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新薬8製品を4月20日に薬価収載 原価開示度50%未満で「加算係数ゼロ」を2製品に初適用

公開日時 2022/04/14 04:50
中医協総会は4月13日、8成分11品目の薬価収載を了承した。収載日は4月20日。このうち、▽希少疾病用医薬品で全身型重症筋無力症治療薬のウィフガート点滴静注(製造販売元:アルジェニクスジャパン)、▽くも膜下出血後の脳血管攣縮等の発症抑制の治療薬・ピヴラッツ点滴静注液(同イドルシア ファーマシューティカルズ ジャパン)――の2製品は、製造原価の開示度が50%未満だったため、初の加算係数ゼロの製品となり、補正加算分の薬価がつかなかった。

22年度薬価制度改革では、原価計算方式における製造原価の開示度向上に向けて、製造原価の開示度50%未満の場合は、加算係数がこれまでの「0.2」から「ゼロ」に引き下げられた。

ウィフガートは今回、薬価算定組織における検討の結果、新規作用機序であり、臨床上の有用性も示されているとして「有用性加算(II)(A=5%)」と、希少疾病用医薬品に指定されているため「市場性加算(I)(A=10%)」の補正加算を適用することが妥当と判断された。しかし、開示度が50%未満だったため加算係数はゼロとなり、結果、補正加算がつかなかった。ピヴラッツは「有用性加算(II)(A=5%)」が妥当と判断されたが、加算係数がゼロのため、補正加算がつかなかった。

この日の中医協で支払側の眞田享委員(日本経団連社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)は、加算係数がゼロとなる新ルールが初めて適用されたことを受けて、「昨年度の議論でもこの見直しについてはイノベーション評価の観点から懸念があると指摘してきた。今回の見直しの影響について今後、多面的に十分検証していただくようお願いする」と今後の検証を求めた。

◎4製品がピーク時100億円超を予想

今回収載される8製品のうち、ピーク時売上が100億円以上と予測されたのは4製品あった。このうちウィフガートは10年後の売上が377億円になると予測されたほか、ピヴラッツは8年後に138億円、慢性咳嗽治療薬・リフヌア錠(同MSD) は10年後に160億円、乾癬治療薬・ビンゼレックス皮下注(同ユーシービージャパン)は9年後に120億円――とそれぞれ予想された。

◎収載なかった初のムコ多糖症VII型治療薬・メプセヴィ アミカス社「早期の収載目指す」

一方で、1月20日付で承認された新医薬品のうち、国内初のムコ多糖症VII型治療薬・メプセヴィ点滴静注液(一般名:ベストロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)、製造販売元:アミカス・セラピューティクス)は今回、収載予定品目になかった。この点についてアミカスは本誌取材に、「現在、薬価収載の手続き中。早期の収載を目指す」とコメントした。

4月20日付で収載される製品は以下のとおり(カッコ内は成分名と薬価収載希望会社)

レイボー錠50mg、同錠100mg(ラスミジタンコハク酸塩、日本イーライリリー)
薬効分類:119その他の中枢神経系用薬(内用薬)
効能・効果:片頭痛
薬価:50mg1錠 324.70円、100mg1錠 570.90円(1日薬価:570.90円)
市場予測(ピーク時8年後):投与患者数13万人、販売金額28億円

加算:有用性加算(II)(A=5%):「本剤は5-HT1F受容体に対する選択的な作用を有する新規作用機序医薬品であり、臨床上の有用性が一定程度評価されていると考えられることから、有用性加算(II)(A=5%)を適用することが適当と判断した」
新薬創出等加算:「主な理由:加算適用」
費用対効果評価:該当しない

初の5-HT1F受容体選択的作動薬。中枢及び抹消の三叉神経系神経細胞に発現する5-HT1F受容体に結合することで、血管を収縮させずに、三叉神経からの神経伝達物質(CGRP)の放出を抑制することで片頭痛の症状を軽減する。片頭痛の病態には三叉神経系の過活動が関係しており、5-HT1F受容体が三叉神経系の神経細胞に発現していることから、5-HT1F受容体の片頭痛病態への関連性が指摘されてきた。

同剤の流通・販売は第一三共が担い、情報提供・収集活動は両社で実施する。両社は片頭痛治療薬エムガルティ皮下注でも販売提携しており、レイボーも同様のスキームで展開する予定。

