【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

製薬協・岡田会長 日本をイノベーション生む国に「社会実装は我々がやらなくて誰がやる」政府支援に期待

公開日時 2023/03/27 04:52
日本製薬工業協会(製薬協)の岡田安史会長は本誌取材に応じ、「日本発のシーズを社会実装し、日本を再び科学技術立国にすることは、我々医薬品産業がやらずに誰がやるんだと思っている」とイノベーション創出に向けて強い決意を示した。欧米でエコシステムが活性化し、革新的新薬のシーズを生み出すなかで、「日本が空洞化する」という強烈な危機感を抱く。岡田会長は、“ホームマーケット”である日本発のイノベーション創出に強い意欲を示し、このために産官学が連携したエコシステム構築が必要との考えを表明。国からエコシステム構築の支援やデータ基盤の整備、治験環境の整備などの支援が必要との考えを示した。

製薬協岡田会長のインタビュー全文は、Monthlyミクス4月号(4月1日発行)に一問一答形式で掲載します。

“創薬力強化”をめぐっては、経産省は2022年度補正予算で、「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」として、3000億円を確保。岸田文雄首相が2月15日の衆院予算委員会で、「我が国の創薬力の強化に向けた取り組みを強力に進めていきたい」と意欲を示すなど、機運が高まっている。

◎日本市場だけのビジネスは「急速に成り立たなくなってきている」

日本市場について岡田会長は、世界第2位で、構成比も15%程度あったとして、「「内資系企業が内需だけでビジネスができるような市場だった。特許期間中の新薬であっても、日本だけで上市している製品も少なからずあった」と説明。一方で、少子高齢化が進み、医療保険財政が厳しさを増すなかで、「薬価上の評価も含めて日本市場だけのビジネスは急速に成り立たなくなってきている」との認識を示した。

内資系企業のなかには積極的に海外展開を進める企業もある。ただ、エコシステムの中心が米国や中国に移り、革新的新薬のシーズも海外で創出されており、内資系企業であっても海外に拠点を求めていると説明。「内資系企業の場合、米国で最初に新薬を上市するとともに、できるだけ早いタイミングで日本に上市できるよう努めてきた。医薬品産業は他産業と比べ担税力があり、日本経済に税収面でも貢献していると主張してきた。しかし、そのようなモデルが長続きするのは難しいのではないかと懸念を抱いている」と懸念を示した。

◎あらゆる手を尽くして、日本で「ゼロから1を生む」

岡田会長は、「ホームマーケットとして、イノベーションを生み出せる国にしていく必要があると考えている。そうしなければ、日本の医薬品市場は空洞化してしまうとの危機意識を持っている」と強調。「日本のバイオコミュニティからシーズが生み出され、それをしっかり社会実装していくことに、製薬協としてコミットする必要があると考えている。ビジネスとしての収益をどこで得るかはまた別次元の話だと思っている」との考えを表明した。「あらゆる手を尽くして、日本で“ゼロから1”が生まれるようにしていかなければならない。日本のこの地から、イノベーションを生まれることが最もプライオリティが高いと考えている」と強調した。製薬協が2月に公表した「政策提言2023」で企業主導コンソーシアムを新たに設立することを提言したことに触れ、産業界としても積極的に取り組む姿勢を強調した。

◎「医薬品産業政策を含めて抜本的に見直すラストチャンス」

そのうえで、厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」で薬価制度と産業構造について議論が進められていることに触れ、「医薬品産業政策を含めて抜本的に見直すラストチャンスではないか」との見方を表明。「今後注目すべきは2024年度のトリプル改定に向けて、どんな見直しがなされるのか。今夏に取りまとめられる骨太方針の課題として、何が書かれるか。これだけの状況に直面して、国はどんな基本方針とするのか、注視したい」との見方を表明した。「少子化や防衛費の問題もあり、財政的に厳しいことは衆目の一致するところ。しかし、社会保障は国家・国民にとってのインフラでもある。課題を直視し、医薬品産業の要望を踏まえた検討を進めていただきたい」と強調した。

◎薬価以外のインセンティブ必要「臨床試験のインセンティブも重要」

国に求める具体的な支援としては、「シーズが開花する際に、薬価としてはイノベーションフレンドリーな評価を求めたい。日本国内で研究開発するのであれば税制上のメリットも必要だ」と述べたうえで、「企業にとっては、相対的に日本市場の重要性が落ちている状況において、開発のモチベーションを維持するためにも、臨床試験のインセンティブが重要だ」との考えを示した。英国がゲノム編集にオープンな姿勢を示していることを引き合いに、「承認審査について特定の領域について審査当局がオープンな姿勢を発信することが考えられる」との見解も披露した。
 
「臨床試験のスピードアップやコストダウンなど、治験環境の整備も重要だと考えている。特定疾患や希少疾患患者を対象とした臨床試験のしやすさというのも必要だ」とも表明。実現に向け、「ビッグデータの利活用に関するデータ基盤が、いまのままでは脆弱だ。これらは海外企業が持つ海外発のシーズを日本で開発するための環境整備として重要だ」との認識を示した。「薬価はもちろんだが、それ以外のインセンティブも働かせないといけない。“早く”、“低コスト”、“特定技術に対する柔軟な対応”になれば、相対的に市場ウエイトの小さい日本であってもグローバル展開しやすくなる。そういうことを産業側も求めていきたい」と述べた。

◎「世界に冠たる革新的新薬創出が産業の答え」 “護送船団”批判受けた産業側の課題「自覚する必要ある」

日本の医薬品産業の抱える課題として、「産業自体がトランスフォーム(変革)できていないことは大きな問題だ。新しいモダリティやDXについていけていないという課題もある。公的保険の枠の中だけでなく、保険外を含めてビジネスの可能性を求めていかないといけないと考えている」との認識を表明した。

「これまで護送船団という批判を少なからず浴びてきた。限られたパイ(財源)の中で生き延びようとする考え方もあるが、産業側にも課題があると自覚する必要がある」と述べた。医薬品産業としての“答え”の出し方として、「まずは革新的な新薬を出すことだ。世界に勝てるようなイノベーションで、アンメットメディカルニーズを満たしてヘルスケアに貢献し、稼いでいくことでしか示せないのではないかと思う。世界に冠たる革新的新薬を出していくことが医薬品産業の出せる答えだと考えている」と熱く語った。(望月英梨)


プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
関連ファイル

関連するファイルはありません。

【MixOnline】キーワードバナー
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(8)

1 2 3 4 5
悪い   良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事

一緒に読みたい関連トピックス

記事はありません。
ボタン追加
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー