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医薬品供給不安で診療報酬の上乗せ措置を中医協に諮問 製薬企業の不正発端で国民負担増に支払側が反発

公開日時 2022/12/22 04:53
加藤勝信厚労相は12月21日、中医協(小塩隆士会長)に医薬品の供給不安に伴う診療報酬上の上乗せ措置について諮問した。厚労省は同日の中医協総会に、供給不安に伴う医療機関や薬局の業務増大を踏まえ、一般名処方加算や後発品使用体制加算などの評価拡充を提案した。一方で、ジェネリックメーカーの不正に端を発した問題であるだけに、患者負担の増加に支払側が強く反発。支払側の間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、「一番迷惑を被っているのは患者だ。一番不安のなかにいるのは患者自身だということをご理解いただきたい」と述べ、「全く受け入れられない」と断じた。「供給不安は、患者が診療報酬でお金を払えば解消されるのか」と質す一幕もあった。

加藤厚労相と鈴木財務相は同日午後の大臣折衝で、「医薬品の供給が不安定な中、患者への適切な薬剤処方の実施や薬局の地域における協力促進などの観点から、2023年12月末までの間、一般名処方、後発品の使用体制に係る加算、薬局における地域支援体制にかかわる加算について上乗せ措置を講ずる」ことに合意。これを踏まえて、加藤厚労相が中医協に諮問したことを受け、同日の中医協総会で議論された。

◎出荷調整・出荷停止・販売中止3万6000件 医療機関や薬局の対応が増加

厚労省が中医協に提出した資料によると、出荷調整・出荷停止・販売中止が公表されているのは3万6000件。出荷調整の情報はほぼ毎日更新されており、医療機関や薬局の対応が増加している状況にある。日本薬剤師会の調査結果によると、薬局ごとに200品目超の医薬品が入手困難となっている。今年12月時点で1年前と比べ、約89%の薬局が供給問題による負担感が悪化していると回答。約99%の薬局が追加業務の負担があると回答している。

病院・診療所からは、「薬局における医薬品の在庫状況が週ごとで変わるため、これまでの処方から一般名処方に極力変更するようにしている」などの声があがっていることも示した。そのうえで、後発品についての加算として、一般名処方加算のほか、外来後発医薬品使用体制加算(診療所での院内処方への評価)、後発医薬品使用体制加算(入院)、後発品調剤体制加算(薬局)があると説明。薬局が供給不安のために医療機関や近隣薬局との連携を行っていることなどから、「地域支援体制加算」があるとした。

◎支払側・間宮委員 「いまの供給不安は、患者がお金を払えば解消されるのか」と反発

支払側は、間宮委員が「医師や薬剤師の先生方のご苦労は非常に伝わってくるものがあり、本当に頭の下がる想い」と述べるなど、医療機関、薬局に理解を示した。そのうえで、ジェネリックメーカーを中心とした製薬業界の構造的課題のしわ寄せが患者負担となることに強く反発した。

間宮委員は、国のジェネリック使用促進策のなかで多くの企業が参入するなかで不正が起きたことを問題視した。「不正を未然に防ぐことができなかった行政にもやはり問題はあった」と指摘した。「その影響で、患者が費用負担するのは筋が違う。一番迷惑を被っているのは患者だ。一番不安の中にいるのは患者自身だということをご理解いただきたい」と強調した。現時点においても、「安定供給の正常化に向けて具体的な対策が示されていない」ことも指摘。「診療報酬や調剤報酬を引き上げて患者負担を広く増やすのは患者の理解を得られない。この提案は全く持って受け入れられない」と断じた。そのうえで、「いまの供給不安は、患者が診療報酬でお金を払えば解消されるのか」と質した。

◎厚労省・眞鍋医療課長「薬価や診療報酬だけで対応できるものでない。産業政策も関係する」

これに対し、厚労省保険局の眞鍋馨医療課長は、「重い指摘と受け取った」と強調した。医薬品の供給不安については、「薬価や診療報酬だけで対応できるものではないということは共通認識だと思っている。産業政策ということも当然関係してくるだろうと思っている」と述べた。そのうえで、今回の提案について、「医療機関そして薬局のご努力、それは結果的には患者さんが安心してお薬を飲める、あるいは投与していただけるということにもつながるのではないか、現下の状況のなかで、やむを得ず対応していただいているところの評価につながるものという形でご提案をさせていただいた」と説明した。