リフヌア錠45mg(ゲーファピキサントクエン酸塩、MSD)
薬効分類:229 その他の呼吸器官用薬(内用薬)
効能・効果:難治性の慢性咳嗽
薬価:45mg1錠 203.20円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数19万人、販売金額160億円

加算:なし
新薬創出等加算:なし
費用対効果評価:該当する(H1)

世界初の慢性咳嗽に対する選択的P2X3受容体拮抗薬。P2X3受容体は気道の迷走神経のC線維上に発現しているアデノシン三リン酸(ATP)受容体で、ATPは気道の炎症条件下で気道粘膜細胞から放出される。細胞外ATPが気道のC線維上のP2X3受容体と結合することで、損傷の可能性を示すシグナルとして感知され、咳嗽が惹起されることがある。細胞外ATPとP2X3受容体の結合を阻害することで、C線維の活性化を抑え、咳嗽が抑制されると考えられている。

同剤は通常、成人には1回45mgを1日2回経口投与で用いる。杏林製薬が独占販売する。

ルマケラス錠120mg(ソトラシブ、アムジェン)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬(内用薬) 効能・効果:がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
薬価:120㎎1錠 4,204.30円(1日薬価:33,634.40円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数485人、販売金額23億円

加算:
有用性加算(Ⅰ)(A=35%)「本剤はKRAS G12C阻害作用を有する新規作用機序医薬品であり、臨床上の有用性が評価されている。また、米国NCCNガイドラインや国内肺癌診療ガイドラインで推奨されていることを踏まえ、標準的治療に位置づけられると考えられる。以上より、有用性加算(Ⅰ)(A=35%)を適用することが適当と判断した」
市場性加算(Ⅰ)(A=10%):「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす」
新薬創出等加算:「主な理由:希少疾病用医薬品として指定」
費用対効果評価:該当しない

KRAS G12C阻害薬。非小細胞肺がん(NSCLC)で認められるドライバー変異のひとつにKRAS G12C変異がある。これまでにKRAS G12C変異を有するNSCLCに対する治療薬は日本で承認されておらず、既存の二次治療における転帰も不良なため、高いアンメット・メディカル・ニーズとなっている。国内のKRAS G12C変異陽性のNSCLCの患者数を約6700人とされる。

同剤は通常、成人には1回960mgを1日1回経口投与で用いるが、患者の状態で適宜減量する。

同社は、KRAS G12C変異を有するNSCLC患者の緊急の要望に応えるため、厚労省の定める「保険外併用療養費制度」のもと、同剤を無償提供する「倫理的無償供給プログラム」を実施しているが、同プログラムの実施期間は薬価収載前日までとなる。

ピヴラッツ点滴静注液150mg(クラゾセンタンナトリウム、イドルシアファーマシューティカルズジャパン)
薬効分類:219 その他の循環器官用薬(注射薬)
効能・効果:脳動脈瘤によるくも膜下出血術後の脳血管攣縮、及びこれに伴う脳梗塞及び脳虚血症状の発症抑制
薬価:150mg6mL1瓶 80,596円
市場予測(ピーク時8年後):投与患者数7.7千人、販売金額138億円

加算:有用性加算(II)(A=5%):「既存治療薬が承認時に評価されていない脳血管攣縮に関連したM/Mイベントの発現抑制作用が確認されたことから、有用性加算(II)(A=5%)を適用することが適当と判断した」。なお、製造原価開示度50%未満のため、加算係数はゼロ。
新薬創出等加算:主な理由「加算適用」
費用対効果評価:該当する(H1)

エンドセリン受容体拮抗薬で、今回の効能・効果を持つ世界初の治療薬。エンドセリンA受容体を阻害することで、くも膜下出血により増加したエンドセリン-1との関連が示唆される脳血管収縮を抑制し、脳血管攣縮の発症を抑制すると考えられている。同剤は、くも膜下出血術後早期に投与を開始し、くも膜下出血発症15日目まで投与して用いる。

エヌジェンラ皮下注24mgペン、同皮下注60mgペン(ソムアトロゴン(遺伝子組換え)、ファイザー)
薬効分類:241 脳下垂体ホルモン剤(注射薬)
効能・効果:骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症
薬価:24mg1キット 43,032円(1日薬価:3,381円)、60mg1キット 107,580円
市場予測(ピーク時7年後):投与患者数5.2千人、販売金額64億円

加算:小児加算(A=5%):「小児効能に係る臨床試験を実施したこと等から、加算の要件に該当する。日本人の試験組み入れ数等を踏まえ、加算率は5%が妥当」
新薬創出等加算:なし
費用対効果評価:該当しない

