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東和薬品・吉田社長 新中計「PROACTIVEⅡ」発表 健康情報プラットフォームで新規事業創出も

公開日時 2021/05/17 04:52
東和薬品の吉田逸郎代表取締役社長は5月14日、決算会見に臨み、新中期経営計画「PROACTIVEⅡ」を発表した。2021年度からの3か年を“第3次成長期の幕開け”と位置づけた。吉田社長は、「ジェネリック医薬品をコアビジネスとして大事にしながら、企業理念に従って健康に貢献するための事業展開をしていく」と述べた。すでに医薬品以外にも、介護支援などに乗り出している同社。対話型支援機器comuoonなど、「この1年のなかで手応えを感じているものも出始めた」と自信を見せる。検査事業への参入を目指すなど、ビジネス展開を加速させる。健康情報プラットフォームをベースに、新規ビジネスを確立し、健康寿命の延伸に貢献したい考えだ。

◎ポスト80% 「健康に貢献する新規事業を考えていこうと大きな目標を立てた」

新中計では連結売上高2000億円、単体で1500億円を達成することを目標に掲げた。既存のジェネリックビジネスを進化させることに加え、健康に貢献する新規ビジネスにも注力する考えだ。国が後発品80%目標を掲げるなかで、ジェネリックの浸透は進んできた。一方で、一定程度浸透が進むなかで、「ポスト80%のなかで、会社をどう方向づけ、何を考えていくかが非常に大事な時期にかかっている」との見方を示した。そのうえで、ジェネリックビジネスの進化に加え、「健康に貢献する新規事業を考えていこうと大きな目標を立てた」と話した。

新規事業を通じ、治療のみにとどまらず、介護支援や予防など健康に関連する幅広いビジネス展開を進める。地域住民に必要なサービスを提供し、健康寿命の延伸に貢献したい考えだ。特徴と言えるのが、“個人の健康情報プラットフォーム”をベースにビジネス展開を考えている点だ。同社がTISと協業販売に向けた提携を結ぶクラウド型地域医療情報連携サービス「ヘルスケアパスポート」を要に据える。ヘルスケアサポートは、処方や検査結果など医療情報が医療機関同士で自動連携されるほか、地域住民などから生活習慣や既往歴、アレルギーなどの健康情報を共有できるもの。千葉大医学部附属病院とTISが開発し、昨年9月から運用が開始されている。吉田社長は、「まだ健康情報プラットフォームとして活用するには改良、改善しないといけない部分がある」としながらも、すでに実績があると説明した。

ジェネリック医薬品を通じた治療だけでなく、未病・予防や介護支援などの健康関連事業に注力する。3月には、ウシオ電機子会社だったプロトセラを買収した。タンパク質の解析について独自の基盤技術をもち、大腸がんなどの検査サービス事業を展開している。検査により得られる情報を収集・活用して適切な健康関連サービスを提供することを視野に入れる。吉田社長は、「予防という意味から良い展開になる」と今後の展開に期待を寄せる。国立循環器病研究センターと植物由来成分の認知症予防効果について共同研究を始めるなど、予防につながる健康食品やサプリメント、健康増進ツールなどの確立も模索する。

介護支援領域では、話し手の声を聞きやすい音質に変換する対話型支援機器「comuoon」を2019年9月から販売。「評価が高い」と自信をみせる。吉田社長は、難聴が認知症の一つの要因である可能性を指摘し、認知症抑制などを科学的に検討する考えも示した。

このほか、20年1月には、空気圧で稼働する人工筋肉のはたらきで動作を補助する装着型の作業支援ロボット「マッスルスーツ」を手がけるイノフィスに出資した。「安価で効果が高い」ことが特徴と期待を寄せる。治療領域でも、バンダイナムコ研究所と共同開発する、患者のアドヒアランス・服薬向上を目指す服薬支援ツールについて実証実験用プロトタイプを完成させるなど、取り組みも進んできた。吉田社長は、「こういう製品は医薬品以外でも扱っている。具体的に進んできている」と強調。「スタートアップなど、マッチングの場所で、リサーとしたりということもしている」とさらなる展開も見据えた。各事業間や既存事業とのシナジーを形成することで、プラットフォームとしての力を最大化。地域包括ケアシステムに貢献し、人々の健康寿命延伸に貢献したい考えだ。

◎2022年度に140億錠、23年度まで175億錠の生産へ 増産体制を整備


一方、ジェネリックビジネスをめぐっては、安定供給体制の構築にさらに力を入れる。2022年度には140億錠、23年度までには175億錠の生産に向け、増産体制の整備も力を入れる。

コロナ禍で原薬の供給不安などのリスクも生じた。複数購買を進めていたことから、実際に供給不能になったのは、「1、2品目あったかなかったかだけ」(今野和彦専務取締役)というが、中国やインドなど、特定の国や地域に原薬の供給が集中していることでのリスクも存在する。こうしたなかで、原薬については、“調達のリスク”も視野に入れた取り組みを進め、サプライチェーンの強化を図る。同社の原薬事業本部が合成プロセスを開発し、原薬子会社の大地化成や協力会社で製造する“自製化”を進めることで、外的要因による安定供給リスクを低減させたい考え。今野専務は、「原薬や中間体の研究が進んでいることが強み」と話し、「中間体を含めてサプライチェーンをもう一度見直さないといけないと思っているが、現在進行中だ」と説明した。また、製造所に対する監査体制も強化する考え。コロナ禍で海外への査察も難しいなかで、現地法人の活用なども視野に入れているという。

◎連結決算で売上高2000億円 単体で1500億円以上達成目指す

新中計は、①コア事業としてのジェネリック医薬品事業の進化、②海外市場での拡大と成長、③新たな健康関連事業への展開、④技術イノベーションと製品価値の創出、⑤働きがいのある環境―を柱に掲げる。これにより、連結決算で売上高2000憶円以上、単体で1500億円以上達成、営業利益570億円を達成したい考えだ。

このほか、会見で吉田社長は小林化工と日医工の一連の不祥事について、「残念なことだと思っている」と述べた。共同開発の課題も指摘されているが、2005年以降、ジェネリックメーカーも、共同開発ができるようになったと説明。研究開発投資が多額になるケースもあるなかで、「お互いを補完する意味での共同開発はジェネリックメーカーにとっても必要だ。臨床データが必要なジェネリックも出てくるので、そういう意味での共同開発は残してほしいと思っている」と述べた。

◎20年度業績 買収したスペインのペンサ・インベストメンツ社が売上に貢献


同社の2020年度売上高は対前年度比40.3%増の1549億円。2019年12月に買収したスペインのペンサ・インベストメンツ社(現・Towa Pharma International Holdings, S.L.、以下、Towa HD)の欧米での売上が貢献した。吉田社長は、「業績的にインパクトのある数字が出ている」との見方を示し、「業績の第2の柱に位置付けられると思っている」と海外事業のさらなる成長にも自信をみせた。

【20年度連結業績(前年同期比) 21年度予想(前年同期比)】
売上高 1549億円(40.3%増) 1650億円(6.5%増)
国内売上高 1186億8500万円(7.5%増)  億円
海外売上高 362億1400万円
営業利益 199億2300万円(23.4%増) 174億円(12.7%減)
親会社帰属純利益 139億5800万円(3.8%減) 120億円(14.0%減)
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