武田薬品のクリストフ・ウェバー社長CEOは10月27日、2022年度第２四半期決算説明会で、エンティビオやタクザイロ、免疫グロブリン製剤などの成長製品や新製品の「力強い成長」と円安の追い風により、10.1％の増収を達成したと発表した。21年度第１四半期に国内糖尿病ポートフォリオを帝人ファーマに売却したことに伴う譲渡価額として1330億円を計上したが、それでも２桁増収したことになる。一方で、円安の影響で売上原価、販管費、研究開発費は２桁増となり、営業利益は26.3％減となった。通期業績予想は、「ビジネスの勢いは力強く、為替により大きなアップサイドもある」として上方修正した。

同社のトップ製品であるエンティビオ（国内製品名：エンタイビオ）は、前年同期比35.4％増の3466億円となり、成長を牽引。通期予想も6590億円から7210億円に引き上げた。ウェバー社長は、「さまざまな地域でシェアを獲得し続けており、まだ潜在的なシェア獲得は終わっていない。主な地域において市場シェアが上昇する傾向が続いている」などと話し、ピーク時売上予想を75～90億ドル（従来55～65億ドル）に引き上げたことを明らかにした。エンティビオのバイオシミラー（BS）の参入時期にも言及し、「現時点では2030年までにBSが上市される可能性は極めて低く、場合によっては2032年まで遅れる可能性がある」と述べた。

主要ビジネス領域（消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤（免疫疾患）、オンコロジー、ニューロサイエンス）は、オンコロジーを除き、全領域で20％を超える増収を記録した。タクザイロは53.2％増の728億円、免疫グロブリン製剤は35.2％増の2451億円と大きく伸長した。また、バイバンスは、32.6％増の2112億円を売り上げた。一方、唯一減収だったオンコロジー領域は、米国でベルケイドの後発品が５月に登場し、急速に浸透したことが響いた。

新製品は、21年12月に米国で上市した移植後のサイトメガロウイルス（CMV）感染／感染症治療薬・LIVTENCITYが42億円を、21年９月に米国で上市した非小細胞肺がん治療薬・EXKIVITYが14億円をそれぞれ売り上げた。

23年には米国市場でバイバンス（国内製品名：ビバンセ）に後発品参入が見込まれるが、「LOE（独占期間の満了）は、だいたい８月ぐらいだと思っているが、成長製品・新製品の成長軌道がこのまま進めば、特許切れの影響を相殺できると思っている」（コスタ・サルウコスCFO）とした。

◎国内売上は33％減　前期の糖尿病ポートフォリオ譲渡価額計上の反動で

日本市場の売上は、前期の糖尿病ポートフォリオ売却に伴う譲渡価額の計上という特殊要因の反動で33.1％減の2614億円となった。個別製品を見ると、22年４月に特例拡大再算定が適用されたタケキャブは1.6％増の468億円と増収を確保した。６月に後発品が参入したロトリガは34.6％減の105億円となっている。

◎デング熱ワクチン「TAK‐003」　投与前の血液検査を必要としない唯一のワクチンに

研究開発面では、デング熱ワクチン「TAK-003」について、８月に世界で初めてインドネシアで承認を取得したのに続き、10月には欧州医薬品委員会（CHMP）から承認勧告が出された。ウェバー社長は、「重要なのはCHMPがデング熱の感染歴に関係なく広く使用することを推奨したことだ。これにより投与前に血液検査を必要としない唯一のデング熱ワクチンとなり、アクセスへの大きな障壁をなくし、ワクチンの有効性・安全性に関する信頼性を高めることができると考えている」と述べた。

現在第１相試験段階の長時間作用型経口オレキシン受容体作動薬「TAK-861」については、リサーチ＆デベロップメントプレジデントのアンディー・プランプ氏が「試験は順調だ。年度末までに次の決定ができればと思っている」とコメントした。

【22年度第2四半期決算（前年同期比）　22年度通期予想（前期比）】
売上高 １兆9747億7100万円（10.1％増）　３兆9300億円（10.1％増）←修正前３兆6900億円
営業利益 2549億5300万円 （26.3％減）　5300億円（15.0％増）←修正前5200億円
親会社帰属純利益　1667億5600万円（9.2％減）　3070億円（33.4％増）←修正前2920億円