ヒト成長ホルモンにヒト絨毛性ゴナドトロピンに由来するアミノ酸配列を付加することにより、生体内半減期を延長した新規の長時間作用型ヒト成長ホルモン製剤。1週間に1回の皮下投与で用いる。これまで成長ホルモンの治療は連日投与する必要があった。

ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ、同160mgオートインジェクター(ビメキズマブ(遺伝子組換え、ユーシービージャパン)
薬効分類:399 他に分類されない代謝性医薬品(注射薬)
効能・効果:既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症
薬価:160mg1mL1キット 156,820円(1日薬価:5,601円)、160mg1mL1筒 156,587円(1日薬価:5,592円)
市場予測(ピーク時9年後):投与患者数5.6千人、販売金額120億円

加算:有用性加算(II)(A=5%):「複数の既存の生物製剤とのランダム化比較試験が実施されており、これらの試験結果を踏まえた考察により、既存治療に対して有効性が示されたと考えられ、有用性加算(II)(A=5%)が適当と判断した」
新薬創出等加算:主な理由「加算適用」
費用対効果評価:該当する(H1)

炎症性サイトカインのIL-17AとIL-17Fを選択的に阻害するヒト化モノクローナルIgG1抗体。IL-17FはIL-17Aとは独立して炎症を促進する。同剤はIL-17AのみならずIL-17Fも選択的に阻害することが特長で、IL-17Aのみの阻害よりさらに大きな炎症抑制が期待されている。

同剤は通常、成人には1回320mgを初回から16週までは4週間隔で皮下注射し、以降は8週間隔で皮下注射する。ただし、患者の状態に応じて16週以降も4週間隔で皮下注射できる。

ウィフガート点滴静注400mg(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)、アルジェニクスジャパン)
薬効分類:639 その他の生物学的製剤(注射薬)
効能・効果:全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)
薬価:400mg20mL1瓶 421,455円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数2.5千人、販売金額377億円

加算:
有用性加算 (II)(A=5%):「新規作用機序として、FcRnに結合し内因性IgG濃度を低下させることにより、臨床上の有用性を示したことから、有用性加算 (II)(A=5%)を適用することが適当と判断した」
市場性加算 (Ⅰ)(A=10%):「希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす」
なお、製造原価開示度50%未満のため、加算係数はゼロ。
新薬創出等加算:主な理由「希少疾病用医薬品として指定」
費用対効果評価:該当する(H1)

抗FcRn抗体フラグメント製剤。疾患を引き起こす原因である免疫グロブリンG(IgG)抗体を減らし、IgGのリサイクルを阻害するよう設計されたもの。IgG抗体の分解を妨げる上で中心的な役割を担っている胎児性Fc受容体(FcRn)に結合し、FcRnを遮断することで、IgG抗体値が減少する。このため、疾患を引き起こす IgG抗体によって生じるいくつかの自己免疫疾患に対する論理的な治療法となる可能性がある。

重症筋無力症は、IgG抗体が神経・筋肉間の情報伝達を妨害し、生命を脅かす可能性のある消耗性の筋力低下を引き起こす希少慢性自己免疫疾患。患者の85%以上が18か月以内に全身型重症筋無力症に進行し、症状が全身の筋肉に及んで極度の疲労をきたし、話したり、飲み込んだり、動いたりすることが困難となる。呼吸を司る筋肉に影響を及ぼすこともある。

同剤は、1回10mg/kgを1週間間隔で4回1時間かけて点滴静注し、これを1サイクルとして投与を繰り返す。

ラピフォートワイプ2.5%(グリコピロニウムトシル酸塩水和物、マルホ)
薬効分類:125 発汗剤、止汗剤(外用薬)
効能・効果:原発性腋窩多汗症
薬価:2.5%2.5g1包 262.00円(1日薬価:262.00円)
市場予測(ピーク時7年後):投与患者数5.6万人、販売金額34億円

加算:なし
新薬創出等加算:なし
費用対効果評価:該当しない

同剤はグリコピロニウム臭化物の塩違いで、ムスカリン受容体に親和性を示し、抗コリン作用を有する。用法・用量は、「1日1回、1包に封入されている不織布1枚を用いて薬液を両腋窩に塗布する」。ワイプ剤は初めて。原発性腋窩多汗症治療薬にはエクロックゲルがあるが、こちらはゲル剤となる。重度の原発性腋窩多汗症に対してはボトックス筋注がある。
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