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【中医協薬価専門部会・費用対効果評価専門部会合同部会 11月8日 議事要旨 製薬業界から意見聴取】

公開日時 2023/11/09 06:59
中医協薬価専門部会・費用対効果評価専門部会合同部会は11月8日、「高額医薬品(認知症薬)に対する対応」について製薬業界団体から意見聴取し、議論を行った。本誌は各側委員と製薬業界団体代表との質疑について議事要旨として公開する。

(業界からの意見聴取)
・日本製薬団体連合会
・米国研究製薬工業協会
・欧州製薬団体連合
※説明および質疑は、日薬連の上野裕明副会長(製薬協会長・田辺三菱製薬代表取締役)が行った。



安川部会長:では、これより質疑に移りたいと思います。ご質問等ございましたらよろしくお願いします。では長島委員お願いいたします。

長島委員:ありがとうございます。関係業界からご意見ありがとうございました。私からいくつかコメントと質問をさせていただきます。

医薬品の価値の適切な評価に関しては、どのような立場で価値を見出すかによって評価の仕方が変わります。この中医協においては、健康保険法に基づく医療保険の視点で評価するという立場が大前提であるということを、まず申し上げます。

資料「薬費-1」の5ページ(認知症施策の必要性等・まとめ)の3つ目のポイントに書かれているように、「治療薬の負担については国の認知症施策の中で幅広く検討することも考えられる」ことに同意します。

その場合、開発途中で断念した薬剤も含めて、治療薬開発に取り組む企業に国からどのような配慮があるべきなのか。適切な国の検討の場において検討いただければと思います。その際は、日本が誇る国民皆保険が破綻することのないような配慮が必要となります。

資料「薬費-1」の9ページ(費用対効果評価における対応の方向性に係る意見)の3つの意見のうち、まず「介護費用の取り扱いについて」です。これまでの検討において、介護費用等を含めた費用対効果分析には多くの課題があることが示されております。そこで質問です。業界としては、介護費用等を含めた分析は、どのようなデータを用いて実施することを想定しているのか? どの程度、分析が可能と考えられているのか? 教えてください。

次に、「疾患特性を踏まえた基準値」についてです。品目指定時の配慮については、希少疾病を対象として医薬品に関するこれまでの評価において、明らかな問題はないと考えますので、認知症薬は配慮の対象にはならないと思っています。

そして、「価格調整範囲のあり方」について、「価格調整範囲を加算部分より拡大することは薬価本体(比較薬又は原価相当の水準)を割り込むことになり、薬価制度と矛盾するため、受け入れられない」と表現されております。しかし、現行の薬価制度においても、外国平均価格調整がなされた場合、外国平均価格調整の前の価格に薬価収載時における有用性系加算と合わせた額に対する割合となっており、本来の加算額にとどまっていない現状があります。そこで質問です。このように、現行の薬価制度においても、価格調整範囲はすでに加算部分に限定されておりませんので、今回、価格調整範囲を拡大したとしても、薬価制度と矛盾することはないと考えますが、その点はどのようにお考えでしょうか。

こうしたことを踏まえますと、価格調整範囲については、費用対効果評価のあるべき姿をどのようにしていくかという視点で、中医協において議論を重ねていくことが重要と考えています。

最後に、個別薬剤の特徴に応じた適切な対象患者層への投与をやめるべき状況も含め、見極めるためのエビデンス収集を継続的に行っていくべきであると考えます。レカネマブについて言えば、プラセボ群と比較して認知機能の低下を27%抑制したとの報道がよく見られますが、スコア変化量の絶対値も含めて、臨床的意義を冷静に、科学的に評価する必要があると思います。私からは以上です。

安川部会長:いま質問がありましたが、今しばらく意見を拝聴した上で、少しまとめて返事をいただけたらと思っております。では江澤委員よろしくお願いいたします。

江澤委員:はい、ありがとうございます。あの一点だけ質問でございます。資料「薬費―1」10ページにアンメット・メディカル・ニーズに対する医薬品の貢献の歴史のスライドがございます。レカネマブの薬理作用は、これまでにない画期的なものだと思っておりますが、一方でその臨床効果は資料10ページ(に掲載した)色々な疾患に使われているこれまでの医薬品の臨床効果と比較して、どれだけ遜色ない臨床効果あるのかどうかというのが、これまでのデータを見ていると、若干疑問を持っているとこなので、その点について、何か知見がありましたら、よろしくお願いしたいと思います。

