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くすり未来塾・長野共同代表 不採算品等に購入価償還制度導入で薬価差ゼロを 例えば薬局市場で局方品に

公開日時 2022/07/22 04:52
薬価流通政策研究会・くすり未来塾の長野明共同代表(元日薬連保険薬価研究委員会委員長)は7月21日、本誌インタビューに応じ、不採算品目などに購入価償還制度を導入することで、「例えば、薬局市場において局方品で薬価差のない世界を作ったらどうか」と強調した。くすり未来塾は同日、薬価・医薬品流通改革提言の第3弾を公表した。長野共同代表は今回の提案のルーツが2007年に日本製薬工業協会(製薬協)で自身がプロジェクトリーダーを務めて提案した、「届け出価格承認制」、「エグゼンプト・ドラッグ」と同様の発想であることを明かした。この提案と、その後の議論こそが現在の新薬創出等加算の実現につながっている。長野共同代表は、「15年前の製薬協の提案をもう一度ひも解くことで、業界団体としてもっと深い議論ができるのではないか。未来塾の提言を参考にしながら、今日的な要素を踏まえ、自らのオリジナルを発信してほしい」と訴えた。

◎ルーツは15年前に遡る 製薬協の新薬創出等加算提案

「新たな薬価制度に関する提案-より良い医薬品が、より早く患者に届けられるための新たな薬価制度の提案」-。2007年7月に製薬協が新薬創出等加算を提案したプレスリリースはこう銘打たれている。当時、ドラッグ・ラグが問題となるなかで、製薬協が独自提案したのが、「届け出価格承認制」、「エグゼンプト・ドラッグ」だった。収載時価格算定の企業の自由度を高めるとともに、市場実勢価格主義を是正し、特許期間中の循環的価格低下を抑えることなどが主眼となっていた。まさに、業界の悲願だった新薬創出等加算導入への長い道のりの第一歩を刻んだ。

◎不採算品目に問題意識「特に地方に必要な薬が届かなくなる」

今回、くすり未来塾の提案は、新薬ではなく、不採算品目を対象とした。くすり未来塾が参考にした全国卸のデータによると、全商品の約30%弱が不採算品目だという。薬価を上回る流通コストの品目も散見される。これは、基礎的医薬品や安定確保医薬品でも同様だ。長野共同代表は、「最終的には、離島や山間へき地だけでなく、地方を中心に必要な薬が必要な患者さんに届かなくなるのではないか」と危機感を露わにする。「卸・医療機関の薬価差をなくすという前提での公定薬価制度であっても、流通コストは何かで解消しないといけない」との考えを強調する。

こうした問題意識の下で提案するのが、医療機関や薬局の購入価で償還する仕組みの導入だ。長野共同代表は、「一部でもいいので、薬価差のない世界をやってみましょうというものだ」と提案の主旨を説明する。そして、改めて自身がプロジェクトリーダーとなって製薬協から提案した、「届け出価格承認制」、「エグゼンプト・ドラッグ」の結論が骨格となっていると明かしてくれた。「2007年当時は新薬にフォーカスしたが、今回の提案はカテゴリーにフォーカスしてやってみたらどうかということだ」と指摘。「国民医療を考えて、国民に必要な医薬品が必要な時に迅速に届くという、良質廉価なものが届く世界を実現したい」と話した。

◎「まずは、薬局市場に導入してみてはどうか」 ボランタリーチェーンの台頭に問題意識

「まずは、この制度を薬局市場に導入してみてはどうか」―。長野共同代表はこう話す。薬局市場では、ボランタリーチェーンが台頭し、適正価格での取引が進まないなど、「放置すべきではない現状がある」と指摘する。実際、公定価格であるイギリスでは差益の一部は国に還元するなどしていることを紹介し、日本でも差益は国に還元すべきとの考えだ。

現行の薬価制度は市場実勢価主義だが、同じ製品であってもバイイングパワーにより納入価が異なる。また現行の薬価調査が抽出調査であることにも触れ、「市場実勢価とは何か。言葉の定義から、新たな薬価制度改革の議論をしなければいけないのではないか」との認識も示した。

◎薬価調査の仕組みもAIなどデジタルを活用する“随時改定・デジタル改定”に

これにあわせて、現行の薬価調査の手法を変更する必要もある。くすり未来塾では、薬価調査の仕組みもAIなどデジタルを活用する“随時改定・デジタル改定”の実施を提案する。長野共同代表は、取引ごとに償還する仕組みであることから、「瞬時改定」とも話した。診療報酬と同様に、薬局などからの請求を踏まえて、医薬品卸には流通フィーとして、製品の価格帯などにより、一定の金額や率などをマージンとして支払う仕組みを視野に入れる。いわば、医薬品の購入価償還に診療報酬請求の仕組みを応用するようなイメージも披露した。

◎「依存心から脱却しないと、卸連も製薬協も戦に勝てない」

新薬創出等加算が試行的導入されたのは2010年度だが、中医協薬価専門部会で申請価格協議方式を提案したのは2005年のこと。「業界内で長い期間、議論を積み重ねてきた」(長野共同代表)と振り返る。

厚労省は7月に医薬品産業振興をつかさどる「医薬産業振興・医療情報審議官」を新設し、初代審議官に城克文氏が就いた。長野共同代表は、「業界団体は基本的に甘い期待をして、何かやってくれるのではないか、と受け身だ」と警鐘を鳴らす。「むしろ依存心から脱却しないと、卸連も製薬協も戦に勝てない」とも指摘する。行政はあくまで“応援者”との見方を示し、「応援者に依存してはダメだ。応援者は公的な立場であって、プレーヤーではない。経済課長に依存するのも審議官に期待するのもダメだ。主体はあくまで、製薬業界のなかであるべきだ。くすり未来塾の提言を咀嚼し、議論を尽くして自らの発信につなげていってほしい」とエールを送った。(望月英梨)
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