メディパルホールディングス（ＨＤ）の今川国明取締役（メディセオ代表取締役社長）は５月14日の2024年度決算説明会で、流通改善ガイドライン（GL）に明記された“別枠品”の単品単価交渉の徹底や過度な薬価差の偏在解消に向けた、同社の24年度の活動や医療機関・調剤薬局（以下、顧客）の受けとめを紹介した。同社グループの営業担当者が顧客に同GLの主旨を説明したところ、「別枠品の取り扱いを含め比較的、理解を得られた」という。ただ、「医療機関や調剤薬局の経営は厳しくなっており、意味合いは受けいれてもらっても、全てを価格単価に反映して了承いただけたとは思っていない」と述べ、インフレによる医業経営の悪化が価格交渉に影響したと明かした。「25年度の交渉も厳しいものになる」と見通しを語った。

25年度の価格交渉にあたっては、同GLに沿って引き続き「愚直な説明や活動をしていく」ことを基本に据えつつ、顧客の業務効率の改善に資する機能も提案することで、「価格という単価とともに、トータルでお客様の業務に貢献していく」との考えを示した。顧客の業務効率の改善では、全国13か所の高機能物流センター「ALC」の機能を使って「あらゆるメリットをもたらしていきたい」とし、例えば薬剤使用データから需要を予測し、顧客の発注業務負担を軽減する在庫管理システム「PRESUS Lite」を提供していることを紹介した。「次から次へと、いろいろなものを考えている」と話した。

◎神経・精神疾患領域に特化したＡＲ「NS-MR」を組織　まずアキュリス製品を手掛ける予定

メディパルグループでは新たな流通価値の創造に向け、ALCとＡＲ（社内呼称、ＭＲ資格を持つＭＳ）による“物流”と“営業”が一体となった活動を推進している。依田俊英専務取締役は、ALCの持つ高機能な物流ネットワークとＡＲによる情報活動を車の両輪として価値を高めていくことで、「生産性を向上させ、お得意様に貢献していく」と述べた。

ＡＲは専門特化したチームも組織している。25年度から製薬企業からのニーズに応える形で神経・精神疾患領域に特化したチームを組織し、「NS-MR（Neuro Science MR）」と呼称して活動を始めた。NS-MRは約15人。NS-MRは、メディパルHDが３月にコーポレートベンチャーキャピタルファンドを通じて出資した、神経・精神疾患領域に特化した製薬ベンチャーのアキュリスファーマの製品を手掛ける予定。ただ、今川取締役は、「アキュリスと業務提携しているので当然、最大の力を入れていくが、ＡＲのビジネスは幅広い」と話し、多くの製薬企業のニーズに応えていく構えをみせた。

なお、メディパルグループでは、希少疾患領域に特化したＡＲである「RD-MR」や、女性診療科領域に特化した「ウィメンズコーディネーター」を組織済み。それぞれ約15人で構成し、これまでに両チーム合計で製薬企業からの受託件数は20件を超えた。

◎24年度決算　医療用医薬品等卸売事業は売上高２兆3702億円、営業利益252億円

メディパルHDの24年度連結業績は、売上高は前年度比3.2％増の３兆6713億円、営業利益は17.5％増の556億円だった。事業投資の期ずれによる販管費の縮小もあり、大幅な営業増益となったが、売上高及び営業利益とも過去最高となった。

医療用医薬品等卸売事業（メディセオ事業）については、売上高は3.2％増の２兆3702億円、売上総利益は4.3％増の1504億円、売上総利益率は0.07ポイント増の6.34％、営業利益は44.3％増の252億円、営業利益率は0.30ポイント増の1.06％――だった。

24年４月の薬価改定影響や、新型コロナ治療薬や同感染症検査関連試薬の需要減があったものの、ALCとARの活動でワクチン関連商品や成長品目への取り組みを強化。病院販路での販売拡大や、ALCのネットワークを活かして医薬品配送から検体回収までに対応した国内最大の物流プラットフォームを持つメディスケットの事業拡大もあって好業績となった。なお、新型コロナワクチン販売で182億円の増収となった。

25年度の連結業績予想は、売上高は3.1％増の３兆7850億円、営業利益6.5％減の520億円を見込む。医療用医薬品等卸売事業は、売上高は3.0％増の２兆4410億円、売上総利益は2.3％増の1539億円、売上総利益率は0.04ポイント減の6.30％、営業利益は19.5％減の203億円、営業利益率は0.23ポイント悪化の0.83％――。ただし、事業投資や成長投資に伴い発生したのれん・無形資産償却費を控除した調整後営業利益は1.6％増の269億円となり、調整後の営業利益率は1.11％となる見通し。