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バイタルHD・村井社長 MSの人事考課に「貢献利益中心評価」導入 付加価値型活動で利益構造転換を

公開日時 2021/05/18 04:51
バイタルケーエスケー・ホールディングス(バイタルHD)の村井泰介社長は5月17日、2021年3月期(20年度)決算のオンライン説明会に臨み、MSの人事考課に「貢献利益中心評価」を導入する考えを明らかにした。貢献利益は得意先別の営業利益のこと。これまでの売上重視から利益中心の活動に転換することで、価格競争一辺倒になりがちな活動から転換する。MSに対しては、医療従事者向けWebセミナーなどに同席させ、疾患や薬剤情報を互いに共有し、医師のニーズも知ることで、新規納入や新規処方につなげる取り組みも進める。村井社長は、コロナ禍におけるデジタル活用を視野に、「製薬企業から選ばれる企業集団になるため、環境変化に適応した取組みを推進する」と意欲を示した。

同社の21年3月期業績は、コロナ禍による医療機関の受診抑制や手術の延期、2回にわたる薬価改定(19年10月、20年4月)、同業他社との価格競争-などの影響で売上総利益が大きく減少し、22億円強の営業赤字となった。営業赤字は東日本大震災が発生した11年3月期以来。村井社長は、「当社発足以来、最も厳しい決算になった」と報告した。業績のV字回復に向け、従来型の売上重視型の活動から、付加価値型アプローチを主体とする利益重視型活動に舵を切る考えを強調した。

◎得意先別の貢献利益額にこだわる

同社では、得意先の病院ごとに「貢献利益表」を作成し、売上や売上総利益だけでなく、物流や営業活動などの各種コストを可視化してきた。ただ、新型コロナによる医療機関経営の悪化に伴う市場競争の激化などで、ここ数年はMSによる貢献利益表の活用が必ずしも十分とは言えない状況にあったという。

そこで21年度の重点施策として、改めてMS一人ひとりが貢献利益表を活用し、支店の業務全般にかかったコストを控除した得意先別の貢献利益額にこだわり、MSに対しては自発的な活動を徹底させる方針を打ち出した。また、これを本社が支援するため、MS個々の取組みや成果をオープンシェアするとともに、人事考課については、「今期から売上高を重視した人事考課から貢献利益中心の評価に変更する」(村井社長)考えを導入した。

◎ウェブセミナー後の新規処方獲得率 医師単独視聴は9.1% MS同席視聴は26.8%

こうした環境変化を支援するため、デジタルを用いたMSの情報提供活動を推進する。2月には取引先の製薬企業が行う投薬制限解除前製品の独自Webセミナーを支援する取り組みを行っている。Webセミナーの視聴件数は352件で、内訳は医師が310件、病院薬剤師等は42件だった。

注目すべきは、医師の視聴にMSが同席した299件のうち、Webセミナー後に新規納入に至った件数は22件だった。投薬日数解除前とのタイミングに留意が必要だが、新規納入件数は多い月でも20年9月の10件、次いで10月の8件だったという。セミナー後の新規処方獲得件数は、MS同席視聴のケースで80件あり、新規処方獲得率は26.8%(80/299)となった。医師単独視聴での新規処方獲得件数は1件で、同9.1%(1/11)だった。

この日の説明会で村井社長は、結果として「DXプロモーションフィーが21年3月は20年10月の約9倍に増加した」ことを明らかにした。さらに、「今後も卸の選別が進む中、製薬企業からも選ばれる企業集団になるため、新しい取り組みを推進していく」と自信を覗かせた。また、オンライン面談に躊躇する開業医が少なくないことから、MSが開業医とMRの間に入って、情報連携のハブとしての役割を果たすことなども、同社が目指す付加価値型アプローチの一つに掲げた。

◎「薬価ダウンの影響は甚大」

同社の21年3月期業績は、売上5370億300万円(前年度比4.5%減)、売上総利益382億1800万円(15.5%減)、営業損失は22億6000万円となった。売上減は主にコロナ禍による受診抑制や2回の薬価改定が影響した。売上総利益の減少は、価格競争激化による売買差益の悪化や、売上減に伴うアローアンスやリベートの減少が主な要因となる。人件費の見直しなども行ったが、営業利益は前年度の35億5600万円の黒字から今回、一転して赤字となった。

医薬品卸売事業は、売上5063億8900万円(5.1%減)、売上総利益310億3800万円(19.3%減)、営業損失25億4200万円――だった。

薬価改定による影響金額(販売額ベース)は計152億1900万円。これをカテゴリー別にみると、再算定品目76億9800万円、新薬創出等加算の返還で35億2000万円、G1で1億円強、G2で14億8800万円、Cで10億7800万円、Z2で12億9600万円――だった。村井社長は「数量ベースよりも金額ベースの方が影響が大きく出ており、薬価ダウンの影響は甚大」と強調した。

21年度の連結業績は売上5422億円(1.0%増)、売上総利益423億円(10.7%増)、営業利益16億円――の増収、営業黒字化を目指す。うち医薬品卸売事業は売上5108億8000万円(0.9%増)、売上総利益350億3400万円(12.9%増)、営業利益12億1100万円――と設定した。
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