間宮委員は、「もちろん患者が負担するだけで解消されるというふうには思っていない」としたうで、具体策を求めた。また、「24年度の通常改定の報酬の引き上げにつながらない」よう釘を刺した。

◎支払側・松本委員「被害者である患者への負担転嫁はあまりに国民・患者不在だ」

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も供給不安の発端が製薬企業の不正であることを指摘した。そのうえで、「理由はどうであれ、医療機関や薬局の業務が増大しているという事実だが、最終ユーザーであり、かつ最大の被害者である国民・患者に負担を転嫁するというのはあまりに国民・患者不在だと言わざるを得ない」と断じた。「厳しい言い方になるが、治療に必要な医薬品の確保などの対応は、医療機関、薬局の本来業務だ。一律に点数を引き上げるのではなく適切に対象となる医療機関を絞り、患者の理解を得るということが条件となって評価すべき」と述べた。また、「患者の安全安心や費用負担にも影響がありますので、フォーミュラリやリフィル処方などを通じて、こういうときだからこそ、限りある医療資源を有効に活用する取り組みを積極的に推進すべき」とも主張した。

支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「こうした状況は医薬品業界の構造的な課題に端を発するものであり、診療報酬上の評価による対応では、この問題の根本的な解決にはつながらないと考えている」と表明。「安定供給により、最も不利益を受けるのが患者国民であるという点でも、患者負担が生じる、診療報酬での対応は理解を得難いのではないか」と指摘した。

◎安藤課長 製薬企業から医療現場に「情報が届いていない」と把握 一元把握のサイト構築へ

製薬業界の構造的課題が指摘されるなかで、厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の安藤公一課長は、「本質的な問題として産業構造の問題も含め、薬価だけではない対応を考えなければいけないということで、有識者検討会を立ち上げ、産業構造をふくめて議論を進めている」とした。「医療現場に、いまの現状供給状況について、(製薬企業から)情報が届かないということを把握している」ことも説明。日本製薬団体連合会(日薬連)などと連携し、供給不安に関する出荷調整や出荷停止などの情報を医療機関や医薬品の卸が一元的に把握できるサイトを構築し、月に1回アップデートする取り組みを23年度の予算案に計上していることも紹介した。

◎診療側・長島委員「後発医薬品の確保にひどく苦労されている状況にある」

一方、診療側は、長島公之委員(日本医師会常任理事)が「加的な負担は通常診療に用いる一般的な処方内容の多くに供給不足品目が含まれていることから、入院、外来、あるいは院内、院外処方を問わず発生している状況であり、院内処方においてはそれらに加えて、後発医薬品の確保にひどく苦労されている状況にある。一般名処方加算や後発医薬品使用体制加算などについては、すでにこれまで以上の取り組みがなされていることを踏まえて、このタイミングをとらえて評価を見直していただくよう強く要望したい」と主張。

◎診療側・有澤委員「現場は業務負担増や精神的負担など身を削りながら努力を続けている」

有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、「医薬品の購入という当たり前の行為そのものに、現在は相当の手間がかかっているということをご理解いただきたい。現場はこのような業務負担の増加や精神的な負担など身を削りながらも何とか必要な患者さんが必要な薬物療法を実施継続できるよう最大限の努力を続けている。一定期間に限りということで医薬品の安定供給に資する取り組みを評価することは必要であると考える」などと述べた。

◎診療側・池端委員「医療崩壊を起こす寸前まで来ている」

池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、「本当に医療崩壊を起こす寸前まで来ていると思う。“もうちょっと頑張れ”という応援だと私は思ってこの報酬診療報酬の対応を受け止めたいと思うし、それでもう少し頑張ってみたいと思う」と話した。

この日は診療・支払各側の意見は平行線。同日は、同様に大臣折衝で合意されたオンライン資格確認の導入の原則義務化の経過措置などについて議論したが、診療・支払側の意見も合意点はみられなかった。いずれも年内に結論を得て答申する見通し。

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