【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

中医協 費用対効果評価の価格調整範囲で製薬業界「拡大すべきではない」 引上げ条件緩和も訴え

公開日時 2023/08/03 04:52
日本製薬工業協会(製薬協)など製薬団体は8月2日の中医協費用対効果評価専門部会で、「費用対効果評価は薬価制度を補完する位置づけのあるものである点から、価格調整の対象範囲を拡大するべきではない」と主張した。また、費用対効果に優れる結果が示された場合でも条件が厳しく、価格調整に反映されないとして、「現行の価格引上げに必要な条件の撤廃・緩和を検討すべき」とも訴えた。

現行の費用対効果評価は、全体の費用を比較して効果の評価を行っているが、価格調整は有用性加算などの範囲内で行われており、評価と価格調整の範囲が異なっている。このため、費用対効果評価専門組織は7月12日の中医協総会に提出した意見書に、「諸外国の事例も参考にしながら、価格調整の対象範囲のあり方について検討する必要があるのではないか」と指摘。診療・支払各側からも、対象範囲拡大を求める声があがっていた。

◎製薬協・上野会長 対象範囲拡大は「薬価制度としても不整合では」

製薬協の上野裕明会長(田辺三菱製薬)は、「対象範囲を拡大するべきではない」と反対のスタンスを示した。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「外国平均価格調整が価格全部を対象にしているのに、費用対効果は限定していることの違いを業界はどのように考えているのか」と質した。

上野会長は、「費用対評価評価効果は、有用性加算の内容が妥当であるかを判断、評価する制度だと考えている。それをさらに薬価本体に広げるということ自身については、特に薬価本体においては対象の薬価制度で決められた薬価のところを改めていじることになり、制度としても不整合が生じるのではないか」との考えを表明した。「価格調整範囲が拡大することは、薬価の引き下げの幅が大きくなり、企業の収益にさらに影響が大きくなると認識している。加えて、価格調整範囲が加算部分だけでなくて本体部分まで及ぶとなると、薬価制度において類似薬と同等の価値を評価するという基本原則に対する整合性に不備が生じる点についても問題があると我々は思っている」とも述べた。

費用対効果評価の分析結果を保険償還の可否判断に用いる点については、「諸外国において保険償還の可否判断に用いられていることは承知しているが、諸外国においては我が国のようのような精緻な薬価基準制度が存在しないため、企業が設定した価格の妥当性や保険償還の可否を判断する手段の一つとして、費用対効果評価というものを用いられると我々は認識している」と説明。「薬価基準制度に基づく薬価を決定している我が国においては、費用対効果評価は新薬の価値評価のあくまでも俯瞰的な手法として、有用性加算について限定的に用いられるべきと我々は考えている」と述べた。

◎費用対効果 日本人データの統計学的有意差など条件撤廃・緩和訴え

一方で、費用対効果評価が終了した品目では、費用対効果に優れる結果(ドミナント、費用削減又はICER 200万円/QALY未満)が示された場合でも、厳しい条件のために、価格調整に反映されない仕組みとなっていると指摘した。引上げの条件とされる「日本人を含むアジア人を対象とした集団において統計学的に示されているこ」と、「薬理作用等が比較対照技術と著しく異なること」のハードルの高さを説明し、「条件の撤廃・緩和を検討すべき」と訴えた。

米国研究製薬工業協会(PhRMA)在日執行委員会の原田明久委員は現在、薬事承認において、国際共同治験での日本人データの可否が議論となっていることにも触れ、「現在議論されている方向性とは逆行したルールではないか」と指摘。「日本人を含むアジア集団だけで、統計解析が可能な症例数を満たさない、こういうこともあるということを、ぜひご配慮いただきたい」と訴えた。

◎QALYで捉えられない要素が評価された品目の評価に慎重論

製薬業界は、「利便性などQALYで捉えられない要素が評価された品目については、総合的評価において配慮されるべき」とも訴えた。診療側の長島委員は、「長い議論の末、定められた費用対効果はQALYに基づいて評価するという原則を変えるものであり、また、薬価上の評価の違いが曖昧になってしまうのではないかという印象を受けるので、慎重な検討が必要ではないか」と指摘した。製薬協の上野会長は、「まさにその通りだ」と応じたうえで、有用性系加算とEQ-5D-5Lでは指標が異なることを説明し、理解を求めた。

◎製薬業界からは「希少疾患除外」訴えも支払側「治療法が確立していないからこそ費用対効果が重要」

費用対効果評価の対象品目について製薬業界は、「希少疾病用医薬品については指定難病等と同様に評価の対象から除外すべき」と訴えた。これに対し、支払側の松本委員は、「保険者、あるいは患者の視点に立って考えると、治療法が確立していないからこそ、治療法を選択する際に費用対効果が重要であるということについてはぜひご理解をいただきたい。むしろ指定難病や血友病、HIVであっても、費用対効果の評価が可能なものは評価対象とすることがあっても良いのではないか」と述べた。
プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(2)

1 2 3 4 5
悪い 良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事
【MixOnline】関連(推奨)記事
【MixOnline】関連(推奨)記事
ボタン追加
【MixOnline】記事ログ
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー