日本医師会など医療関係42団体で構成する国民医療推進協議会は10月10日、岸田内閣が進める秋の経済対策、さらには診療報酬を含む2024年度の“トリプル改定”に向けて、「適切な財源を確保するよう、本協議会の総意として、強く要望する」と決議した。国民医療推進協議会の松本吉郎会長（日本医師会会長）は、「国民の生命と健康を守るためにも、医療・介護分野における物価高騰と賃上げへの対応は不可欠であり、必要財源を確保することが大変重要だ」と強調した。協議会は年末の予算編成に向けて、全国各地からの決議文と、12月に予定される国民医療を守るための総決起大会での決議文を政府関係者に上申するなどして、必要財源の確保に向けた動きを更に強める構え。

◎物価高騰は「一時的対応ではなく、恒常的な対応を」

決議文では、「長らく続く物価高騰には、一時的な対応ではなく、恒常的な対応が必要」と指摘。人口減少の中で、人材確保が不可欠であり、政府からも持続的な賃上げを呼びかけられている状況にあるとした。一方で、医療機関などは公定価格で運営されており、「上昇分を価格に転嫁することができない。物価高騰と賃上げ、さらには日進月歩する技術革新への対応には十分な原資が必要」とした。そのうえで、「国民の生命と健康を守るため、医療・介護分野における物価高騰・賃金上昇に対する取組を進め、国民に不可欠、かつ日進月歩している医療・介護を提供しなければならない」として、必要財源の確保を強く訴えた。

◎日医・茂松副会長　24年度改定は「非常に厳しい議論になる」　経営状況は「コロナ影響大きく」

日本医師会の茂松茂人副会長は、「2024年度の予算編成に向けて、財務省等が医療費削減やマイナス改定を主張してくると思われる。非常に厳しい議論になる」との見方を表明した。９月に公表された医療費動向については、「医療機関の経営状況は良くなっているように見えるが、オミクロン株の流行によるコロナ患者の急増など、コロナ対応が主な要因。その分、安全対策の増加、追加的人員の確保など感染拡大に対応できる体制を築くためのコストも上昇している」と説明。「コロナ対応を除くと、コロナ前の水準以下で、コロナ禍による医療費減少のダメージがそのまま残っている」と述べた。

◎医療・介護領域の賃上げは１％台　地方経済成長へ「医療・介護従事者の賃上げが先決」

診療報酬が公定価格であり、物価高騰などの影響を転嫁することができない。岸田内閣は賃上げ３％超を掲げたが、「医療・介護分野の賃金上昇は、公定価格の下で半分程度の水準、1%台にとどまっている。医療・介護分野の従事者約900万人の賃金を上げることが先決だ。これにより、全国津々浦々まで物価高騰対応や賃金上昇の波を際立たせ、我が国全体の賃金上昇と地方の成長の実現を見込むことができる」と強調した。賃上げについては、「従来の改定とは別に対応する必要がある」との見解を表明した。24年度改定で感染症対策についても検討されるが、「協定を結んだ医療機関による次の流行に備えた体制整備や、その中で医療のデジタル化の遅れが指摘されており、電子カルテの整備、サイバーセキュリティ等の医療DXに活用していかなければならない」として、これとは別の財源確保の必要性を強調した。

◎日薬・山本会長　毎年薬価改定が医薬品製造・流通に影響で「ドラッグ・ラグ/ロスを生じている」

協議会の副会長を務める日本薬剤師会の山本信夫会長は、「保険薬局の場合、毎年実施される薬価改定が薬局経営を厳しく圧迫している状況だ。医薬品の製造、流通の現場にまで影響が及んでおり、ドラッグ・ラグあるいはドラッグ・ロスという深刻な状況にある」として、必要財源の確保を訴えた。

◎日看協・高橋会長「人口減少社会、最大の課題は人材確保」　賃上げ、医療DXは「急務」

協議会の副会長である日本看護協会の高橋弘枝会長は、物価高騰が医療機関や訪問看護ステーションの経営などに大きな影響を及ぼしている現状を指摘。「人口減少社会においては、医療・介護領域での人材確保が最大の課題であることから、賃上げや、医療DX等のさらなる推進を図ることも急務だ」との見解を表明して、対応の必要性を強調した。