政府 骨太方針2021を決定 22年度以降も歳出改革継続 医療費等の自然増圧縮は例年通り 次期改定へ
公開日時 2021/06/21 04:52
政府は6月18日の臨時閣議で、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針)を決定した。財政健全化目標については、2025年度のプライマリーバランスの黒字化を目指す方向を改めて明示した。ただ、新型コロナの感染拡大に伴う経済影響を勘案し、今年度中に目標年度を再確認するとした。一方、22年度から3年間の歳出改革努力は継続するとし、社会保障費については「実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びに収めることを目指す」と言及した。22年度予算編成で焦点となる薬価・診療報酬改定については、骨太方針通りに読めば、例年と同様に市場実勢価に基づく薬価の通常改定が行われる見通しだ。
◎オンライン診療やデータヘルス改革の推進、プログラム医療機器の評価など
今回の骨太方針は副題に「日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」を明記した。医療分野にもデジタル化社会の実現に関する記述が多く見られる。DXに代表されるデジタル化の推進は、顧客志向・顧客満足度、生産性向上、働き方改革とデジタル人材の育成など多岐に及ぶ。これを医療分野に置き換えると、オンライン診療の恒久化や、データヘルス改革の推進、プログラム医療機器の評価などの項目が骨太方針に明記された。いずれも医療・介護領域におけるネットワーク化、診療情報の共有化、予防から未病、治療、治療後のケアに至るアウトカムの向上を目的としたKPI設定など新機軸となる項目が列挙されている。
◎地域医療構想の推進 「地域医療連携推進法人制度」の活用も
オンライン診療については、「幅広く適正に活用するため、初診からの実施は原則かかりつけ医によるとしつつ、事前に患者に状態が把握できる場合にも認める方向で具体案を検討する」と明記した。治療アプリなどのプログラム医療機器の開発・実用化の促進も明記している。これらについては、保険上の評価もセットで議論することが想定され、今秋から本格化する次期診療報酬改定の議論の俎上にあがる可能性が早くも指摘されている。一方で、デジタル以外の部分では、「地域医療構想」の推進を盛り込み、地域医療連携推進法人制度の活用による病院の連携強化や機能強化、集約化などの促進を進める方針にも言及している。
◎薬価算定基準の見直し「透明性・予見性の確保」に留意
医薬品関係では、「革新的な医薬品におけるイノベーションの評価の観点及びそれ以外の長期収載品等の医薬品について評価の適正化を行う観点から薬価算定基準の見直しを透明性・予見性の確保にも留意しつつ図る」と記載した。原案から、透明性・予見性の確保に留意することが追記された。イノベーション評価の環境整備については骨太方針と一緒に決定した新成長戦略実行計画にも具体的な項目が示されている。
◎後発品の新目標 官民一体で製造管理体制強化や製造所への監督の厳格化
後発品の新目標については、「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保を柱とし、官民一体で、製造管理体制強化や製造所への監督の厳格化、市場流通品の品質確認検査などの取組を進めるとともに、後発医薬品の数量シェアを、2023 年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」と記載し、政府方針とした。後発品の新目標をめぐっては原案では、数量シェアの記載にとどまっていたが、追記された。自民党の議連や国会の場では、後発品の使用促進を進めるうえでも、ジェネリックの信頼回復が最優先課題との声があがっており、こうした声を一部反映した格好となった。後発品の数量シェアの数値目標については引上げは行われず、従来の方針を踏襲することとなる。
新目標との関係を踏まえた後発医薬品調剤体制加算等の見直しの検討、フォーミュラリの活用など、さらなる使用促進を図る方針も盛り込んだ。
また、バイオシミラーについては医療費適正化効果を踏まえた目標設定の検討することも盛り込んだ。