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膿疱性乾癬治療薬スペビゴ 身体的精神的ストレス解消など患者のQOLの向上に期待

公開日時 2022/12/16 04:48
日本ベーリンガーインゲルハイムは、9月にIL-36Rモノクローナル抗体「スペビゴ点滴静注450mg」(一般名:スペソリマブ[遺伝子組換え])について、膿疱性乾癬(GPP)における急性症状の改善の効能・効果で国内における製造販売承認を取得し、11月から発売を開始している。これを記念して12月8日、会場(ステーションコンファレンス東京)/オンラインのハイブリッドで膿疱性乾癬(GPP)に関するメディアセミナーを開催した。当日は帝京大学医学部皮膚科学講座・教授の多田弥生氏が登壇し、「膿疱性乾癬の現状と、新たな治療薬スペビゴへの期待」と題して講演した。

◎「人にうつる病気ではない」

膿疱性乾癬(GPP)は、最も一般的な尋常性乾癬をはじめ3つほどの病型の中で、皮疹や関節炎などを伴う他の乾癬とは症状や発症までのプロセスが異なり、発熱や体のだるさとともに、皮膚の赤み、無菌性の膿疱(膿をもった水疱)がたくさんあらわれる病気だ。難治性であることなどから、厚生労働省が定める指定難病に指定されている。皮疹・膿疱が全体に広がる汎発型のGPPは、乾癬全体の1%といわれるほど稀な疾患であり、診断を受け、難病医療費の助成を受けている患者は全国で2,058人となっている(2020年現在)。

具体的な症状について多田氏は、「赤い皮疹や膿疱はいったんよくなっても別のところにあらわれるなど定期的に症状を繰り返してしまうケースもある。ほかにも尋常性乾癬を発症してから膿疱性乾癬に移行することがあり、入院治療を要するほどの重症例もあるなど、患者によって症状はさまざま」と説明。急性汎発性GPPの場合、多くの患者が寒気を感じて高熱が出たり、重症になると足のむくみで歩けなくなることもあり、救急搬送されて来院することもある。

膿疱に関しては、「細菌感染で生じるというものではなく、皮膚の炎症変化によってあらわれるので、他者にうつる病気ではないということを強調しておきたい」と、多田氏は同疾患に対する偏見などに対して釘を刺した。しかし、膿疱や皮疹による身体的ストレスや不安、周囲から理解を得にくいことによる孤独感から、長期にわたって精神的ストレスを抱えるなど、つらい思いを抱えてすごす患者がいまだ少なくないという。

◎免疫システムの異常と外的・内的要因で発症

GPPが発症する原因は体の免疫システムの異常と考えられており、このような炎症が起こりやすい体質に加えて、睡眠不足、薬剤の使用、精神的ストレス、食生活などの外的要因や、糖尿病や肥満、高脂血症などの内的要因が影響することによって発症・悪化することが多い。感染症や妊娠、ストレスなどをきっかけに膿疱がつくられることもある。

乾癬患者の免疫システムの異常には、TNF-α、IL-17、IL-23、IL-36などの炎症性サイトカインが関わっている。多田氏は膿疱性の発症について「特にIL-36との関連性が深い。患者の多くは炎症性サイトカインとそのはたらきを抑える物質のバランスが崩れ、それが原因となって皮膚が炎症を起こし、膿疱が形成されやすくなる」と説明した。その上で、GPPは重症化すると稀に生命に関わることがあることから、早期診断の重要性を強調した。

診断では、炎症の程度や合併症などを確認するための血液検査に加え、確実な診断のために皮膚生検を行う。「膿疱は細菌感染によっても生じ、その場合、抗生物質などにより菌を叩く治療が行われる。一方、膿疱性乾癬は免疫を抑える治療を行う必要がある。免疫を抑制すると細菌感染にかかりやすくなってしまうため、診断を間違えると全く違う結果をもたらしてしまう可能性があり、診断に関して私たち医療者側は慎重にならざるを得ない」と多田氏は診断上の留意点を指摘した。実際には、典型例から外れる症例もあって、診断に多くの時間を要してしまうケースもあるという。

GPPの主な治療には、全身療法、外用療法(ぬり薬)、光線療法がある。全身療法は皮膚や関節、原因となる免疫に作用する内服薬のほか、免疫異常をもたらす物質に直接作用する生物学的製剤、血液の中から炎症に関わる白血球を取り除く顆粒球単球吸着除去療法がある。

汎発型GPP患者のQOLを2003~2007年(105例)と2016~2019年(83例)で比較した横断的調査では、心の健康、社会生活機能、活力などの項目で改善傾向が示されている。「生物学的製剤が使えるようになった10年ほど前から膿疱性乾癬の治療はだいぶ進化してきた。ただし、“体の痛み”など低い評価のままの項目もあり、まだまだ一般の方とのQOLと比べると大きな開きがあるのが現状だ」と多田氏は述べ、患者のQOL向上に向け、このほど承認されたスペビゴへの期待を示した。

◎GPPへの日本初の治療薬・スペビゴ 「5割以上の方が1週間で膿疱がなくなる」

スペビゴは、GPPにおける急性症状の改善を目的とした日本初の治療薬。GPPの発症で重要な役割を果たすIL-36の炎症性シグナルを抑制し、サイトカイン産生を促進する炎症反応を阻害することで治療効果を発揮すると考えられている。点滴薬で1回900gを原則90分かけて投与し、その後も急性症状が続く場合には初回から1週間後にもう一度点滴を実施することができる。

スペビゴの有効性および安全性を評価した国際共同第2相二重盲検比較試験では、中等度から重度のGPP(GPPGA合計スコア3以上、および膿疱の新規形成または増悪など)の患者を対象に、投与1週時におけるGPPGA膿疱サブスコア0(肉眼で膿疱が見えない)の達成率を主要評価項目とし、1週時のGPPGA合計スコアが2(軽度)以上などの場合はスペビゴ・プラセボ両群とも非盲検投与を行い、4週後の汎発性膿疱性乾癬面積重症度指数75%以上減少の達成率などを副次評価項目とした。GPPGA膿疱サブスコア0は消失を意味し、GPPGA合計スコアは紅斑・膿疱・鱗屑/痂皮の各スコアの平均を示したもの。

同試験の結果、GPPGA膿疱サブスコア0の達成率はプラセボ群で5.4%に対し、スペビゴ群は54.3%を占め、重要な副次評価項目として設定された1週時におけるGPPGA合計スコア0/1(消失またはほぼ消失)達成率でも、スペビゴ群は42.9%だった。1週時以降のGPPGA膿疱サブスコア0の達成率は、8日目で61.8%、12週時で84.4%に上った。

「5割以上の方が1週間で膿疱がなくなるということで、効果が早くあらわれ、また追加投与後もスペビゴ・プラセボ両群で一気に8割ほどの達成率になり、12週まで効果が続いており、持続率も高いことが示されたと思う」と評価した。また、安全性についても免疫抑制による感染リスクが特段高くなるという傾向は見られないとしている。

最後に多田氏は、自身が総合監修を務め、乾癬に関する詳しい情報や公的な助成制度、乾癬に関する身近なTopics、患者さんの生活をよりよ いものにするための工夫などを掲載するサイト「乾癬ひろば」(https://kansen-hiroba.jp)のほか、GPP患者向けの情報提供サイト「GPPひろば」(https://www.gpphiroba.jp)を紹介し、乾癬など皮膚疾患患者への社会的偏見(スティグマ)の解消を含め、患者のQOL向上へとつながる社会、環境づくりの必要性を呼びかけた。

【訂正】下線部に誤りがありました。訂正します。(12月19日12時10分)





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