安川部会長:では森委員よろしくお願いします。

森委員:はい、ありがとうございます。ご説明ありがとうございました。(製薬業界の)意見についてはどれも重要な指摘であると受け止めております。その上で介護費用に関しては長島委員の方から質問がありましたので、2点ほど確認をさせていただければというふうに思っております。

まず、「薬価上の対応の方向性に係る意見」(資料8ページ)の薬価収載後の価格調整(市場拡大再算定)についてです。「現行の薬価・価格調整ルールとの関係も踏まえつつ、その必要性を含め慎重に検討すべき」とありますが、別の扱いとして特に懸念していることがあれば、具体的に教えていただければというふうに思います。

2点目です。「費用対効果評価における対応の方向性に係る意見」(資料9ページ)の、「疾患特性を踏まえた基準値について」ですが、現在はがんが対象となっていると思いますけれども、「総合的評価において配慮されるよう引き続き検討いただきたい」とありますが、具体的にどのようなことを想定しているのか、どのようなルールとすることを望んでいるのか、また認知症治療薬特有の配慮と考えているのか、今後それ以外に関しても何か広げていくことを考えているのか、ということを教えていただければというふうに思います。私からは以上です。

安川部会長:はい、ありがとうございます。5つほど質問が出たかと思います。関係団体の方から回答いただけましたら、よろしくお願いいたします。

上野日薬連副会長:ご質問ならびにコメントありがとうございました。まず確認でございますけども、最初の長島委員からのご質問につきましては、資料「薬費-1」の9ページ(費用対効果評価における対応の方向性に係る意見)にある3点についてのご質問というふうに考えてよろしいでしょうか?

長島委員:もう一度質問申し上げます。業界としては、介護費用等を含めた分析は、どのようなデータを用いて実施することを想定しているのか? どの程度、分析が可能と考えていられるのか?教えてください。これが一つ目です。

上野日薬連副会長:ご質問にお答えさせていただきます。いまご指摘いただいたように、特にアルツハイマー病のような認知症の介護に関わる評価というのは非常に難しいということは承知しております。ただ、これまではこういう治療薬がなかった中での議論だったという認識しております。今回、レカネマブという治療薬が出てきたこのタイミングを捉えて、やはり当該企業による分析結果を尊重頂き、その中でどのように組み入れることができるかどうか検討いただきたいと思っております。

これについては業界団体として具体的なものを特に持ち合わせておりませんが、例えば、10月27日の当該部会にて加藤先生が指摘されたような、介護レセプトデータに含まれる日常生活自立度を健康状態の代替指標とすることで、費用対効果評価の一つになるのではないかというようなご意見も出されました。こういうことも一つの可能性として考えていただければというふうに思っております。以上でございます。

続きまして、基準値についてのお話でよろしいでしょうか? それでは基準値についての考え方でございますが、これまでアルツハイマー病というものに治療方法がなかった中で、今回レカネマブが出てきたという点で考えますと、抗がん剤と同様にICERの基準値を配慮していただきたいと思います。さらにアルツハイマー病は疾患の進行が遅いために、QOLの変化が表れ難いことや、当事者だけでなく介護者や家族に関わるコストが大きいことから、その価値が適切に反映できるような基準値が必要であると考えております。

3点目の価格調整範囲についての回答でございます。基本的には薬価の本体部分についてはこれまで厳格に管理された臨床試験で有効性と安全性が評価された結果と、効能効果などを基に認められた基本的な価値であると認識しております。一方、費用対効果評価はQOLの改善をしようとしたICERによる評価と認識しております。

