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中医協で製薬業界が意見陳述 再算定の類似品除外は「5年間の猶予を」 調整幅は「引き下げる状況にない」

公開日時 2021/12/06 04:51
日米欧製薬3団体は12月3日、中医協薬価専門部会で意見陳述に臨み、市場拡大再算定の対象品目の類似品の除外ルールについて、「少なくとも2回分(5年間)の猶予は必要と考える」と主張した。22年度薬価制度改革の焦点となっている市場拡大再算定の見直しをめぐっては、厚労省は1日の中医協薬価専門部会に特例拡大再算定もしくは再算定の類似品目として引き下げられた後、「一定期間内(3年間)」は他品目の市場拡大再算定の類似品として対象外とすることを提案した。日本製薬団体連合会(日薬連)の眞鍋淳会長(第一三共)は、特例拡大再算定の引き下げ率の大きさから、「通常改定1回分の猶予では不十分」と理解を求めた。このほか、調整幅をめぐっては、「調整幅+一定幅」の措置の必要性を訴えた。日本医薬品卸売業連合会(卸連)の鈴木賢会長(バイタルネット会長)が、後発品の供給不安が続くなかで、「医薬品流通のひっ迫が続いている現状を踏まえれば、調整幅を引き下げるような状況にはない」と主張した。

◎市場拡大再算定の類似品目 一日薬価が低い類似品の除外を


市場拡大再算定の対象品目については、類似品の除外ルールが一つの焦点となっている。この日の意見陳述で、製薬業界側は特例拡大再算定(市場拡大再算定の特例)の対象品目の薬価引下げ率が平均25.6%であると説明。平均的な薬価改定率が6.0%程度であることを踏まえ、「少なく2回分の猶予が必要」と主張した。また、競合性の判断基準において、「過去の再算定の影響により対象品よりも一日薬価が低い類似品を除外するよう見直すことも必要」とした。

米国製薬工業協会(PhRMA)の在日執行委員会のシモーネ・トムセン副委員長(日本イーライリリー)は、「合理的ではない再算定が繰り返し適用されることを避けるために除外ルールを見直す必要がある。特例再算定の引き下げ率は最大50%と極めて大きいことを考えると、除外期間を設けるのであれば通常改定1回分の3年は十分ではなく、少なくとも通常改定2回分の5年間の猶予は必要だ」との見解を示した。

◎原価計算方式 開示度50%未満で開示度ゼロ「イノベーション評価の観点から厳しい」

厚労省が、原価計算方式で開示度が50%未満の場合の加算係数を現在の「0.2」から「ゼロ」に引下げることについては、「有用性加算等が認められた結果が全く薬価に反映されていないという見直しは実施すべきではない」と主張。欧州製薬団体連合会(EFPIA)の岩屋孝彦会長(サノフィ)は、「原価計算方式の対象となる新薬は、既存薬の中に適切な類似薬が存在しないイノベーティブな医薬品だ。我々としても引き続き開示度を高める努力を継続していく。ただ、それですべて開示できるというケースばかりではないということを再度理解いただきたい」と強調。「開示度が50%未満であれば一律に加算係数をゼロとする見直しは、評価されたイノベーションが全く薬価に反映されないということで、適切ではないと考えている。仮に見直しを行うとしても、革新性の高い薬剤がその価値を適切に評価されるような仕組みとなるよう、検討いただくようお願いする」と訴えた。

日本製薬工業協会(製薬協)の岡田安史会長(エーザイ)は2018年度以降に新規収載され、補正加算が認められた品目のうち、原価計算方式の品目が7割を占めていると説明。「薬価算定の透明性の確保は十分に産業側として理解をしており、開示度の向上を目指している。50%を切る開示度の場合に加算係数がゼロという見直しは、イノベーションの評価という観点から、非常に厳しく、慎重に検討をお願いしたい」と理解と求めた。

◎新薬創出等加算 品目要件の拡充求める 効能追加や市販後エビデンスで


新薬創出等加算については、品目要件に「有用性加算の対象となり得る効能追加を行った品目」、「薬価収載時には確認できなかった有用性が市販後のエビデンス等に認められた品目」について追加を求めた。市販後のエビデンスは添付文書の改訂や、学術論文、ガイドラインへの掲載などで、第三者からも明確に確認が可能なものとした。専門委員の赤名正臣氏は、「査読されたうえで学術雑誌に掲載されるものは限定的だ。ガイドラインについても、単に第一選択薬として掲載されて、治療選択肢として増えたというものではなく、疾患としての標準治療を変えるものを想定しており、数は非常に少ないのではないか」と理解を求めた。

◎卸連・折本理事「調整幅問題は正直、勘弁いただきたい」 一定幅を含めた検討を

調整幅について卸連の鈴木会長は、卸売業の経営実態が厳しさを増している実態を説明した。2020年度の営業利益は、19年度に比べ、上場大手6社で70.7%減、6社以外の卸11社では97.6%減と「危機的な状況となっている」と強調した。こうした状況に後発品の供給不安が追い打ちをかけている。出荷調整の対象品目は9月時点の約3100包装から、11月時点では「約4200~6800品目」に拡大しているとの調査結果を示した。9月時点で、出荷調整にかかる医薬品卸の追加業務負荷は15%、出荷調整対応にかかる医薬品卸のコストは年間433億円との推計を示した。鈴木会長は、「医薬品卸への影響は相当な規模。決して一過性のものとは考えられず、事態の収束を見るまではまだまだ時間を要するものと危惧しており、流通当事者への負担はこれまで以上になる可能性もある」と危機感を示した。

卸連の折本健次理事(明祥)はこうした状況を踏まえ、「調整幅問題は、正直申し上げてご勘弁いただきたい。一定幅を含めて再度ご検討いただければ」と訴えた。また、8年後の薬価を考えたときに、これまでの制度では約22%の引き下げにとどまっていたが、毎年薬価既定の導入で8年後には薬価が半分になると指摘。新薬の開発確率の難しさにも触れたうえで、「新薬が早期に2倍以上のスピードで薬価が下落するというなかで、卸業もそれでいいのかということと、調整幅が剤形や包装、様々なものがあるが、それぞれに価格形成のためのバラツキの是正という理解をしている」と述べ、必要性を訴えた。

日薬連の眞鍋会長も、「現行の薬価改定方式で価格のバラツキがあるので、それを経済合理的な形で吸収する機能がある。薬剤流通の安定性のためにぜひ必要であるという立場で考えている」と述べた。

◎後発品の安定供給でGE薬協・澤井会長「個社の体制強化も課題」

このほか、後発品の安定供給に向けた課題を問われた日本ジェネリック製薬協会の澤井光郎会長(沢井製薬)は、「安定供給を続けていくためには、土台の一つである高度な品質管理体制を揺るがすような事態、これを二度と起こしてはならない。コンプライアンス、ガバナンス、リスクマネジメントのもとに、製造管理、品質管理体制を維持し続けること、これが必須であり、最大の課題と考えている」と述べた。

一方で、「メーカーだけで解決できない課題もある。例えば原薬の安定確保、原油価格の高騰、中国の電力供給不足、コロナの影響、半導体の需要過多など、経済安全保障にかかわることだ。国に対して講じていただきたい措置等を業界として要望させていただき、国の協力のもとで対応しないといけない。リスクを抑えるような努力、体制整備に努めていくことは言うまでもない。メーカー自身で解決できる課題、他に絡む課題をきちんと把握分析し、対応できるよう、業界団体だけでなく、個社の体制強化も課題だ」と述べた。

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