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22年国内医療用薬市場 過去最高の10兆9394億円に 新型コロナ治療薬ベクルリー、ラゲブリオが押し上げ

公開日時 2023/02/27 04:52
IQVIAは2月24日、2022年の国内医療用医薬品市場データ(薬価ベース)を発表し、国内市場は過去最高額の10兆9394億円になったことがわかった。市場は前年から3.2%成長した。新型コロナ治療薬のベクルリー(21年10月から一般流通)は1098億円、ラゲブリオ(22年9月16日から一般流通)は発売約4カ月で539億円を売り上げ、市場規模を押し上げた。さらに製品売上1位のがん免疫療法薬・オプジーボは売上1524億円、前年比26.2%増を記録したことも市場全体の拡大につながった。

文末の「関連ファイル」に、22年の市場規模や売上上位10製品の売上データに加え、売上上位製品の四半期ごとの売上推移をまとめた資料を掲載しました(ミクスOnlineの有料会員のみ閲覧できます。無料トライアルはこちら)。

IQVIAの市場データは、医薬品卸と医療機関との間で発生する売上データがソースとなっている。このため、同データには政府一括購入対象の新型コロナのワクチンや治療薬は含まれない。公定薬価がつき、通常の流通が開始された時点から同データに反映される。

◎市場規模 前年を約3405億円上回る

22年4月に薬価通常改定が行われ、薬剤費ベースで6.69%引き下げられた。それでも国内市場は前年を率で3.2%、額で約3405億円上回った。

市場別にみると、100床以上の病院市場は5兆790億円(1億円未満切捨て、前年比3.4%増)、100床未満の開業医市場は2兆691億円(4.2%増)、主に調剤薬局で構成する「薬局その他」市場は3兆7912億円(2.4%増)――。病院市場と薬局その他市場は前年に続くプラス成長。開業医市場はコロナ禍による受診控えの影響が長引き、20年、21年ともマイナス成長だったが、22年にプラス成長に転じた。

◎ラゲブリオ 22年10~12月製品売上ランクで一気に首位に

22年の市場成長の主な要因は、新型コロナ治療薬の急伸や、新型コロナの診断用検査試薬の拡大、オプジーボの成長となる。

新型コロナ治療薬では、軽症の重症化リスク因子のある患者や既に肺炎を発症している患者の治療選択肢であるベクルリーが、“第7波”の22年7~9月に395億円、“第8波”の期間にあたる10~12月は400億円を売り上げるなどした。結果、22年売上は1098億円となり、前年から10倍以上伸ばした。22年の製品売上ランキングで5位となった。

22年9月16日から一般流通を開始したラゲブリオは、9月は発売約2週間で売上61億円。10~12月は478億円を売り上げ、この期間の製品売上ランキングで一気に首位に立った。同剤の投与対象は重症化リスク因子を有する患者が中心となるが、重症化リスク因子がない患者でも医師の判断で投与できる。ここに1日の新規感染者数が20万人を超えた日もあった“第8波”が重なり、売上の急伸につながったとみられる。

22年は新型コロナの検査用試薬を含む「診断用検査試薬」市場も大きく伸び、市場規模は4643億円、前年比73.7%の大幅増となった。額にすると約1970億円増となる。22年の同市場における売上上位5製品は全て新型コロナ関連製品で、いずれも大きく成長した。

◎製品売上トップはオプジーボ 売上1524億円、前年比316億円増

22年の製品売上上位10製品をみると、1位はオプジーボ(1524億円、26.2%増)、2位はがん免疫療法薬・キイトルーダ(1283億円、6.0%増)――となった。両剤とも、新薬創出等加算品であり22年4月改定では薬価は据え置かれたが、21年8月に市場拡大再算定類似品として11.5%の薬価引下げを受けている。それでも22年は両剤とも増収を達成し、オプジーボは2ケタ成長した。

オプジーボは前年2位だったが、非小細胞肺がん1次治療や胃がん1次治療を成長ドライバーに316億円伸ばし、首位に立った。19年からトップを維持していたキイトルーダは22年も伸長したが、オプジーボの著しい成長により、首位逆転を許した。

なお、オプジーボの製造販売元の小野薬品は、22年度に特例拡大再算定(市場拡大再算定の特例)が適用されることは「想定していない」としており、売上2000億円超となったどこかのタイミングで特例拡大再算定が適用される可能性があるとしている(記事はこちら

◎6製品が1000億円以上に

売上3位は抗凝固薬・リクシアナ(1164億円、15.8%増、前年6位)、4位は抗潰瘍薬・タケキャブ(1118億円、0.7%増、3位)、5位はベクルリー(1098億円、999.9%以上増、10位圏外)、6位は抗がん剤・タグリッソ(1094億円、7.1%増、4位)、7位は降圧剤・アジルバ(885億円、2.9%増、9位)、8位は加齢黄斑変性症治療薬・アイリーア(874億円、2.6%増、10位)、9位は水利尿薬・サムスカ(858億円、2.1%減、8位)、10位は抗がん剤・アバスチン(856億円、15.0%減、5位)――で、6製品が売上1000億円以上だった。

リクシアナ、タグリッソ、アジルバ、アイリーア、サムスカは新薬創出等加算品として22年4月改定で薬価は維持されたが、サムスカは6月に後発品が参入したため減収。タケキャブは特例拡大再算定により薬価が15.8%引き下げられたが、数量増により、前年並みの売上をキープした。

◎薬効内トップ製品交代 糖尿病治療剤はフォシーガ 免疫抑制剤はステラーラに

売上上位10薬効をみると、トップ3は前年と変わらず、1位は「抗腫瘍剤」の1兆7520億円(前年比6.0%増)、2位は「糖尿病治療剤」の6689億円(5.3%増)、3位は「免疫抑制剤」の5559億円(6.3%増)――だった。

抗腫瘍剤は12年から年間トップを維持。薬効内トップ製品は前述の通りキイトルーダからオプジーボに代わった。

糖尿病治療剤でも薬効内トップ製品が交代し、DPP-4阻害薬・ジャヌビアに代わって今回、SGLT2阻害薬・フォシーガとなった。フォシーガはCKD適応の追加などで処方を伸ばし、前年比63.0%増とした(IQVIAは売上トップ10製品と新型コロナ治療薬以外の売上は開示していない)。

免疫抑制剤でも薬効内トップ製品が入れ替わり、ヒュミラに代わって乾癬・炎症性腸疾患治療薬・ステラーラとなった。ステラーラは32.7%増とした。また、22年8月1日付で市場拡大再算定により薬価が11.7%引き下げられたデュピクセントも33.0%増とした。

◎全身性抗ウイルス剤がトップ10入り ベクルリーやラゲブリオの急伸で

薬効別の4位は新型コロナ関連製品を含む「診断用検査試薬」の4643億円(73.7%増、前年9位)、5位は「抗血栓症薬」の4299億円(0.1%増、4位)、6位は「眼科用剤」の3439億円(5.4%減、5位)、7位はベクルリーやラゲブリオが急伸した「全身性抗ウイルス剤」の3375億円(85.7%増、10位圏外)、8位は「制酸剤、鼓腸及び潰瘍治療剤」の3316億円(5.7%減、6位)、9位は「その他の中枢神経系用剤」の2767億円(7.0%減、7位)、10位は「レニン-アンジオテンシン系作用薬」の2726億円(4.4%減、8位)――となった。

このうち全身性抗ウイルス剤のトップ10入りは18年以来となる。市場縮小幅が最も大きかった「その他の中枢神経系用剤」では、薬効内トップのTTR型アミロイドーシス治療薬・ビンダケルが41.6%の減収となったことが響いた。ビンダケルは22年4月改定で用法用量再算定が適用されて薬価が75%引き下げられており、この影響が出たとみられる。

◎企業売上ランキング(販促会社ベース) 中外製薬が2年連続の首位

企業売上ランキングを見てみる。「販促会社ベース」(販促会社が2社以上の場合、製造承認を持っているなどオリジネーターにより近い製薬企業に売上を計上して集計したもの)では、中外製薬が2年連続で1位となった。売上は5264億円、前年比1.9%増だった。

バイオシミラーが参入している最主力品のアバスチンが15%の減収となったが、血友病治療薬・ヘムライブラ、抗がん剤のカドサイラやポライビー、脊髄性筋萎縮症治療薬・エブリスディ、視神経脊髄炎スペクトラム障害治療薬・エンスプリング、眼科領域に初参入となったバビースモといった新薬群が順調に市場浸透したことで1.9%の増収とし、首位をキープした。なお、政府が購入している新型コロナ治療薬・ロナプリーブは、IQVIAがまとめた同社売上に含まれていない。

9位までは前年と順位は変わらず、2位は武田薬品(売上5031億円、前年比1.5%減)、3位はアストラゼネカ(4583億円、9.2%増)、4位は第一三共(4201億円、5.8%増)、5位はヤンセンファーマ(3975億円、9.7%増)、6位はMSD(3735億円、14.7%増)、7位は大塚製薬(3306億円、3.1%増)、8位はノバルティス ファーマ(3168億円、1.1%減)、9位はバイエル薬品(2955億円、0.7%減)――となった。10位は前年12位のブリストル マイヤーズ スクイブ(2740億円、0.1%減)だった。

◎ギリアドが20位にランクイン 前年比173%増

上位20社のうち最も成長率が高かったのは20位にランクインしたギリアド・サイエンシズで、売上1853億円、前年比173.2%増だった。ベクルリーの大幅な成長が理由となる。2ケタ成長した企業は、ラゲブリオを手掛ける6位のMSDと、オプジーボが好調な12位の小野薬品(2477億円、14.4%増)の2社となる。

◎日本イーライリリーとファイザーが2ケタ減収

一方で、2ケタ減収も2社あった。最も減収幅が大きかったのは日本イーライリリーで、売上2388億円、前年比16.9%減だった。売上ランクは13位。21年夏~秋にかけて登場したサインバルタ後発品やアリムタ後発品による市場浸食に加え、22年4月改定で両剤とも新薬創出等加算の累積下げがあり、サインバルタは薬価が24.8%引下げ、アリムタは34.5%引下げられた影響も大きかったとみられる。トルリシティも市場拡大再算定で薬価が11.1%引き下げられており、これも響いたと考えられる。

2ケタ減収のもう1社はファイザーで、売上2522億円、前年比12.6%減だった。売上ランクは11位。21年9月にリリカやバイアグラなど14製品の製造販売承認及び販売権をヴィアトリス製薬に承継・移管したほか、22年4月改定でビンダケルが用法用量再算定により薬価が75%引き下げられた影響も大きかったとみられる。

◎国内医療用薬の市場規模 これまでの最高額は19年、消費増税改定を実施

なお、IQVIAは05年から国内市場規模を発表しており、これまでの最高額は19年の10兆6256億円、僅差の2位が16年の10兆6246億円だった。22年(10兆9394億円)はこれまでの最高額を3000億円以上上回り、11兆円の大台まで600億円まで迫った。

ちなみに19年は、10月の消費増税改定により、新薬創出等加算品などで最大1.85%の薬価引上げが行われた年。16年は、4月に市場全体で6%強の薬価改定が行われたが、経口C型肝炎治療薬・ハーボニーが前年から2.5倍となる2960億円、オプジーボは17倍となる1079億円を売り上げるなどした年だった。
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