このように全く異なる指標を持って薬価の本体部分を一緒にして調整するというようなことは医薬品の本来の価値を否定するものではないかというふうに感じておりまして、私どもは合理的でないと感じております。これについては今後の費用対効果評価の議論の中でもぜひ議論させていただければというふうに思っております。

続いて2人目のご意見でございますけども、臨床効果については、今後この薬剤が実際に臨床の現場で使われることによってどのような効果につながっていくかっていうのは、これから示されていくと考えております。ただ、これは一般論としての回答でございまして、レカネマブそのものが、これまでどのようなデータを持っているか、あるいは今後どのような試験を検討しているかについて私どもから述べる立場にはございません。当該企業の方と議論いただければというふうに思っております。

続きまして森委員からのご質問に対してのお答えでございます。薬価収載後の価格調整についてどのような懸念があるかという点についてのお話でございますが、既に現行の市場拡大再算定や、四半期ごとの再算定がある中、更なる見直しを行うことは、日本市場の魅力度を低下させてしまい、企業の開発意欲を大きく損なうことを懸念しております。そのため、今後もし新たなルールが議論される際には、その必要性も含めて慎重に検討いただきたいというふうに考えております。

「疾患特性を踏まえた基準値」の考えについては、先ほど長島委員の質問に対してお答えさせていただいたものと同じというふうに考えております。以上でございます。

安川部会長:ご回答ありがとうございました。委員の方はよろしいでしょうか? 江澤委員。お願いいたします

江澤委員:一点だけすみません。認知症日常生活自立度は認知機能を評価するものではなく、BPSDとか日常生活に支障をきたすような状態を示すもので、どちらかというと薬よりは臨床の現場の立場で申し上げますと、介護とか、あるいは人のかかわり方、あるいは環境的な要因で結構改善するものが多いということで、新たな生活機能にも着目した認知症の評価尺度というのも今検討されております。今後いろんな視点からまたいろんなデータをお示しいただければ大変ありがたいので期待しております。ありがとうございます。

安川部会長:はい、ありがとうございます。では松本委員お願いいたします。

松本委員:上野会長、ご説明どうもありがとうございました。私の方からは質問とコメントをいくつか差し上げたいと思います。まず資料「薬費-1」の5ページ(認知症施策の必要性等・まとめ)でございます。5ページの3つ目(認知症は身近な疾患であるとともに社会的影響も大きいことを踏まえれば、治療薬の負担については国の認知症施策の中で幅広く検討することも考えられる)でございますが、「治療薬の負担については国の認知症施策の中で幅広く検討」という表現が使われておりますけども、これは保険給付費を含めての話なのか、患者の自己負担について特に言及されているのか、具体的にどういうところを指しているのか教えていただきたいという質問でございます。

続きまして資料「薬費-1」の8ページ(薬価上の対応の方向性に係る意見)ですが、薬価収載後の価格調整に言及されておりますけども、本剤に関して別の取り扱いを検討することについては、一定の理解をいただいたものと受け止めております。

我々としては保険財政に極めて重大な影響を及ぼす懸念もあることから、医療保険制度の持続可能性の観点から厳しい判断にならざるを得ないということもご理解を賜りたいというふうに思います。

続きまして資料「薬費―1」の9ページ(費用対効果評価における対応の方向性に係る意見)です。最初の「介護費用の取り扱い」について、これは先ほど各委員が発言されましたので、それで理解をしたいと思いますが、今後、認知症の関連の医薬品の保険収載が多分出てくると思うのですけども、その際にも同様にこういったことをやるのだということが製薬業界として、ある程度合意が取れているものなのか。今回の議論だけで解決する話ではないと思います。我々としては医療保険財政への影響を大前提に考えることからも、これについてもやっぱり厳しい判断をとるということについてはご理解をたまわりたいというふうに思っております。

これは専門部会から離れますけども、以前、費用対効果評価専門部会における意見陳述において、業界の方から価格引き上げに必要な条件の撤廃と緩和という要望がございました。価格引き上げの条件は該当品目が有する医療経済上の有用性と価格引き上げ等に関する影響とのバランスを考慮して設けられたものですので、医療保険者の立場からしますと価格を引き上げることに関しては簡単にできるものではないということでございます。その上で業界の皆様が加算の範囲を超えての引き上げを要望している一方で、加算の範囲を超えての引き下げについては、薬価制度と矛盾をしているという表現になっておりますけども、これについて若干一貫性がないように感じます。これについてどういうふうにお考えなのかを教えていただきたいと思います。