【疾患領域別売上高（前年同期実績）前年同期比　億円】　
消化器系疾患　5464（4291）27.3％増
希少疾患　3622（3001）20.7％増
うち希少血液疾患　1557（1416）10.0％増
うち希少遺伝子疾患およびその他　2065（1585）30.3％増
血漿分画製剤（免疫疾患）　3140（2380）31.9％増
オンコロジー　2253（2337）3.6％減
ニューロサイエンス　3023（2337）29.3％増

【グローバル主要製品売上（前年同期実績）通期予想　億円】
【消化器系疾患】
エンティビオ　3466（2559）7210 ←修正前6590
タケキャブ 547（491）1140 ←修正前1120
レベスティブ 484（368）1000 ←修正前910
DEXILANT380（257）520 ←修正前400
PANTOLOC/CONTROLOC 222（199）410←修正前400
リアルダ／MEZAVANT113（117）250←修正前230
PENTASA 　47（100）60←修正前170
RESOLOR/MOTEGRITY 77（64）160←修正前140
アロフィセル 11（8）40←修正前40

【希少⾎液疾患】
アドベイト　624（613）1870←修正前1730（予想はアディノベイト計）
アディノベイト 344（300）
ファイバ 213（202）410←修正前380
RECOMBINATE 　62（63）150←修正前130
HEMOFIL/IMMUNATE /IMMUNINE 107（84）210←修正前190

【希少遺伝⼦疾患およびその他】
タクザイロ 728（475）1370←修正前1250
エラプレース 424（348）840←修正前770
リプレガル 　343（259）710←修正前680
ビプリブ 233（210）500←修正前460
フィラジル 134（143）230←修正前210
CINRYZE 　 96（102）130←修正前130
LIVTENCITY　42（―）

【⾎漿分画製剤（免疫疾患）】
免疫グロブリン製剤 2451（1813）
アルブミン製剤 518（417）

【オンコロジー】
ベルケイド 208（551）280←修正前470
リュープリン 537（539）1160←修正前1060
ニンラーロ 488（458）1040←修正前1030
アドセトリス 417（341）810←修正前750
アイクルシグ 232（179）450←修正前410
ベクティビックス 133（128）240←修正前240
アルンブリグ97（62）280←修正前260
ゼジューラ64（33）120←修正前120
カボメティクス40（30）80←修正前80
EXKIVITY　14（２）

【ニューロサイエンス】
バイバンス　2112（1593）4360←修正前3720
トリンテリックス 498（400）1050←修正前950
インチュニブ 105（75）190←修正前190
ADDERALL XR 125（96）170←修正前90
ロゼレム 65（63）80←修正前80

【その他】
アジルバ 372（404）730←修正前730
ロトリガ 105（161）130←修正前130
ホスレノール 75（70）120←修正前110
ACTOVEGIN 76（67）160←修正前120

【国内主要製品売上（前年同期比）　億円】
エンタイビオ　67 （23.3％増）
タケキャブ 　468 （1.6％増）
レベスティブ 25 （1634.8％増）
アドベイト 20 （32.8％減）
アディノベイト 71 （2.2％減）
ファイバ ５（19.6％増）
タクザイロ　５ （－）
エラプレース ５（24.5％増）
リプレガル　46（478.2％増）
ビプリブ ５（14.3％減）
フィラジル ９（21.8％増）
リュープリン 122 （18.9％減）
ニンラーロ　34 （15.1％増）
アドセトリス 64 （12.9％増）
ベクティビックス 133 （4.0％増）
アルンブリグ ９　（79.4％増）
ゼジューラ　52 （89.6％増）
カボメティクス　40 （34.2％増）
ビバンセ　２ （6.7％減）
トリンテリックス　38　（57.4％増）
インチュニブ 52　（193.7％増）
ロゼレム　64 （4.7％増）
アジルバ 372 （7.8％減）
ロトリガ 105 （34.6％減）