HIMS&HERSブランドで知られる消費者向けテレ・ヘルス・ウェルネス・サービスのHIMS,Incの上場（ニューヨーク証券取引所）が話題だ。

https://www.forhims.com/blog/hims-hers-a-model-for-better-care-through-patient-engagement-and-telemedicine　

話題の１つはHIMS,Incが創業2017年のまだ若いスタートアップであること。もう１つはこれが通常のIPOではなく、最近急増していると言われるSPACによる上場であったことである。

2017年に男性専用のオンライン薄毛ケアHIMSでスタートした同社は、ヘルスケア業界的にはややデリケートな領域であるセックス関連ケアへとサービスを拡大しつつ、2018年に女性向けサービスHERSをローンチ。プライマリケア、メンタルヘルスケアへとサービスを拡大し、さらに英国にもサービスを拡大。2019年1月には評価額$1Bを超えるユニコーンとなって「もっとも急成長したスタートアップ」と報じられた。2020年にはCOVID19検査も販売して、パンデミック下でも順調に売り上げを伸ばしてきた。

創業5年目のEXITは、2020年10月頃から交渉が進んでいたOaktree Acquisition Corp.によるSPAC買収による上場で、クロージング当日の1月20日、同社には$280Mがキャッシュ・インしたと報じられているが、同社は調達した全額をさらなる事業拡張に投資する予定だという。

SPAC（Special Purpose Acquisition Company）とは未公開会社の買収を目的として設立される法人で、上場した時点では事業内容のないペーパー・カンパニー。上場後に市場で資金を調達し、未公開会社を買収する。買収された未公開会社は通常のIPO手続きを取らずに一挙に上場できるといアドバンデージがあり、一方SPACは上場時点では事業のない会社であるため上場審査に時間がかからないというアドバンテージがある。IPOに関わる時間と経費を節約できる手法として近年米国で急増している。日本では2008年頃に一旦検討されたが、まだ認められていない制度である。（医療ジャーナリスト　西村由美子）