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中医協総会 分割調剤で「一定期間内の処方箋の反復利用」に前進 医師と薬剤師の連携で

公開日時 2021/12/09 04:52
分割調剤を議論した12月8日の中医協総会で、診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、「分割調剤が現場で運用しやすくなるよう、様式変更すべき」と主張した。具体的には、「1枚の処方箋様式にし、一定期間内の処方箋の反復利用を可能にすることが良いと考える」と述べた。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も、「処方箋様式の問題があるが、少なくとも一枚の処方箋を繰り返し使用できるように見直していただきたい」と主張した。“一定期間内の処方箋の反復利用”に前進した。

政府が6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2021」では、「症状が安定している患者について、医師及び薬剤師の適切な連携により、医療機関に行かずとも、一定期間内に処方箋を反復利用できる方策を検討し、患者の通院負担を軽減する」ことが盛り込まれていた。

いわゆるリフィル処方箋は、米国、イギリス、フランスなど、諸外国ではすでに導入されている状況にある。一方、日本では2016年度診療報酬改定で分割調剤が導入されたものの、算定回数は伸びていない現状にある。ただ、31日以上など長期処方は増加傾向にあり、残薬や副作用など、医薬品の適正使用の観点からも課題となっている。

厚労省は、分割調剤についての調査結果を提示。医師の指示による分割調剤を行ったことがある薬局は12.1%だった。薬局からみた分割調剤のメリットは、「残薬の確認が行いやすい」、「副作用等の確認が行いやすい」との声が多くあがった。実際に分割調剤を受けた患者に対する調査では、良かった点として、「残薬の相談がしやすい」、「後発品を安心して試すことができた」との声があがった。一方で、良いと思わなかった点をたずねたところ、「特に不満はない」が54.5%と過半数を占める結果となった。

◎診療側・有澤委員 分割調剤のデメリットとして「手続きが煩雑」


診療側の有澤委員は薬局対象の調査で、分割調剤のデメリットとして「手続きが煩雑」との回答が最多だったことを指摘。「現場の話を聞くと、処方箋様式が負担となっている」として、処方箋様式の変更を提案した。そのうえで、「最も大切なのは分割調剤を必要とする患者に対し、医療機関と薬局、医師と薬剤師の適切な、かつ確実な連携の下で実施することが必要だ」と強調した。

◎支払側・松本委員 「患者、医療者ともに使い勝手が良い簡便な仕組みを」


支払側の松本委員も、「患者、医療者ともに使い勝手が良い簡便な仕組みに進化させる必要がある」として、処方箋様式の変更の必要性を主張した。そのうえで、「服薬管理が難しい患者だけでなく、病状が安定している患者も十分対象になり得ると考える。処方医と薬局薬剤師が連携し、その間隔を柔軟に対応できることが重要だ」と述べた。普及に向けて、患者や医療機関の認知度が低いことをあげ、「薬剤師には患者の適切なフォローと、こうした仕組みがあることの情報提供、周知をお願いしたい」と呼びかけた。支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)も、「手続き的な課題や制度の周知についての取り組みを含め、改善を検討してもよいのではないか」と述べた。

一方、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「長期処方は残薬リスクや、多剤投与に気づきにくくなる。病状の変化を見逃すなど、患者の治療と保険財政への弊害が懸念される。それにもかかわらず、長期処方を助長される議論には、日本医師会として明確に反対する。むしろ、対象から除外すべきリスクの高い薬剤等についての議論を深めるべきだろう」と述べた。処方箋様式については、「様式の見直しではなく、30日を超える長期投与が可能であると判断した理由や病状が変化した場合の対応方法等を処方箋に記載して、患者や薬局に伝えることなども検討してはどうか」と提案した。

◎フォーミュラリ 診療報酬上の評価に肯定的な意見なく

フォーミュラリについてもこの日の中医協総会で、議論の俎上にのぼったが、診療報酬上の評価に肯定的な意見はみられなかった。診療側の城守委員は、「医療機関、法人経営の観点から活用されることは理解するが、リストの作成について医薬品関連企業が主導するなど、恣意的な内容になる危険性もある。定義もはっきりせず、策定方法やプロセスも明確になっていない。こういうものを診療報酬で評価することはなじまない」と指摘した。「医薬品の選定はあくまで、治療指針等が示している学会等が推奨する医薬品を中心に、医療機関が一定程度の自由度をもって導入を検討するものという風に考える」と述べた。

診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)は、「たとえば急性期病院では抗菌薬を適正に使用することで、病院の収支的にも大きく寄与することがわかっている。策定することは医療の質を担保する観点からも重要だろうと思う。積極的に進めていく必要がある。クリニカルパスやクオリティーインディケーターという質を担保するような、指標とセットで進めていく必要があると考えるが、診療報酬で評価すべきかどうかに関しては必要ない、と今は考えている」と述べた。

診療側の有澤委員は、「院内フォーミュラリの報酬上の評価については時期尚早」との見解を示し、今後も調査を継続する必要性を指摘した。

◎支払側・松本委員「療養担当規則等に定めていくという方策も一考では」

一方、支払側の松本委員は厚生労働科学研究でガイドラインが策定されたことに触れ、「報酬上の評価に結び付けていくためには今後のガイドラインの策定状況や、地域や病院の取り組み状況を見ながら丁寧に議論することが必要だ」と述べた。そのうえで、「一案として効果が同等であればより経済的な薬剤を優先的に使用するという旨を療養担当規則等に定めていくというのも方策としては考えられる」との考えを示した。また、診療報酬以外の対応として、「都道府県の策定する医療費適正化計画の中にフォーミュラリを位置づける」ことを提案した。支払側の安藤委員は、「フォーミュラリの取り組みを推進する方向性には異論はないが、推進するために診療報酬上の評価が必要なのかという点は制度のガイドライン等を定めて、その活用状況も踏まえ、さらなる検討が必要ではないか」と述べた。


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