厚労省 添付文書改訂を指示 PAH適応のシルデナフィルとアミオダロンの併用禁忌を解除
公開日時 2021/01/27 04:50
厚生労働省医薬・生活衛生局は1月26日、重大な副作用などが判明した医療用医薬品の添付文書を改訂するよう、日本製薬団体連合会に医薬安全対策課長通知で指示した。改訂指示があったのは4成分。このうち肺動脈性肺高血圧症(PAH)に用いるPDE5阻害薬・シルデナフィルクエン酸塩と抗不整脈薬アミオダロン塩酸塩との併用禁忌について今回、併用注意に位置付け、禁忌を解除することになった。日本循環器学会と日本小児循環器学会からの両剤の併用禁忌解除に関する要望書を受け、専門委員による協議を経て今回の結論に至った。
両学会は臨床上、シルデナフィルは小児の保険適応もあってPAHに広く利用されており、当該患者で重篤な不整脈を合併した場合や、PAHではないがFontan術後においてシルデナフィルが投与され、上室性頻拍が発生した場合にアミオダロン(経口剤)の併用が必要となる――ことなどから、両剤の併用禁忌の解除を求めていた。
PMDAは、▽現時点でシルデナフィル(PAH)とアミオダロン(経口剤)併用時の安全性について臨床上明らかな問題は認められていない▽PAHによる右心不全を伴う不整脈等、医療上の需要、医療環境からシルデナフィル(PAH)とアミオダロン(経口剤)の併用投与のベネフィットがリスクを上回ると考えられる症例があること――から、併用禁忌の解除は可能との判断をまとめた。そして、専門委員による協議で、「シルデナフィルによるQT間隔延長リスクは否定はできないものの明確ではないこと、臨床上、シルデナフィル(PAH)とアミオダロン(経口剤)の併用はベネフィットがリスクを上回ると考えられる等の意見が出され、PMDAの判断は支持された」として、併用禁忌の解除を決めた。
■ED適応のシルデナフィル アミオダロンとの併用禁忌を維持
アミオダロン(注射剤)との併用については、使用される状況はアミオダロン(経口剤)とは異なるものの、「併用注意」の項において投与経路を限定せずに「アミオダロン」を追記して、併せて注意喚起することが適切と判断された。
なお、勃起不全(ED)に用いる場合のシルデナフィルに関しては、「アミオダロン(経口剤)との併用の医療上の必要性は高くないと考える」として、現在の併用禁忌のままとなった。
このほか、ヒト化抗CD52モノクローナル抗体・アレムツズマブと、抗造血器悪性腫瘍薬・ポマリドミドで添付文書が改定された。
添付文書の改訂指示があった医薬品は次の通り。
▽レバチオ錠、同ODフィルム、同懸濁用ドライシロップ(一般名:シルデナフィルクエン酸塩、製造販売元:ファイザー)
薬効分類:219 その他の循環器官用薬
指示概要:「禁忌」の項の「アミオダロン塩酸塩(経口剤)を投与中の患者」を削除。併用禁忌の項の「アミオダロン(経口剤)」の部分を削除。「併用注意」の項に、「アミオダロン塩酸塩」を新設し、「アミオダロン塩酸塩によるQTc延長作用を増強するおそれがある」ことなどを記載。
▽アンカロン錠など(一般名:アミオダロン塩酸塩、製造販売元:サノフィなど)
薬効分類:212 不整脈用剤
指示概要:「禁忌」の項の「シルデナフィルクエン酸塩」を「シルデナフィルクエン酸塩(勃起不全を効能又は効果とするもの)」に変更。「併用禁忌」の項の「シルデナフィルクエン酸塩」を「シルデナフィルクエン酸塩(勃起不全を効能又は効果とするもの)」に変更。「併用注意」の項に、「シルデナフィルクエン酸塩(肺動脈性肺高血圧症を効能又は効果とするもの)」を新設し、「QT延長を起こすおそれがある」ことなどを記載。
▽マブキャンパス点滴静注(一般名:アレムツズマブ(遺伝子組換え)、製造販売元:サノフィ)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬
指示概要:「重要な基本的注意」の項に甲状腺機能検査に関する記載を追記。「重大な副作用」の「免疫障害」の項に「甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症」を追記。
過去3年間の国内報告数のうち、医薬品と事象(甲状腺機能異常関連症例)との因果関係が否定できない症例は0例。
改訂理由:海外症例が集積したことから、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。
▽ポマリストカプセル(一般名:ポマリドミド、製造販売元:セルジーン)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬
指示概要:「重大な副作用」の項に「進行性多巣性白質脳症」を追記。
過去3年間の国内報告数のうち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は3例。医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例は0例。
改訂理由:国内及び海外症例が集積したことから、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。