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薬歴管理料の剤数評価導入に反対 支払側・幸野委員「真摯に取り組む薬剤師がありがたいと思うのか」

公開日時 2021/10/25 04:52
厚労省保険局医療課は10月22日の中医協総会に、かかりつけ薬剤師・薬局の推進に向け、6種類以上の多剤調剤時の薬剤服用歴管理指導料の評価についての見直しを論点にあげた。これに対し、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は鮮明に反対姿勢を示したうえで、「薬歴指導は薬剤師の本来業務で、力量を発揮する場面だ。真摯に薬剤師として取り組んでいる方はこのような点数を本当にありがたいと思うのか」と診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)に対して問いかけた。これに対し、有澤委員は、「現場でしっかり取り組んでいる人に対する評価を与えていかなければいけないのではないか。将来を含めて頑張っていただきたいものも胸に置きつつ発言している」と理解を求めた。

厚労省は、薬剤服用歴管理指導料について、薬剤の種類が増えると、服薬指導の事項が増え、内容が煩雑になり、説明時間が長くなるとして、この評価を論点にあげた。薬剤情報提供・服薬指導の平均所要時間は薬剤数が6種類未満では5.1分だったのに対し、6種類以上では9.0分だった。薬歴作成にかかる平均時間は、6種類未満では3.9分だったが、6種類以上では6.3分だったという。

◎診療側・有澤委員「薬学的知見で評価する材料多く複雑に」

診療側の有澤委員(日本薬剤師会)は、「薬剤の種類数ありきではないが、種類数が多くなると、薬剤の飲み合わせ、相互作用、副作用など薬学的知見で評価、検討する材料が多くより複雑になる。指導時間や薬歴の記入などが長くなる。引き続き検討することが必要だ」と理解を求めた。

◎支払側・幸野委員「こういう提案がされること自体が信じられない」

これに対し、支払側は一斉に反対姿勢を鮮明にした。幸野委員は、「これまでの議論と逆行する考え方だ。こういう提案がされること自体が私は信じられない想いだ」と指摘した。これまで累次の診療報酬改定で目指してきた“対物業務から対人業務へ”を実現するためには、調剤基本料と薬剤服用歴管理指導料、調剤料、薬価差で成り立つ薬局経営にメスを入れければ、改革は実現できないと主張した。そのうえで、今回の厚労省の提案について、「薬局・薬剤師改革に逆行する。調剤基本料と剤服用歴管理指導料、調剤料、薬価差で成り立つ経営を助長させるだけだ。明確に反対する」と述べた。

そのうえで、「薬歴指導は薬剤師の本来業務で、力量を発揮する場面だ。時間が長いから、短いからと点数に差をつけることは本当に必要なのか。真摯に薬剤師として取り組んでいる方はこのような点数を本当にありがたいと思うのか」と指摘。これまで多くの薬局・薬剤師改革に取り組む薬剤師に会ったとして、「薬局改革をやろうとする薬剤師はこんな点数は必要ないと言うだろう」と続けた。

見解を問われた診療側の有澤委員は、現場からあがってきた声であることを否定したうえで、「現場でしっかり取り組んでいる人に対する評価を与えていかなければいけないのではないか。気が付くところで一定程度、将来を含めて頑張っていただきたいものも胸に置きつつ発言している」と述べた。

◎支払側・安藤委員「減薬のディスインセンティブ」 間宮委員は患者の自己負担増を懸念


支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「同種類の薬剤を反復、継続して処方されている場合など、薬剤種類数が多くとも説明には比較的時間を要さない場合もあると考えられること、重複投薬等を見直すディスインセンティブになりかねない」と述べた。

支払側の間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、自身の経験から、処方に変更があったとき以外は、「“いつもと同じですね”、と言われて受け取る」と述べ、特に服薬指導を受けていないと説明。そのうえで、「時間がかかって薬局薬剤師の業務に負担がかかるのであれば考えたほうがいいが、患者は好き好んで薬を増やしてもらっているわけではない。薬が増えることでさらに自己負担が増えることは避けていただきたい。明確に反対する」と述べた。

診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「現場の仕事としては理解する」と述べたうえで、「診察の結果、DO処方の場合は薬の数が多くても薬局での説明は多くの時間を取れないことも多々ある。単に薬剤数を基準にするのでなく、メリハリをつけた考え方が必要ではないか」と指摘した。

◎かかりつけ薬剤師指導料 かかりつけ薬剤師以外の薬剤師の要件緩和も議論に

対人業務への方向性が明確に示されるなかにあって、かかりつけ薬剤師指導料の算定回数がほぼ横ばいであることも示された。かかりつけ薬剤師指導料を算定している患者に対して、かかりつけ薬剤師以外が対応した場合の要件緩和も議論の俎上にのぼった。厚労省の調査によると、かかりつけ薬剤師指導料等を算定している患者に、かかりつけ薬剤師以外が対応するケースがある薬局は約61.8%で、薬歴で申し送り事項を共有するなどの対応をとっていた。

診療側の有澤委員は、「患者さんに対してかかりつけ薬剤師と同様の対応をした場合について一定の評価を検討することの必要性については理解する」と述べたうえで、「安易に要件緩和することは、薬局の都合ありき、算定ありきで、かかりつけ薬剤師の形骸化が起こることを懸念する。懸念も含めた検討をお願いしたい」と慎重姿勢を示した。

これに対し、支払側の幸野委員は、「実態として一人のかかりつけ薬剤師で対応するのは現実的ではない場合もあるだろう。かかりつけ薬局として患者を支えるということであればあり得る」と述べた。

支払側の安藤委員からは2016年度改定以降、かかりつけ薬剤師の評価を拡充してきた経緯を振り返り、「現状、評価の拡充を行ってきているものの、地域で求められている役割がなかなか果たせていない状況が続いている」と指摘。「どのような点が本当にネックになっているのかという要因分析をしっかりと行ったうえで評価の在り方を検討していくべき」と述べた。

◎服用薬剤調整支援料で支払側 オンライン資格確認や電子処方箋導入踏まえた検討を

このほか、重複投薬解消に向けた取り組みを評価する「服用薬剤調整支援料」をめぐり、支払側からは、オンライン資格確認や電子処方箋による環境整備を踏まえた声があがった。安藤委員は、「重複投薬への対応はオンライン資格確認や、電子処方箋の導入など、薬剤師が対応していただきやすい環境になる、この点も踏まえて慎重に検討する必要がある」と指摘した。これに対し、支払側の城守委員は、「オンライン資格確認のスタート状況を見ても最初は色々混乱もあろうか、と思う。一定程度の時間がかかると思う」と述べた。厚労省保険局医療課の紀平哲也薬剤管理官も、「仕組みやスケジュールは示されているが、どういった点が効率化で手間なのかというのが見えてから検討することではないか」と述べた。


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