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有識者検討会 開発ラグは解消も依然残る“開発着手ラグ” 治験環境やランゲージ・バリアが背景に

公開日時 2023/01/16 06:25
厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」は1月13日開かれ、ベンチャー支援などについて議論を行った。ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスを防ぐために、日本に足場のない海外新興バイオ製薬企業の革新的新薬の迅速な上市が求められている。参考人の海老原恵子氏(アミカス・セラピューティクス薬事本部本部長)は、「ドラッグ・ラグはだいぶ解消したが、“開発着手ラグ”というのはいまだに残っていると思う」と指摘。「日本の(治験への)症例の組入れが遅いといったこともあり、日本を入れたくないといったようなことを言われるというのは弊社のみならず時々聞くこともある」と述べ、患者登録や日本語での申請など、治験の環境整備についての課題を指摘した。

新薬の審査について、芦田耕一構成員(INCJ執行役員ベンチャー・グロース投資グループ共同グループ長)は「だいぶ前にドラッグ・ラグが課題になったときに、ドラッグ・ラグの中身でも審査ラグみたいなものが議論になった。その後、PMDAの体制も強化され、かなりその部分は改善されたという認識でいる」との見解を表明。菅原琢磨構成員(法政大経済学部教授)も、「私自身の認識では、総じて全然遜色ない、むしろよくやっている部分も日本の承認申請のプロセスについてあると思うが、英語で作った申請資料は受け付けられないということがあって、かれこれ20年前からこういう話はある。承認申請そのもののプロセスが特に煩雑で欧米に比べて何か難しいわけではないが、やはりそこは難しいという話なのか、手続き上のランゲージエリアというか、そこを解決してくれば、もっとスムーズにいくという話なのか」と質問した。

◎アミカス・海老原参考人「日本の規制そのものに対しての理解というのが低い」

海老原参考人は、「まず、日本の規制そのものに対しての理解というのが低いというのが正直ある。日本語で書いてあって英語で解説しているものというのが基本的にはないので、各ベンチャーのみならず、外資系の子会社では、まずそこを英語にしてわかってもらうということそこがとても大変だと思う」と説明。「できれば規制、薬機法なり、開発の簡略化したチャートといったようなものは英語にしていただいたうえで、当局が直接海外の本社と説明をするような場をもっと持っていただくことで、ランゲージ・バリアというものが下がるのかなと思っている」と述べた。「日本の規制というか開発に着手することに対して、どちらかというと、日本は面倒くさい国というか、大変な手続きがあるのではないかという考えを持たれることも結構ある。ドラッグ・ラグはだいぶ解消したが、開発着手ラグというのはいまだに残っていると思う」との見解を示した。

◎患者登録システム推進で患者数公表を 治験の“Go、No Go”の判断早く

海老原参考人は、日本で患者数が公表されていないことによる課題を指摘。「患者数は国内での医薬品開発の成功確率、治験への組み入れの難易度や、また効果の確認のために患者数の推定をするといったこと、また将来においては売り上げの予測といったようなことに関しても大きく関わる要素だ」と説明。一方で、患者数が公表されていないことから調査を行う必要性があることに加え、「日本における開発の“Go、No Go”の実施に時間がかかり、より慎重にならざるを得ないという傾向がある。ベンチャー企業では医療従事者とのコネクションもあまり構築されていないことも多いため、日本で開発実績があり知名度がある会社との競合している場合に患者さんの組み入れといったところでどうしてもスピード感が得られないなど多様な課題もある」と述べた。

患者数が把握できないと、オーファン指定の判断も難しいとしたうえで、「おおよその患者数の把握やオーファン指定の可能性など、これらの情報がある程度公表されていることで開発着手のための判断が役立つものではないかと思っている。患者登録システムを推進し、患者数を公表するということができないか」と提案した。

なお、厚労省はこの日の有識者検討会で、疾患レジストリである「CIN(クリニカル・イノベーション・ネットワーク)」構想について説明。24研究班でレジストリを活用した臨床研究・治験が実施されているとした。

このほか、海老原参考人はオーファン開発支援制度を受けるためには、日本人の安全性や有効性データが要件となっていることから、「開発早期からオーファン指定を受けるということが難しく、その分の助成金支援相談制度の優遇も受けられない。結果として、他国での開発を優先し、国内での開発着手が遅くなるケースが増えると言ったこともある」と課題を指摘した。オーファン、ウルトラオーファンで必ずしも日本人症例の組み入れを必要としない条件付き早期承認制度の仕組みの検討などを求めた。

◎海外新興企業の革新的新薬導入へ 開発・上市で「内資系企業の体質転換にも寄与」

このほか、海外新興バイオ製薬企業の革新的新薬の迅速な上市には、日本の製薬企業が開発・上市することも期待される。芦田構成員は、「日本の製薬企業が新薬候補を導入して国内で開発、上市することが、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの解消に加え、日本企業の体質転換に寄与するのではないか」との考えを表明。さらに「ドラッグ・ラグを防ぐには海外承認後の導入ではなく、早い開発段階での導入が望ましいと考えている。しかしながら、それには導入費用や開発費用、そして開発リスクが伴うので、難度は高いと思われるが、日本の製薬企業の積極的な取り組みを期待したい」とエールを送った。



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