希少疾病用医薬品の国内市場 30年に1兆円の大台に 24年比で3000億円以上拡大 富士経済
公開日時 2025/08/27 04:52
希少疾病用医薬品の国内市場規模が2030年に1兆円の大台にのる――。このような市場予測を富士経済がまとめた。▽開発品がある、▽国内に治療薬がある、▽国内患者数が100人以上5万人未満――のいずれかを満たすものを調査対象の希少疾患と定義した上で、希少疾患13分類177品目の医療用医薬品市場を分析・展望した。その結果、市場規模は24年の7280億円が27年に9000億円を超え、30年に1兆615億円になると予測した。富士経済は、国内の希少疾病用医薬品について、「医療用医薬品市場を底上げする領域に成長すると予想される」とコメントしている。
調査対象の希少疾患13分類ごとの調査結果を見てみる。希少疾病用医薬品市場の4割を占める血液関連市場では、血友病や遺伝性血管性浮腫(HAE)などで新薬上市が相次いでいるなか、「今後は血小板減少症治療薬や発作性夜間ヘモグロビン尿症治療薬、HAE治療薬を中心に市場拡大が続く」と分析した。
中枢神経関連の市場は、重症筋無力症や視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の治療薬が市場をけん引しているとした上で、NMOSD治療薬・エンスプリングなどの主要製品の伸長と開発品の発売により今後も市場は拡大するとした。ヒト成長モルモン剤がけん引する内分泌・代謝関連市場は、「今後は軟骨無形性症治療薬の伸長が期待される」。移植片対宿主病治療薬がけん引する免疫関連市場は、「今後は全身性血管炎治療薬の伸長が期待される」。
ライソゾーム病治療薬などで伸びている遺伝性疾患関連市場は、22年発売の神経線維腫症治療薬・コセルゴが「市場拡大に寄与する」とした。膠原病関連市場は、24年に縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー治療薬・アセノベルが発売されたことに触れて、「ミオパチー治療薬を中心に拡大する」と予測した。
循環器関連市場は、「全身性アミロイドーシス治療剤がけん引し、今後も順調に拡大する」。多発性嚢胞治療薬がけん引する腎・泌尿器関連市場では、「今後は開発品が豊富なループス腎炎治療剤の伸長が期待される」とした。呼吸器関連市場は重症α-アンチトリプシン欠乏症やリンパ脈管筋腫症が発売されているのみで「小規模」と指摘。原発性胆汁性胆管炎治療薬がある消化器関連市場は、「今後は好酸球性消化管疾患治療薬剤の発売が予定されており、そのほかの開発品もあることから市場は徐々に拡大する」と分析した。
現在発売されている治療薬がない皮膚関連や整形関連の希少疾患は、「今後開発品の発売や開発の着手が期待される」。その他の希少疾患では、▽好酸球性副鼻腔炎、▽肝類洞閉塞症候群、▽クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群――の治療薬の市場規模が24年に39億円になったと紹介。40年には24年比3.4倍の134億円になることが予測されると分析した。
富士経済は、専門調査員による参入企業及び関連企業・団体などへのヒアリングや関連文献調査、社内データベースを併用して調査した。調査期間は25年3~5月。