東和薬品の吉田逸郎社長は11月14日の2023年３月期（22年度）第２四半期決算会見で、日医工の債務超過と事業再生ADRの動向を注視しているとした上で、「できれば今の生産と販売は続けてもらいたい」と述べた。ジェネリック業界全体の製品の安定供給を念頭においた発言。日医工の支援に乗り出す考えがあるかについては、自社の厳しい22年度上期業績と通期計画の下方修正を踏まえ、「支援するほどの余裕というか、自社の数字の立て直しがまず大事」と述べ、日医工支援には否定的な構えをみせた。

◎業界再編あり得る

吉田社長は、▽薬価の毎年改定、▽円安などの世界情勢を背景とした原材料価格の高騰――による原価率上昇に伴う粗利益の減少が今後も続くと、業界として医薬品を安定供給する体制を構築することはますます困難になると指摘した。医薬品の安定供給を実現するためには「期間とコストがかかる」と強調し、薬価制度による下支えの必要性に言及した。

さらに業界内についても、「協業、整理統合、企業再編などが全部ミックスされた形が出てくる可能性はある。そうしないとしっかりした安定供給は難しいのではないか」と私見を述べ、業界再編もあり得るとの認識を示した。

また、富山県の廣貫堂が11月11日に不適切製造で県から業務停止命令を受けたことにも触れながら、「我々があまり意識していないメーカー、見えないところでも問題が起こると、（製品の安定供給に係る）この異常事態の改善には、もう少し時間がかかる可能性がある」とも指摘した。

◎22年度上期業績　２ケタ増収・２ケタ減益

東和薬品の22年度上期の連結業績は売上905億円（前年同期比10％増）、営業利益32億2000万円（68.8％減）、親会社帰属純利益26億9200万円（70.9％減）――の２ケタ増収、２ケタ減益だった。

売上は健康食品や医薬品などの企画・開発・受託製造業などを営む三生医薬が22年３月に連結対象になったことや、欧州事業の好調によるもの。東和薬品単体は22年４月の薬価改定で9.3％の薬価引下げを受けたほか、限定出荷中の製品が多数あったことで不調だった。ちなみに、上期の国内売上から三生医薬の売上を除外すると602億円となり、前年同期比5.9％の減収となる。

なお、限定出荷は11月10日現在で308品目ある。同社によると、現在構築している増産体制が稼働することで下期に限定出荷を解除できる品目もでてくるが、全品目の解除にはなお時間がかかるとしている。

営業利益は、国内事業の売上原価率が上昇したことによる売上総利益の減少と、三生医薬買収に伴うのれん償却費などの販管費が増加したことで、減益となった。国内事業の売上原価は437億5900万円（25.6％増）で、国内売上に占める原価率は62.0％（7.6ポイント増）だった。これは原価率が高い三生医薬を連結対象としたことと、薬価改定影響が主な理由となる。

◎通期予想を下方修正　薬価改定影響を販売数量の増加で補えない

同社はこの日、22年度通期計画について、安定供給体制の構築になお時間がかかり、薬価改定影響を販売数量の増加によって補えない見込みだとして、当初予想を下方修正した。修正後の業績見通しは売上1964億円（当初予想から161億円減）、営業利益87億円（同103億円減）、親会社帰属純利益63億円（同57億円）――と設定した。

【22年度上期連結業績（前年同期比）　22年度予想（前年同期比）】
売上高905億円（10.0％増）　1964億円（18.6％増）←修正前2125億円
　国内売上高705億9700万円（10.3％増）　1530億円（20.8％増）←修正前1690億円
　海外売上高199億200万円（8.9％増）　434億円（11.5％増）←修正前435億円
営業利益32億2000万円（68.8％減）　87億円（54.7％減）←修正前190億円
親会社帰属純利益26億9200万円（70.9％減）　63億円（60.4％減）←修正前120億円