新型コロナウイルス感染症に対する全世界のワクチン売上が、2021年に計600億ドル以上にのぼったことがわかった。売上１位はファイザーとビオンテックが１番手で実用化に成功したコミナティで、ファイザーの売上（アライアンス売上含む）は367億ドルだった。ワクチンと並んで感染対策の切り札とされた治療薬の21年売上は計160億ドル以上となり、売上１位はリジェネロンとロシュグループが共同開発したロナプリーブ（両社単純合算で75億ドル）だった。企業発表の22年予想をみると、治療薬はファイザーの経口薬パキロビッドが22年に220億ドルになるとしている。

文末の「関連ファイル」に、21年に10億ドル以上売り上げた新型コロナワクチンと治療薬の一覧表を掲載しました（会員のみダウンロードできます。14日間の無料トライアルはこちら）。

2019年12月に中国・武漢市で原因不明肺炎の発生が報告された。WHOは20年１月12日にこの原因不明肺炎は新型コロナウイルスが原因と発表、３月11日にはパンデミック（世界的大流行）を宣言した。全世界で猛威を振るう新型コロナは、初期段階から感染拡大防止や感染対策の切り札はワクチンと治療薬と言われ、世界の製薬企業や研究機関がワクチン・治療薬の開発に着手した。

その結果、ワクチンはファイザーとビオンテックが共同開発したmRNAワクチン・コミナティが１番手で実用化に成功した。英国で20年12月２日に一時的認可を得たことを皮切りに、米国で同月11日に緊急使用許可、EUで21日に条件付き承認を取得した。日本では21年２月14日に特例承認された。コミナティから数週間～数カ月遅れでモデルナのmRNAワクチン・スパイクバックスが２番手として米国、英国、EU、日本で実用化。ほぼ同時期にアストラゼネカのアデノウイルスベクターワクチン・バキスゼブリアも英国、EU、日本で条件付きなどで承認された。

これらのワクチンが21年に世界で接種され、今、コロナ前の日常を取り戻しつつあるが、結果としてワクチン売上がどの程度になったのかも気になるところ。そこでミクス編集部は、21年に世界で10億ドル以上を売り上げたワクチンを調べた。

ワクチン売上をみると、売上全体の６割をコミナティが占め、ファイザーの売上（アライアンス売上含む）が367億ドル、自社テリトリーとするドイツとトルコでのビオンテックの売上が35億ドルだった。ファイザーの20年売上は416億ドルだったため、コミナティ１剤の売上が極めて巨額なことがわかる。

スパイクバックスの21年売上は176億ドル、バキスゼブリアは39億ドル、ジョンソン・エンド・ジョンソンの１回接種型ワクチン・ジェコビデンは23億ドルだった。

◎経口新型コロナ治療薬の22年売上予想　パキロビッド220億ドル、ラゲブリオ50～55億ドル

新型コロナ治療薬の21年の売上１位は、リジェネロンとロシュグループが共同開発した２種類の中和抗体を組み合わせて軽症～中等症の患者等に用いるロナプリーブで、米国売上を計上するリジェネロンは58億ドル、米国外の売上を計上するロシュは17億ドルだった。

ギリアド・サイエンシズの世界初の新型コロナ治療薬・ベクルリーは55億ドルだった。有効成分のレムデシビルはエボラ出血熱を対象疾患に開発されていたが、新型コロナ治療薬として20年２月から臨床試験を開始。５月１日には米国で緊急使用許可を取得し、日本でも同月７日に特例承認された。現在は軽症患者にも使用が広がっている。

なお、英国で21年11月に承認された、米メルクの世界初の新型コロナに対する経口薬・ラゲブリオは、21年売上は9.5億ドルだったが、22年は50～55億ドルになると予想している。米英で21年12月に実用化されたファイザーの経口薬・パキロビッドは、21年売上は7600万ドル、22年計画は220億ドルと公表している。両社の売上予測からも、経口薬がパンデミックを制する上で重要な治療選択肢になるといえそうだ。