MR認定センターは7月19日、2023年版「MR白書」を公表し、MR総数が5万人を下回ったことが明らかになった。MR総数は23年3月末時点で4万9682人となり、前年より2166人減少。MR白書の調査を開始した2000年度(01年3月末:4万9212人)と同水準の規模になった。Web会議システムまたは電話のみで活動する「オンラインMR」は412人で前年比14人増。また、新卒のMRを採用した企業のうち、在学中のMR認定試験合格者が4人(4社)含まれていたことも分かった。採用前の認定試験合格者の報告は今回が初めて。
◎MR総数は4万9682人 ピークの13年に比べて約1万6000人減
MR白書は、MR認定センターに登録している200社(前年比2社減)にアンケート調査を依頼し、23年3月末時点のMR総数などについて回答を求めた。回収率は100%。回答社数の属性は内資系企業137社(4社減)、外資系企業48社(2社増)、CSO14社(変化なし)、卸売販売企業1社(変化なし)―。
MR総数は13年度の6万5752人をピークに毎年漸減し、4万9682人となった。ピーク時に比べて約1万6000人減少している。同センターは、「一時期の生活習慣病に対する多様な同種同効薬による競争の激化とSOV獲得を背景として膨れ上がったMR数が適正レベルにまで落ち着いたと考えられる」と分析。さらに、Web講演会や動画コンテンツの充実など医療関係者に対する情報提供チャネルが多様化したことも、MRの減少理由のひとつに類推できるとした。
コロナ禍で医師とのリアル面談の機会が減り、逆に医療関係者の情報入手手段が多様化したことについて同センターの小日向強・企画部長は、「医療関係者の側からみれば情報入手手段が増えたということであり、大変喜ばしいこと」との認識を示しつつ、「様々な情報チャネルがあることを考えると、MR数が減少し続けることは否めない」との見方も示した。
◎MRが担う役割は「何も変わらない」 MR不要論を一蹴
小日向企画部長はまた、MRの周辺環境が変化しても担う役割は「何も変わらない」と強調。いわゆるMR不要論も一蹴した。その上で、MRは今後も、▽医薬品が患者にとって適正に使用されるための情報活動を通じ、医薬品を普及すること、▽市販後の有効性・安全性及び品質に関する情報の収集と伝達(フィードバック)をすること、▽創薬・適応拡大などに役立つ幅広い情報入手にも努め、新薬の誕生ならびに適応拡大に寄与すること――に取り組むと説明。適正に必要な患者に医薬品が処方されることや、医療の発展に貢献していくことに期待を寄せた。
◎MR1000人以上雇用企業が2社減
MR雇用規模別の企業数は、「1000人以上」は2社減の12社、「500~999人」も2社減の26社となる一方、「300~499人」は2社増の12社となり、全体的にスケールダウンしていることがうかがえた。MR総数4万9682人のうち、「通常、医療機関を訪問して活動するMR」は4万9270人、「オンラインMR」は412人――。認定証取得者は4万8962人、未取得者は720人――。薬剤師資格を有するMR数は4311人で、全MRに占める割合は8.7%となり、調査開始以来、最も低い比率となった。
◎在学中のMR認定試験合格者4人が入社
23年4月入社の新卒MRは、全体の35.5%となる71社が採用した。MR雇用規模別の新卒採用状況は、「1000人以上」は12社中9社、「500~999人」は26社中19社、「300~499人」は12社中8社、「100~299人」は33社中20社、「99人以下」は117社中15社――が新卒MRを採用。内外資別では、内資系は137中63社で採用する一方、外資系は48社中8社での採用にとどまった。
新卒MRを採用した企業のうち4社で、各1人ずつMR認定試験合格者が含まれていた。現在のMR認定制度では、学生であってもMR導入教育実施機関が提供するプログラムを受講・修了すれば受験資格が得られ、年末に実施されるMR認定試験を受験できる。今回、学生受験者の合格者が初めて製薬企業のMR職として入社したことになる。
なお、同センターはMR認定試験制度の抜本改革に着手しており、26年度実施分から受験資格の制限を完全撤廃して、学生の受験機会を拡大させる方針
(記事はこちら)。今回、新卒採用者の中にMR認定試験合格者が含まれていたことが、今後の受験者拡大などの呼び水になると期待している。
◎コントラクトMRは4409人、過去最多 早期退職優遇制度の退社MRがCSO転職も
CSOに所属するコントラクトMRは4409人で前年より461人増えた。2000年以降で最も多い人数となった。早期退職者優遇制度を利用して製薬企業を退職したMRが、MR認定資格を活かしてCSOに転職するケースも見られる。
コントラクトMRを契約している企業は77社で前年より6社増えた。MR雇用規模別のコントラクトMRの契約状況をみると、「1000人以上」の企業では9社982人(前年10社1184人)、「500~999人」の企業では20社1617人(前年20社1463人)、「300~499人」の企業では6社286人(前年3社78人)、「100~299人」の企業では16社424人(前年14社394人)、「99人以下」の企業では26社269人(前年24社197人)――だった。1000人以上のセグメントでは減少したが、これ以外のセグメントではいずれもコントラクトMRの契約人数が増加していた。
小日向氏は、「製薬企業がMRを直接雇用するよりも、必要な時に、必要な人材を求めるビジネスモデルに変わってきていることも考えられる」との見方を示した。
◎MR認定証携行・バッジ着用 8割以上企業は全体の43.5%
このほか、自社MRの80%以上がMR認定証携行・バッジ着用していると回答した企業が全体の43.5%となった。前年の41.1%から2.4ポイント伸びた。