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薬食審・第一部会 新薬9製品の承認了承 バイエルの慢性心不全薬は継続審議に

公開日時 2021/02/26 00:30
厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会は2月25日、新薬10製品の承認の可否を審議し、バイエル薬品の新規の慢性心不全薬ベリキューボ錠(一般名:ベルイシグアト)を除く9製品について承認することを了承した。

厚労省によると、ベリキューボの審議では委員から、▽承認申請に用いた日本を含む国際共同第3相試験「VICTORIA」の主要評価項目の結果の解釈、及び日本人の安全性データの解釈▽新規の慢性心不全薬としてエンレストやフォシーガが2020年に相次ぎ承認されている中でのベリキューボの臨床的位置付け▽ベリキューボの適正使用に向けた情報提供内容――などに関して指摘があり、継続審議となった。

厚労省の担当官は部会後、「有効性が期待できないから継続審議ということではない」とした上で、「臨床現場に出たときに正しい情報をもとに、正しく使用するためのところを整理すべきということになった」と説明した。エンレスト、フォシーガ、ベリキューボといった新規の心不全薬を実臨床下で適正に使用するために、ベリキューボが持つデータを整理し、どのような情報提供をするのかの資料がまとまり次第、再度審議される見通しだ。

ベリキューボは可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬と呼称する新クラスの薬剤。sGCは血管および心臓の両方の機能にとって重要だが、心不全患者では一酸化窒素(NO)の利用能の障害のために十分にsGCが刺激されず、結果として心不全や血管障害を引き起こす。ベリキューボは現在の治療法では対処されていないNO-sGC-cGMP経路に作用し、機能を回復させることが期待されている。

■田辺三菱のNMOSD薬ユプリズナなど承認了承 ロナセンの小児適応も

この日の部会で承認が了承された9製品には、帝人ファーマの骨粗鬆症治療に用いる新規の副甲状腺ホルモン(PTH)製剤・オスタバロ皮下注(同アバロパラチド酢酸塩)や、田辺三菱製薬の視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)治療薬ユプリズナ点滴静注(同イネビリズマブ(遺伝子組換え))がある。また、大日本住友製薬の統合失調症に用いる非定型抗精神病薬ロナセンに小児適応を追加することも了承された。日本で統合失調症の小児適応を持つ初の薬剤となる。

この日の報告品目は2製品で、この中には糖尿病に用いる超速効型インスリンアナログ注射液ノボラピッドで初のバイオ後続品となる「インスリンアスパルトBS注ソロスターNR「サノフィ」」が含まれる。先発品はノボ ノルディスク ファーマの製品、バイオ後続品はサノフィの製品となる。

いずれも3月中に正式承認される見通し。

【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)

イスツリサ錠1mg、同錠5mg(オシロドロスタットリン酸塩、レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパン):「クッシング症候群」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。

副腎皮質ホルモン合成阻害薬。コルチゾール生合成の最終段階を触媒する11β-水酸化酵素(CYP11B1)を阻害し、副腎でのコルチゾール生合成を抑制する。

クッシング症候群は副腎から分泌されるコルチゾールの作用が過剰になることにより、特徴的な身体徴候を呈する病気のこと。身体徴候には満月様顔貌、野牛肩、中心性肥満、皮膚菲薄化、腹部赤色皮膚線条、近位筋の筋力低下などがある。

海外では、欧州でクッシング症候群に対して20年1月に承認され、米国ではクッシング病に対して同年3月に承認されている。

オスタバロ皮下注カートリッジ3mg(アバロパラチド酢酸塩、帝人ファーマ):「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。

新規の副甲状腺ホルモン(PTH)製剤。有効成分のアバロパラチドは、細かく分類すると、副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)の誘導体で、Gタンパク質が結合した副甲状腺ホルモン1型受容体を選択的に刺激することで骨形成を促進する。

通常、成人には1日1回、アバロパラチドとして80μgを皮下注射して用いるが、投与期間は最大18か月までとする。類薬のPTH製剤のフォルテオ皮下注やテリボン皮下注は最大24か月投与できる。

海外では米国で17年4月に承認されている。

イズカーゴ点滴静注用10mg(パビナフスプ アルファ(遺伝子組換え)、JCRファーマ):「ムコ多糖症II型」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。先駆け審査指定品目。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

マンノース6リン酸受容体を介した作用に加え、JCR独自の血液脳関門(BBB)通過技術である「J Brain Cargo」によりトランスフェリン受容体を介してBBBを通過させることで、中枢神経症状に対する作用が期待される薬剤。静脈内投与することで末梢組織とともに中枢神経系に移行することを可能にしたもの。

ムコ多糖症II型はライソゾーム病の一種で、ムコ多糖を体内で分解する酵素の欠損により発症するX染色体連鎖劣性遺伝性疾患。国内患者数は約 250 人。幅広い症状があるなか、既存の治療酵素製剤はBBBを通過できないため、脳内で薬効を発揮できず、中枢神経症状に対し効果が期待できないことが大きな課題となっている。

海外では承認されていない。

リオナ錠250mg(クエン酸第二鉄水和物、日本たばこ産業):「鉄欠乏性貧血」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。

経口鉄剤。十二指腸管細胞の管腔側刷子縁膜で鉄還元酵素である十二指腸シトクロムbによって2価鉄イオンに還元されて吸収される。鉄欠乏性貧血は女性の性器出血、消化管出血などにより鉄が欠乏し、ヘモグロビン産生が低下することで生じる貧血。動機、息切れ、易疲労感などの貧血としての症状のほか、鉄欠乏による匙状爪、舌乳頭萎縮などを認めることがある。

今回の新適応に関しては、日本たばこ産業(JT)子会社の鳥居薬品のほかに、産婦人科領域に強みを持つあすか製薬も情報活動を行う。

海外では20年10月現在、成人の保存期慢性腎臓用患者における鉄欠乏性貧血の治療に対して米国で承認されている。

レコベル皮下注12μgペン、同皮下注36μgペン、同皮下注72μgペン(ホリトロピン デルタ(遺伝子組換え)、フェリングファーマ):「生殖補助医療における調節卵巣刺激」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。

不妊治療に用いる遺伝子組換えヒト卵胞刺激ホルモン(r-hFSH)製剤。卵胞刺激ホルモン(FSH)は卵巣で卵胞の発育や卵母細胞の成熟を促進する。

海外では20年11月現在、60以上の国・地域で承認済み。

ヴォリブリス錠2.5mg(アンブリセンタン、グラクソ・スミスクライン):「肺動脈性肺高血圧症」を効能・効果とする新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は6年1日。

今回、8歳以上の小児に使えるよう、小児用量を追加する。同剤はエンドセリン受容体拮抗薬で、エンドセリン-1による血管収縮及び細胞増殖作用を抑制することで、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の臨床症状を改善させると考えられている。

小児PAHに使用可能なエンドセリン受容体拮抗薬として2剤目となる。なお、1剤目のボセンタン(一般名)は1歳以上の小児を対象とする。

海外で小児用法が承認されている国はない。

ロナセン錠2mg、同錠4mg、同錠8mg、同散2%(ブロナンセリン、大日本住友製薬):「統合失調症」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は4年。

非定型抗精神病薬。今回、小児適応を追加する。日本で統合失調症の小児適応を持つ薬剤はなく、20歳未満の統合失調症患者に対する系統的な治療アルゴリズムは存在せず、医師の経験や裁量に基づき治療されている。欧米では統合失調症の小児適応を持つ薬剤としてリスペリドンやクエチアピン、アリピプラゾール、オランザピンなどが承認されている。

海外では韓国、中国で統合失調症の効能・効果で承認済み。

ユプリズナ点滴静注100mg(イネビリズマブ(遺伝子組換え)、田辺三菱製薬):「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

抗体を産生する形質芽細胞や形質細胞を含むB細胞の表面に発現するCD19に高い親和性を持つヒト化抗CD19モノクローナル抗体製剤。CD19に結合することで、これらの細胞を循環血液中から除去する。

視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)は、重度の再発を繰り返し致命的となり得る中枢神経系の自己免疫疾患。身体の免疫システムが健康な細胞(一般的には視神経、脊髄、脳)を攻撃し、再発や重篤な傷害をもたらす。その結果、目の痛みや失明、重度の筋力低下、麻痺、しびれ、腸や膀胱の機能低下、呼吸不全を引き起こす。国内有病率は10万人あたり2~4人とされる。

海外では米国で20年6月に承認された。

ケシンプタ皮下注20mgペン(オファツムマブ(遺伝子組換え)、ノバルティスファーマ):「再発性の多発性硬化症(再発寛解型多発性硬化症と疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症)」を効能・効果とする新投与経路、新効能医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

主にB細胞上に発現しているCD20を標的とするヒト型IgG1κモノクローナル抗体。多発性硬化症(MS)の発症及び再発に関与している自己反応性B細胞を減少させることで、MSに対して効果を示すと期待されている。

有効成分のオファツムマブは現在、ノバルティスから製品名「アーゼラ点滴静注液」として、CD20陽性の慢性リンパ性白血病に使用できる。今回は皮下注製剤で、適応は多発性硬化症となる。

海外では米国で20年8月に承認された。

■ノボラピッドで初のBS登場へ

【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

インスリンアスパルトBS注ソロスターNR「サノフィ」、同BS注カートNR「サノフィ」、同BS注100単位/mL NR「サノフィ」(インスリンアスパルト(遺伝子組換え)[インスリンアスパルト後続1]、サノフィ):「インスリン療法が適応となる糖尿病」を効能・効果とするバイオ後続品。再審査期間なし。

先発品は超速効型インスリンアナログ注射液ノボラピッドで、今回、初のバイオ後続品(BS)の登場となる。先発品のノボ ノルディスク ファーマの製品で、BSはサノフィの製品となる。

海外では20年12月現在、EU、カナダ、オーストラリアで承認済み。

コレクチム軟膏0.25%、同軟膏0.5%(デルゴシチニブ、日本たばこ産業):「アトピー性皮膚炎」を効能・効果とし、同軟膏0.25%は新用量・剤形追加に係る医薬品。同軟膏0.5%は新用量医薬品。再審査期間は残余(2028年1月22日まで)。

外用JAK阻害薬。今回、小児適応を追加する。小児用製剤の低濃度のコレクチム軟膏0.25%のほか、既承認の同軟膏0.5%も小児に使用できるようにする。海外で承認されている国・地域はない。
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