メディパルHD・渡辺社長 ビジネスを「変えていかないといけない」 スキームを作り直して問題提起する
公開日時 2023/11/07 04:52
メディパルホールディングスの渡辺秀一代表取締役社長は11月6日の2023年度第2四半期決算説明会で、医療用医薬品卸売事業のビジネスのやり方を「変えていかないといけない」と強調した。日本の医薬品市場は革新的新薬と後発医薬品の二極で構成される傾向にあると見通しながらも、「高齢化時代の治療薬の中心はジェネリックになる」と断言。ただ、現状の少量多品目の課題に問題意識を表明しながら、「どのようなスキームで作り直すのか」が課題とし、「メディパルグループとして少し資本を入れている再生会社もある。それを中核に、問題提起を、国、支払者側、医療機関に話していけるような状況になればと思っている」と述べた。
◎後発品企業 「もう少し絞られてもいいのではないか」
渡辺社長は後発品企業の再編統合の必要性に言及し、「第三者的に見ると、なぜこんなに多くのメーカーが生産しているのか。もう少し絞られてもいいのではないか」と述べた。長期にわたって業界全体が需給調整業務に追われていることを念頭に、「(後発品の供給で)行き当たりばったりの状況というのは、どの段階でも無駄な仕事をしている」とも指摘した。
◎長福副社長 「一番の課題」は長期収載品の自己負担の見直し
長福恭弘取締役副社長は、医薬品の制度改革をめぐる「一番の課題」として長期収載品の自己負担の見直しをあげ、「これは大きな問題になる」との見方を示した。さらに調剤報酬改定の動向を注視しているとも指摘。「得意先の経営がより厳しくなる中で、毎年改定でメーカーからの仕入価格も上がってくる。乖離幅の圧縮は我々の方もやっていくが、そのまま粗利増加につながるかは楽観視できない」と危機感を示した。そして物流機能の効率化の重要性に触れ、「物流効率化による販管費の削減に急いで取り組みたい。来年の診療報酬・薬価改定に備えたい」と述べた。
◎13か所目の高機能物流センターが稼働 全国カバーする流通ネットワークが完成
同社グループでは物流機能の高度化・効率化に向け、徹底した温度管理や高い受注納品率を実現する需要予測システムなどを備えた高機能物流センター(ALC:Area Logistics Center)の整備を進め、09年に1番手となる神奈川ALCが稼働した。それから14年となる今年10月に13か所目となる阪神ALCが稼働、全国をカバーするALCによる流通ネットワークが完成した。
これにより例えば、さまざまな温度帯に対応した保管·配送システムにより希少疾病用医薬品の安定供給を実現。従来の伝票読み上げ方式から、納品箱単体でのバーコードスキャン方式に変更することで検品時間を短縮する「個口スキャン検品」により、医療従事者の検品時間の大幅削減と本来業務の時間の創出につなげるなど、サプライチェーンの全体最適を見据えたソリューションにもなっている。
また、メディパルHDは、臨床検査受託大手のH.U.グループホールディングスと合弁会社「メディスケット」を22年4月に設立した。両社のルートを共通化することで、両社が取り扱う医薬品や検査資材等の供給と、臨床・治験・研究等の検体の集荷を最適化する取り組みを始めた。
合弁会社の設立前は、メディパルHD側は病院に医薬品を配送訪問した後は、カラのトラックで物流拠点に移動。H.U.グループHD側は病院にカラのトラックで集荷訪問し、検体を積んで集荷拠点に移動していた。メディスケットでは、医薬品配送と検体集荷のタイミングを合わせることで、病院に医薬品を配送訪問し、検体を積んで集荷拠点に移動することを実現。配送・移動の効率化に加え、温室効果ガスの削減にも貢献する考えを示している。
◎23年度第2四半期 売上総利益6.4%増の698億円
メディパルHDの23年度第2四半期連結業績は売上高が前年同期比5.6%増の1兆7789億円、営業利益は19.2%減の206億円、親会社帰属純利益は1.0%減の171億円の増収減益となった。医療用医薬品等卸売事業(メディセオ事業)については、売上高は4.0%増の1兆1400億円、売上総利益は6.4%増の698億円、営業利益は55.4%減の53億円だった。
医療用医薬品卸売事業では、コロナ5類以降の影響などで患者の受診件数が回復し、医療用医薬品等の販売が増加。長崎県の地場卸・東七の連結子会社化やメディスケットの事業開始によって197億円の増収となったことも寄与した。一方で、東七の子会社化やメディスケットの事業開始、事業投資費の計上により販管費が108億円増加するなどして営業減益となった。