

公開日時 2020/08/28 04:51
厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会は8月27日、Web会議で新薬6製品の承認の可否を審議し、いずれも承認することを了承した。この中には、これまで静注製剤や坐剤などで対応していた「てんかん重積状態」に対して初の頬粘膜投与製剤となるブコラム口腔用液(一般名:ミダゾラム)や、原発性腋窩多汗症で初の外用薬のエクロックゲル(一般名:ソフピロニウム臭化物)がある。9月中に正式承認される見込み。

【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)

ユルトミリス点滴静注300mg(ラブリズマブ(遺伝子組換え)、アレクシオンファーマ):「非典型溶血性尿毒症症候群」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は5年10か月。

抗補体(C5)モノクローナル抗体製剤。エクリズマブ(製品名:ソリリス)の重鎖の4個の固有のアミノ酸(Y27H、S57H、M429L、N435S)を置換したヒト化モノクローナル抗体で、ソリリスと同様に補体(C5)に結合してその活性化を阻害する。

臨床上の位置づけはソリリスと同様だが、ユルトミリスは維持期に4週または8週ごとに1回の点滴静注で用いる。ソリリスは10kg未満を除き2週に1回で用いることから、ユルトミリスはより長く効くところが特徴のひとつとなる。海外では非典型溶血性尿毒症症候群に対して19年10月に米国で、20年6月に欧州で承認済み。

なお、指定難病の非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は極めて稀な全身性の慢性遺伝子疾患。補体制御異常による血栓性微小血管障害(TMA)によって引き起こされる継続的なリスクを伴う致死性の疾患。小児だけでなく成人にも発症する。

エクロックゲル5%(ソフピロニウム臭化物、科研製薬):「原発性腋窩多汗症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。

神経伝達物質であるアセチルコリンの作用を阻止する抗コリン剤。アセチルコリンはムスカリン受容体と結合することで汗腺から発汗を誘発すると考えられている。同剤はムスカリン受容体と結合することでアセチルコリンの結合を阻害し、発汗を抑制する。

温熱や精神的な負荷などにより、手のひらや足の裏、わきの下などに日常生活や仕事に支障をきたすほどの大量の発汗を生じる状態を原発性局所多汗症といい、特にわきの下(腋窩)に生じる場合、原発性腋窩多汗症という。同剤は1日1回、適量を腋窩に塗布して用いる。現在は重度の原発性腋窩多汗症に対する治療薬としてA型ボツリヌス毒素製剤・ボトックス注用があるが、エクロックは軽度から使用できる。今回の適応でのゲル製剤は国内初となる。海外でも20年6月現在、承認されている国・地域はない。

エナロイ錠2mg、同錠4mg(エナロデュスタット、日本たばこ産業):「腎性貧血」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。

低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PHD)阻害薬と呼称する新クラスの薬剤。承認されれば、HIF-PHD阻害薬としてエベレンゾ錠(ロキサデュスタット)、バフセオ錠(バダデュスタット)、ダーブロック錠(ダプロデュスタット)に続く4番手となる。同剤も保存期と透析期の腎性貧血に使用できる。海外では承認されている国・地域はない。

ゼプリオンTRI水懸筋注175mgシリンジ、同TRI水懸筋注263mgシリンジ、同TRI水懸筋注350mgシリンジ、同TRI水懸筋注525mgシリンジ(パリペリドンパルミチン酸エステル、ヤンセンファーマ):「統合失調症(パリペリドン4週間隔筋注製剤による適切な治療が行われた場合に限る)」を効能・効果とする新効能・新剤形医薬品。再審査期間は4年。

非定型抗精神病薬。ゼプリオンは4週に1回投与の統合失調症治療薬だが、ゼプリオンTRIは12週間間隔で投与する製剤。長期に効果を発揮するため、用法・用量で、「パリペリドン4週間隔筋注製剤が4か月以上継続して投与され、適切な治療が行われた患者に対し、最終投与の4週間後から切り替えて使用する」とされた。症状が安定している患者に用いる。海外では20年5月現在、約80の国・地域で承認済み。

エビリファイ持続性水懸筋注用300mg、同400mg、同300mgシリンジ、同400mgシリンジ(アリピプラゾール水和物、大塚製薬):「双極性I型障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は4年。

抗精神病薬エビリファイの4週間に1回の投与で効果が持続する筋注用デポ製剤。はっきりした躁状態がある場合は双極I型障害と呼ばれ、軽躁状態とうつ状態を繰り返す場合は、双極II型障害と呼ばれる。

今回追加する適応のように、双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制(維持療法)の効能・効果を取得しているのはラミクタール錠(ラモトリギン)のみで、注射薬では今回が初となる。海外では20年6月現在、双極性障害に関連する効能・効果では9つの国・地域で承認済み。

ブコラム口腔用液2.5mg、同5mg、同7.5mg、同10mg(ミダゾラム、武田薬品):「てんかん重積状態」を効能・効果とする新投与経路医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。

合成イミダゾベンゾジアゼピン誘導体。ミダゾラムはこれまでに静注製剤はあるが、今回は頬粘膜投与製剤となる。家庭や学校でてんかん発作が起きたときなど緊急を要する場合に、利便性及び即効性を有する治療オプションとして開発された。

けいれん発作が30分以上持続すると長期的な後遺障害を残す可能性が指摘されており、国内外のガイドラインでは、けいれん発作が5分以上持続する場合にはてんかん重積状態と診断し、治療を始めることが推奨されている。小児を含む早期てんかん重積状態の第一選択薬としてジアゼパム静脈内投与やロラゼパム静脈内投与、ミダゾラム静脈内投与が推奨されている。ただ、救急搬送に時間を要し、治療開始までに時間がかかる点が指摘されていた。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の検討を受けて開発要請が行われた経緯もある。

海外では20年2月現在、33の国・地域で承認済み。

【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

ツートラム錠50mg、同錠100mg、同錠150mg(トラマドール塩酸塩、日本臓器製薬):「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な慢性疼痛」を効能・効果とする新剤形医薬品。再審査期間なし。未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。

オピオイド作用及びモノアミン再取り込み阻害作用によって鎮痛効果を発揮する非麻薬性鎮痛薬。トラマドール塩酸塩を含有する既承認の製品は1日1回投与製剤や1日4回投与製剤だが、ツートラム錠はその名の通り、1日2回投与で用いる。海外で承認されている国・地域はない。
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