最後でございます。介護費用の軽減を医療保険の財源を使って評価するということについては、従来から制度あるいは哲学との問題があるということは指摘しておりますけども、最終的には薬価に転嫁するということになるとすれば、医療保険者の立場からいたしますと、全体を考えた場合には薬剤費の適正化をさらに検討せざるを得ないと思います。そのことについて業界全体としてどのようにお考えなのかをお尋ねしたいと思います。私からは以上でございます。

安川部会長:はい、ありがとうございました。他にご意見、ご質問ございますか。松本委員から4点ほど質問がございましたが、業界団体の方で、ご回答いただけましたらよろしくお願いいたします。

上野日薬連副会長:ご質問どうもありがとうございました。資料「薬費―1」5ページの3点目に対するご質問について回答します。これも例えばという話になりますが、認知症対策が社会保障とは別の国家施策として位置づけられるのであれば、これまでと同様に保険の中だけではなくて、例えばですが、例えば基金を設けてそこに国家予算から保険とは別に手当するなど、そういった方策もあるのではないかということで、こういった点も含めて幅広くご検討いただければというふうに思っている次第でございます。

それと、これは質問というよりコメントとしてお伺いしました。資料「薬費―1」8ページの2点目に書いてある、更なる引き下げのルールについての話でございますが、これも私のプレゼンでお話しましたが、すでに四半期再算定や売上拡大に応じて、迅速かつ大幅に薬価を引き下げるというルールもございます。まずはこの範囲で検討いただければというのが私どもの要望でございます。

2点目の費用対効果評価については、基本的にこれは加算部分についての議論だというふうに認識しております。一方、薬価本体は先ほど申し上げましたように臨床試験等の厳格なデータ分析において医薬品の価値あるいはその安全性というものに基づいた価格だと私どもは考えております。

その一方で、加算部分については、それが本当に妥当なのかどうかを、その効果を検討してICERなどの結果から妥当性を検討する。そういう中にあって、下げるものは下げる、そして上げるものは上げるという前提の中で、“上げるもの”も原則的にあってもいいのではないかと。ただ、繰り返しになりますけども、基本的には費用対効果評価は加算部分についてのみで薬価本体まで別の尺度でそれを評価するということについては、私どもは反対だと考えております。

それと最後のご質問でございますけども、これを契機に認知症の治療薬が世の中に登場することは私どもとしても非常に期待を表しております。ただそれが今回のレカネマブと同様かどうかっていうのは基本的にその薬剤の一つ一つの特性によって個別に評価されるもので、それについて業界全体として統一の意見を持っているということではございません。以上、お答えさせていただきました。

安川部会長:はい、ありがとうございます。松本委員よろしいでしょうか?

松本委員:ありがとうございました。介護費用の取り扱いにつきましては今後研究班などの場で、研究を進めるべきかどうかという意味合いもありましたのでお尋ねした次第でございます。

安川部会長:他にご質問ご意見などございますか? 質問、意見等とも出尽くしたようですので、関係業界からの意見陳述につきましてはここまでとさせていただきます。業界の皆様ありがとうございました。今後、事務局におきまして本日いただいたご意見も踏まえてご対応いただくようにお願いをいたします。

次回の議論につきましては本日の議論を継続して進めていくため、今回と同様に合同部会の形式で議論を深めていきたいと存じますが、それよろしいでしょうか? はい、ありがとうございます。それでは次回も合同部会として開催することとしたいと思います。

本日いただきましたご意見等に基づき事務局で必要な資料準備等よろしくお願いいたします。本日の議題は以上です。次回の日程につきましては、追って事務局よりご連絡をいたしますのでよろしくお願いいたします。本日の合同部会はこれにて閉会といたします。皆様どうもありがとうございました。
 
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