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日医・松本会長 “面”でかかりつけ医機能発揮 制度整備へ提言公表 連携やNW構築で補助金活用も視野

公開日時 2022/11/04 04:52
日本医師会の松本吉郎会長は11月2日の定例記者会見で、「地域における面としてかかりつけ医機能」を発揮する制度整備に向けた提言を公表した。各医療機関が自らの機能を発揮し、地域の連携医療機関ネットワークを通じて機能を補完することで、“面”でかかりつけ医機能を発揮する姿を描いた。各医療機関の機能を国民が把握し、自ら医療機関を選択できるよう、医療情報提供制度をわかりやすい内容に改めることも提案した。こうした連携やネットワーク構築への環境整備として補助金などを活用する必要性にも言及した。年末に向けて、全世代型社会保障構築会議などの場でかかりつけ医をめぐる議論が加速するなかで、日本医師会としての主張を取りまとめた。

◎国民・患者が相談しやすい環境整備に向けて真摯に取り組む―松本日医会長


「大切なことは、国民・患者に良質で安心できる医療を提供していくこと。医師と国民・患者の間で平時から身近で頼りになる関係を作ることが重要だ。医師(医師会・医療界)自身が変わっていかなければならないことがあるのであれば積極的に受け止め、国民・患者が相談しやすい環境整備に向けて真摯に取り組み、改革を進めていく」-。松本会長は冒頭で、こう決意を表明した。「一刻も早く日本医師会としての考え方を示すことが必要と考えていた」と述べ、会長として「最初の仕事」として、肝入りで取り組んできたことも明かした。取りまとめについては、「時期的にも年末の議論にも間に合う形で意見表明ができた」とも述べた。

◎医療機関の機能を磨く「縦糸」、医療機関が連携する「横糸」を紡ぐ

提言では、「各医療機関は自らが持つ機能を磨くことにより縦糸を伸ばすとともに、さらに地域における他の医療機関との連携を通じて横糸を紡ぎ、それによって“地域における面としてのかかりつけ医機能”が織りなされ、さらに機能を発揮していく。日常診療時より、他の医療機関と連携し、急変時においても、可能な限り地域におけるネットワークで対応を行う」とした。日常診療では、健康指導や診察、相談応需、紹介などを「かかりつけ医機能を担う診療所(または地域型病院)」が担い、「地域包括ケア機能・医療介護連携拠点を備えた診療所や病院」との連携医療機関ネットワークで24時間体制で地域医療を担う。急変時には、高度急性期を担う医療機関(三次救急)と連携することで対応する。地域医師会がリーダーシップを取り、地域の実状に応じた体制を描いた。

コロナ禍など、感染症発生・まん延時(有事)に対しても、地域の面で対応する必要性を強調。「地域の医療体制全体のなかで感染症危機時に外来診療や在宅療養等を担う医療機関をあらかじめ適切に確保し明確化しておくことで、平時に受診している医療機関がない方を含め、国民が必要とするときに確実に必要な医療を受けられるようにしていくべき」とした。

◎「医療機能情報提供制度」の活用を国民にも周知 医療機関を選択する際の分かりやすさも


こうした“地域における面としてのかかりつけ医機能”が発揮されるためには、国民が医療機関の機能を知り、自ら必要な医療を選択できることが必要になる。このため、「医療機能情報提供制度」を国民に活用してもらう必要性も強調。要件のなかでも、①日常的な医学管理および重症化予防、②地域の医療機関等との連携、③在宅医療支援、介護等との連携、④適切かつわかりやすい情報提供-は「内容が曖昧」だと指摘。そのほかの要件については、診療報酬上の項目がそのまま使用されているとした。そのうえで、「診療報酬上の届け出基準など医療機関が報告しやすい形としつつ、国民に情報提供を行う際には、国民が医療機関を選択するにあたってわかりやすい形としていくための検討が必要」とした。

地域で面としてかかりつけ医機能を発揮する、いわゆるネットワーク型医療の構築には、連携が欠かせない。松本会長は、「とにかく国民にやはり選んでいただけるような、かかりつけ医にならなければいけない」と述べ、日本医師会のかかりつけ医研修制度などを通じ、「医師自身もしっかりと自分自身を切磋琢磨し、機能を高めていくことが必要だし、それによって面としての機能も強化できると考えている」と述べた。また、積極的な医師会への参画の必要性も訴えた。

◎かかりつけ医の機能は広範 診療報酬と補助金の組み合わせなど報酬のあり方は「今後の議論」


そのうえで、制度上の後押しの必要性にも言及。現行の診療報酬でも、地域包括診療料などかかりつけ医機能を評価する点数があるが、「多くの医療機関が算定できるようにするとともに、財政中立ではなく、今後評価をさらに充実・強化すべき」とした。一方で、地域に根差した活動への評価・支援や、連携やネットワークの構築等の環境整備を図るため、「診療報酬上の評価のみならず補助金等の活用が不可欠」とした。

松本会長は、「かかりつけ医の制度整備についてということで議論を開始している。あくまで報酬のあり方については今後の議論になると思うが、かかりつけ医の担う機能は非常に広範だ。予防や相談、日常的な健康管理など、狭い意味での診療行為を超えた様々な対応も求められてくると思う。地域におけるかかりつけ医の役割は決して診療報酬だけで行えているわけではない。診療報酬と補助金の組み合わせなど、報酬のあり方をどう考えていくか。そういったことは今後の改めての議論になる。まずはかかりつけ医機能をどう発揮したらいいか、どう国民に知らせていったらいいかということが行われた後の議論だと思っている」と述べた。

◎“制度整備”と“法制化”の違いを強調「かかりつけ医はあくまで国民が選ぶ」が基本

かかりつけ医をめぐっては今年5月、政府の全世代型社会保障構築会議が提言。これを受け、
今年6月に経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)で、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」ことが盛り込まれた。財務省は財政制度等審議会で、かかりつけ医機能の要件の法制上明確化し、機能を備えた医療機関をかかりつけ医として認定することや、かかりつけ医の利用希望者には事前登録・医療情報登録を促す仕組みを導入することを提案していた。

松本会長は、骨太方針に盛り込まれた“制度整備”と“法制化”の違いを強調。そのうえで、「かかりつけ医はあくまで国民が選ぶものであることが基本だ。国民にかかりつけ医を持つことを義務付けたり、割り当てたりすることは反対だ。国民にかかりつけ医を選ぶ権利はあるが、義務ではない。もし制度化という言葉がそのようなことを意図しているのであれば、医師会として賛成することはできない」と表明した。「研鑽を積んで自ら積極的にかかりつけ医になる能力を持つ医師が選ばれるような制度整備を行っていくことが重要だ」と強調した。

◎人頭払い「現実的な提案ではない」 登録医制は「伝統を損なう乱暴な議論」

財務省の主張する医師の登録制については、「患者の医療へのアクセス権や医師を選ぶ権利を阻害する提案であり、我が国の良い医療の伝統を損なう乱暴な議論だと考えている。このような提案は国民も受け入れられないのではないか」と強調した。人頭払いについては、「単純な人頭払いについては高度な医療がなかった時代はともかく、現在の複雑かつ高度な医療においては現実的な提案ではないと思う。負担のあり方も非常に大きな問題になるかと思うので簡単な問題ではない。かかりつけ医機能は一人の医師がすべてを担っていくことは困難であることはこれまでも再三述べてきた。地域の医療体制が面として患者を支えることが求められるなかで、この体制を人頭払いで補償することは不可能ではないか」と述べた。


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