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中医協薬価専門部会 調整幅議論は「産業構造のあり方にかかわる話」 アローアンス頼りの卸への指摘も

公開日時 2023/08/31 05:30
中医協薬価専門部会は8月30日、調整幅をめぐる議論を行った。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)が「医薬品流通に関しては、今後の医薬品産業構造のあり方にもかかわる話」と述べるなど、診療・支払各側から産業構造をめぐる課題を踏まえたうえで議論する必要性を指摘する声があがった。一次売差マイナスが課題となるなかで、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「割戻しとアローアンスによって、一次売差マイナスを補填する構造」に対し、「非常に大きな違和感を覚えた」と問題意識を露わにした。アローアンスが卸の利益に直結すると指摘し、こうした課題を踏まえたうえでの議論を求めた。この日で薬価をめぐる議論は一巡し、今秋から議論が本格化することになる。

◎調整幅 加重平均値を超える価格での取引の改定影響を緩和

調整幅をめぐっては、2022年度薬価制度改革の骨子・23年度薬価改定の骨子において「引き続き検討」することとされている。調整幅は、日本の薬価制度として、市場実勢価格加重平均値調整幅方式が導入されて以降、「薬剤流通の安定のため」に設定されており、2%で推移し公的な価格である薬ている。市場実勢価格加重平均値調整幅方式は、医療機関の平均的な購入価格の補償という思想に基づいている。

薬価が改定されると、加重平均値を超える価格(改定後薬価より高い価格)で取り引きされていたものは特に影響を受ける。調整幅がないと、影響を受ける割合が大きくなり、調整幅により改定の影響が緩和されている状況にある。調整幅導入以降は薬価調査による平均乖離率も概ね横ばいで推移している。

事務局は、「医薬品流通における課題として過度な薬価差の偏在なども指摘されており、その実態を把握しつつ、流通取引の改善と合わせ対応を検討する必要性が生じている」と指摘。
調整幅の議論に際しては、「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会(流改懇)などの議論を踏まえることなどを提案した。

◎診療側・森委員 調整幅は「現時点では見直すべきではない」 「流通体系の崩壊を招く可能性」指摘

診療・支払各側は、中医協に先立って流改懇で議論することを了承した。診療側の長島委員は、「調整幅については、過去に議論を重ね、R幅10%を超える状態から、現在の形になった経緯がある」として、「関係会議においても、過去の議論を十分に参考にしていただくのが良いと思う」と述べた。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「調整幅2%に設定された当初と現在を比べても、高額医薬品や厳格な管理が必要な医薬品も出てきており、流通コスト、管理コストが増加している。さらに、毎年の薬価改定や供給問題などの影響もあり、安定的な流通機能を保つ機能として、調整幅はますます重要なものとなっている」との認識を表明。調整幅が2%として現状の流通が成り立っているとして、「流通の現場にどのような影響があるのか、正確な試算ができない以上、流通体系の崩壊を招く可能性があるため、現時点では見直すべきではない」との見解を表明。「サプライチェーンの状況などをしっかりと把握しつつ、調整幅のみではなく、流通全体の課題を含め、極めて慎重に議論が必要と考える」と述べた。

◎支払側・松本委員「割戻しとアローアンスで一次売差マイナス補填」に「大きな違和感」

支払側の松本委員は、「長い間、調整幅が一律2%に固定されていることについてはずっと疑問を持っている」と述べ、調査結果などの具体的なスケジュールの提示を事務局に求めた。また、「市場実勢価格を反映するという観点で、やはり乖離率だけではなく、乖離額も考慮する必要があるということは改めて主張する」と述べた。

また、現行の流通が「割戻しとアローアンスによって、一次売差マイナスを補填する構造」になっているとの説明に対し、「公的な価格である薬価の議論をする際に、割戻しとかアローアンスという非常にある意味特殊な契約が出てくることに非常に大きな違和感を覚えた」と問題意識を露わにした。「特にアローアンスの金額が卸の利益に直結するってことは効果もよくわかる。業界の方から“非常に厳しいんだ、厳しいんだ”とうかがうが、それはこういったものの要素もあるということになる」と指摘。こうした状況が薬価にも影響することから、業界の構造的課題に疑義を示し、こうした課題を踏まえた検討を求めた。

支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「不安定供給問題や、ドラッグ・ラグ/ロス問題を踏まえれば、調整幅の問題について議論する際に、特に後発医薬品業界の産業構造など、根本的な課題へのアプローチ方策を整理した上で、議論を進める必要がある」と指摘した。

“過度な薬価差の偏在”も課題として浮き彫りになる中で、20店舗以上のチェーン薬局などもクローズアップされている。診療側の森委員は、「医療機関や薬局の区分ごとのデータでは、開設者や施設で乖離率に違いがあることがわからないので、これだけで薬局では過度な薬価差が生じていると結論づけることはできない」として、事務局に詳細なデータを求めた。

◎中間年改定 支払側・松本委員は新薬創出等加算の累積額控除は「後発品の薬価収載のタイミングで」

診療報酬がない年の薬価改定についても議論の俎上に上った。診療側の長島委員は、「薬価改定は、診療報酬改定と同時期に行うことが基本。診療報酬改定がない年の薬価改定は、過去2回の中間年改定が医薬品の安定供給や、ドラッグ・ラグ/ロスなどに与えた影響なども検証しつつ、検討を重ねるべき」との見解を表明した。

診療側の森委員は、「薬局経営など関係者への影響や、昨今の賃金や物価・賃金高騰と医薬品の供給問題などの影響、サプライチェーンの経営実態などを踏まえて、中間年改定の対象範囲や改定の実施の是非を含めて、慎重な検討をすべき」と指摘した。一方で、「現在は24年度の薬価改定の議論をかなり幅広く行っている段階で、本年度は次期薬価改定の議論を最優先で行うべきであり、その次の中間年の議論まで行うことは難しいのではないか」との見方を示した。

支払側の松本委員は、「診療報酬改定のない年の薬価改定は、国民負担軽減が最大の目的であるということは改めて認識をいただきたい」と強調。新薬創出等加算の累積額控除のタイミングについて、「最大1年以上のタイムラグが生じる」として、「薬価改定は現在毎年行われていますので、公平性の観点からも最低限、累積額控除は毎年行うべきではないかと考える」と述べた。これまで、診療報酬改定のない年の算定ルールは実勢価と連動するルールが適用されてきた経緯があるが、「新薬創出等加算が実勢価改定を一定程度猶予するものであることから、実勢価改定年度に関連するとして累積額控除を適用すべき」とも述べた。

そのうえで、「そもそもの趣旨が特許期間中の措置であることを踏まえれば、後発品の新規収載時の薬価が、新薬の累積額控除後の価格を基に決まることから、現在年2回ある後発品の薬価収載を同時に累積額控除するということを提案する」と述べた。

◎診療側・長島委員 日本の60日以内に保険収載ルールは「企業にとって最も高い予見性」 事務局にデータ提示求める

このほか、診療側の長島委員が「新医薬品を薬事承認から原則60日以内に保険収載するという日本の制度は、患者さんに新医薬品が迅速に届くという点で、世界に誇れるものであり、製薬企業にとっても最も高い予見性を担保している」と指摘。「日本や諸外国における薬事承認から保険収載と同等の状態になるまでの平均期間と保険収載される割合についてデータがあれば、次回以降にご提示いただきたい」と事務局に求める場面もあった。

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