日医・松本会長 医療給付費対GDP比数値目標導入「到底容認できない」 骨太方針踏まえキャップ牽制
公開日時 2026/07/23 06:30

日本医師会の松本吉郎会長は7月22日の定例会見で、骨太方針2026の閣議決定を受け、医療給付費対GDP比、社会保障費(医療・年金・介護等)の対GDP比の数値目標の導入は「到底容認できない」と語気を強めた。骨太方針に「社会保障負担率の目標」を検討することが明記されたことを踏まえたもの。医療費に上限をかけるような「キャップ制につながらないよう、強く主張していきたい」と牽制した。社会保障負担率に公費負担がほとんど含まれていないことを指摘し、「税収が上振れしている中で、公費負担、すなわち税をしっかり医療に導入していくことが重要だ」と主張した。
◎社会保障負担率「一つの目標値で検討は無理がある」 上振れする税収、医療に導入を
骨太方針2026には、「社会保障制度が果たす機能を損なわないよう配慮しつつ、社会保障負担率の目標の検討を進め、これとあわせて、社会保障改革について2026年度中に改革項目の具体化と工程の明確化を図り、順次実施する」と明記された。「27年度の社会保障負担率が25年度と比較して上昇しないよう取り組む」ことも盛り込まれている。
松本会長は、“社会保障負担率の目標の検討”が盛り込まれたことについて、「医療界にとって見過ごすことのできない文言。これだけ見ると、非常に厳しい内容で、注目している」と述べた。社会保障負担率は、「社会保障負担額(医療・介護・年金等の保険料負担率)」を「国民所得の額(雇用者報酬+企業所得+財産所得)」で除した値。このため、「公費の負担はほとんど含まれていない。税収が上振れしている中で、公費負担、すなわち税をしっかり医療に導入していくことが重要だ」と述べた。
また、社会保障負担率の分母である“国民所得の額”は「経済物価動向に影響を受ける。経済が伸びているときは良いかもしれないが、分母が少しでも縮小すれば、負担率を減らす方向に向かうことになる」と懸念を表明。「非常に大きな議論になるのではないか」と牽制した。また、「一つの目標値で、社会保障を考えるのは非常に無理がある。社会保障については多面的に、バランスを取りながら考えていくことが大事だ」と強調した。
◎「むしろ足下の医療費を引き上げると読み取れる」 自民・維新の与党協議で焦点も
自民・維新の与党協議の中で焦点の当たった、医療費の対GDP比の数値目標導入や、社会保障費(医療・年金・介護等)の対GDP数値目標の導入については、改めて反対姿勢を強調した。仮に医療給費の対GDP比を一定に据え置くことを目標とすると、「これまでの薬価等の削減等の改革に加え、さらに毎年約5000億円程度の更なる削減が見込まれ、医療崩壊を招く」との資料も示した。
GDPについては、「近年は物価高騰、賃上げにより、医療費の伸び率を上回っている状況にある」とも指摘。医療費を引下げる論調もある中で、「むしろ足下の医療費を引き上げることも読み取れる内容になっているかと思う」と牽制した。
骨太方針2026には、「経済・物価動向等に適切に対応し、安心して医療・介護・福祉サービスを受けられる体制を整備する」、「社会保障制度が果たす機能を損なわないよう配慮しつつ」との文言も盛り込まれたことから、「一方的な抑制に偏ったものとは認識していない」と表明した。そのうえで、「これまでも様々なロビー活動を通じて、各政党、特に自民党を中心に、社会保障がいかに大切かを訴えてきた。社会保障を抑制する形にすると、医療そのものが崩壊してしまう。一度崩壊した医療は元には戻らない。そうした危険性を強く訴えてきたし、これからもしっかりと訴えていきたい」と強調した。
◎70歳以上高齢者の原則3割負担議論「応能負担は少しずつ段階を経ていく必要がある」
骨太方針に70歳以上の高齢者の医療費窓口負担割合が盛り込まれたことを踏まえ、「70歳以上の高齢者の医療費窓口負担原則3割、外来特例の廃止」について「到底容認できない」と強調した。
高齢者には複数の疾患を抱えている人や、低所得の人も多い。後期高齢者の窓口負担割合の状況(22年)によると、現役並み所得(年収383万円以上)で3割負担なのは約7%(130万人)にとどまっており、1割負担が約7割を占めている。松本会長は、「応能負担の観点は必要だが、自助、共助、公助のバランスを取りながら、物価高騰等により税収が伸びる中で低所得者の方々にもしっかり配慮しつつ、少しずつ段階を経ていく必要があるのではないか」と述べた。「高齢者の医療費水準や受診状況、家計の状況、さらには高齢者の親を持つ方々の家族の経済的な負担なども勘案しつつ、丁寧な議論を進めていくことが重要だ」との見解を示した。
骨太方針には、「70歳以上の高齢者の医療費窓口負担割合について、低所得者等の必要な受診が確保されるよう適切に配慮することを前提として、原則3割となっている現役世代との間で年齢によらない真に公平な応能負担を実現する観点から見直しを行う。そのための改革工程表を2026年末までに策定する」と明記。脚注には、「その際、高齢者の就業率の上昇や健康寿命の延伸、医療費水準や受診状況の動向、高齢者に低所得が多いといった家計の状況等も踏まえ、必要な受診が確保されるよう適切な配慮措置を講じつつ、外来特例の在り方や、負担割合の区切りとなる所得の見直し、年齢の引き上げなど窓口負担の抜本的な見直しについて、現役世代の負担軽減の観点からの公費負担のあり方とともに総合的に検討を行い、その速やかな実現について令和8年末までに一定の結論を得る。また、マイナンバー制度を活用した所得・資産情報の把握基盤の整備を早急に進め、制度への反映を進める」とされている。