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SABCS 2022 トラスツズマブ デルクステカンの術前補助療法 HR陽性HER2低発現の早期乳がん患者で奏効

公開日時 2022/12/16 04:52
「サンアントニオ乳がんシンポジウム2022」(SABCS)が12月6~10日まで米テキサス州サンアントニオで開催された。主なトピックスは、早期乳がんでは、卵巣機能抑制が有効な患者を同定するゲノム解析の有用性や、高悪性度ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性早期乳がんに対し一次治療としてCDK4/6阻害薬と内分泌療法を併用し、化学療法の遅延または回避の可能性を検討した試験などがクローズアップされた。再発・転移性HR陽性HER2陽性乳がんでは、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)による二次および三次治療の有効性を確認した試験が注目を集めたほか、HER2低発現のHR陽性早期乳がんにおける術前補助療法としてADCを導入した試験データも報告された。本誌は学会のハイライトを報告する。(メディカルライター/ヘルスケアビジネスコンサルタント 森永知美)

◎「TRIO-US B-12 TALENT」試験

7日のGeneral Sessionではホルモン受容体(HR)陽性HER2低発現の早期乳がん患者に対する術前補助療法として、抗体薬物複合体(ADC)のトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)を検討した第2相試験「TRIO-US B-12 TALENT」の結果が報告され、奏効率(ORR)はT-DXd単独群で68%、T-DXd+アナストロゾール併用群は58%となり、T-DXdが臨床活性を示すことが分かった。米Massachusetts General HospitalのAditya Bardia氏が発表した。

HR陽性HER2低発現乳がんに対するT-DXd術前補助療法に関する初めての報告。これらの結果は今後、早期乳がん患者に対するADCの研究において基礎となるだろう、とAditya Bardia氏は強調した。

◎T-DXdに内分泌療法の追加でT-DXdの有効性が向上するかを検討

T-DXdの有効性は転移性のHER2低発現乳がんにおいて確認されているが、根治を見込める局所早期がんにおける有効性は不明である。高リスクのHR陽性局所乳がんにおける治療オプションは、術前の補助化学療法が含まれる。しかし病理学的完全奏効(pCR)に至る患者は限られるうえに、強い毒性を伴うことが分かっている。そこで研究グループは、HR陽性HER2低発現の局所乳がん患者に対するT-DXdの有効性を評価するための臨床試験を構築した。またエストロゲン受容体(ER)とHER2のクロストークを踏まえ、T-DXdに内分泌療法を追加することで、T-DXdの有効性が向上するかどうかも検討した。

2020年9月から2022年10月までに、HR陽性HER2低発現で切除可能な未治療の早期(ステージII~III)乳がん患者58例が登録された。術前にT-DXd(5.4mg/kg、3週間ごと静脈内投与)のみを与える被験者群(A群、29例)とT-DXdにアナストロゾール(男性症例および閉経前症例の場合はGnRHアナログ製剤を併用)を追加する被験者群(B群、29例)に無作為化された。治療期間は、試験開始当初6サイクルであったが2022年2月から8サイクルに変更された。腫瘍組織はベースラインと、1サイクル目の17~21日目までに1回、および手術時に採取し、中央判定で評価した。

◎主要評価項目は乳房およびリンパ節における病理学的完全奏効(pCR) 

主要評価項目は、乳房およびリンパ節におけるpCR、副次評価項目はORR、HER2発現の変化を含む腫瘍バイオマーカー、安全性とした。ベースラインの患者特性は2群間で同等だった。年齢中央値がA群59歳、B群55歳、中央判定によるベースライン時のHER2発現は、0が2群とも6.9%、1+がA群75.9%、B群86.2%、2+がA群13.8%、B群6.9%、ERとPRがともに陽性の割合はA群82.8%、B群89.7%だった。

◎ORRはA群が68%(17/25例)、B群が58%(14/24例) 各群ともCRを2例達成

ORRはA群が68%(17/25例)、B群が58%(14/24例)で、このうち2群とも2例(8%)ずつCRを達成した。内分泌療法の追加による相乗効果は示されなかったが、被験者数が少ないため結論付けるのは難しいと、Bardia氏は警告している。データカットオフ時点(2022年11月25日)でA群の4例とB群の5例はまだT-DXdの治療下にあった。また49%(17/35例)において、HER2発現がT-DXd治療後の判定で変化しており、このうち88%がベースラインから低下していた。

残存腫瘍量(RCB)インデックスによる評価では、A群において1例がRCB-0(pCRに相当)、2例がRCB-I(最小の腫瘍量)に、B群では3例がRCB-Iに分類された。

グレード3以上の有害事象(AE)は悪心、倦怠感、下痢、頭痛、嘔吐、低カリウム血症、好中球減少、脱水症、白血球減少であったが、悪心、下痢、および嘔吐は時間の経過とともに発現率が低くなっていた。5%(3/58例)がAEにより用量を減量し、1例にグレード2の肺炎が発現した。心筋症を呈する症例はいなかった。

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