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24年度薬価制度改革 後発品に導入する企業指標、改定時薬価に反映へ 増産企業をプラス評価

公開日時 2023/11/20 04:52
中医協薬価専門部会は11月17日、2024年度薬価制度改革で後発品に企業指標を試行的に導入することに、診療・支払各側が合意した。安定確保に取り組む企業として、積極的な投資や増産を行う企業についてプラス評価を行う。一方で、製造販売業として当然実施すべき事項は実施したことは評価せず、実施しなかった場合にマイナス評価とする考え。まずは評価が可能な供給実績や薬価の乖離状況などについてポイント化して合計点を相対的に評価し、企業を3段階に区分する。改定時の薬価のほか、価格の下支え措置に活用する方向で検討を進める。厚労省は今後、企業評価に基づく評価結果についてシミュレーションした内容を中医協に示す予定で、さらに検討を深める方針。

◎自社理由による出荷停止、または出荷量の制限の品目数が多いほど減点

厚労省は、安定供給の観点で企業行動を促す観点から、適用可能なものをできる限り速やかに評価していく必要性を指摘。まずは、供給実績と薬価の乖離状況から導入する。安定供給に対応する品目数に応じた評価とする考え。

供給実績については、他社で出荷停止・出荷制限となった品目と同じ品目を増産した場合に加算するほか、安定確保医薬品の品目数に応じて加算する。一方、自社理由による出荷停止、または出荷量の制限の品目数が多いほど減点する。薬価の乖離状況については、後発品全体の平均乖離率超の品目数や、薬価収載から5年以内に撤退した品目数、不採算品再算定品目のうち、指定後5年間の平均乖離率超の品目数に応じて減点する。

◎安定供給の情報公開、「24年度前半のできる限り早い時期に」企業行動促す

このほか、「後発品の安定供給に関連する情報の公表」と、「後発品安定供給のための予備対応力」については、今後評価に反映する方針。情報の公表については、公表すべき情報内容や判断基準について研究班で検討が進められている。厚生労働省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は、「企業指標を導入することで安定供給に必要な情報を可視化できるよう、各企業の情報公表を促していく。企業における準備期間を設け、24年度前半のできる限り早いうちに企業による公表を開始したい。次の薬価改定では情報公開された内容に基づき評価できるよう、関係部署と連携をとりながら進めていきたい」と述べた。

◎企業評価高い上位20%をA区分など3区分 行政処分企業はA区分とせず

これらの評価指標で示した項目ごとに点数化し、合計点について相対的に評価。「評価区分を「一般的な取組状況にある企業の区分(B区分)」を基本として、「一定水準を超える取組を行っていると評価できる企業の区分(A区分)」、「一定水準を下回る取組を行っていると評価される企業の区分(C区分)」の3区分とする。合計点の上位20%の企業はA区分、合計点がマイナスとなった企業はC区分とすることを例示した。評価時点から1年以内に行政処分の対象となった企業については、合計点数によらず、「A区分」とはしないことも盛り込んだ。

評価方法としては、改定時薬価と価格の下支えに適用する方向で検討を進める。評価の高い企業については現在の3価格帯とは別価格帯とする方針だが、価格帯増加の影響を最小限にするため、「同一成分規格の品目数の状況も踏まえ、一部の医薬品に限定して、一定の条件のもとで3価格帯とは別の扱いとなる」方向で検討を進める。一方で、新規後発品の収載時の薬価は、影響が大きいことなどから、「試行導入後の影響等を検証しつつ検討する」とした。また、基礎的医薬品など価格の下支えについては、「高く評価される企業の品目が下支え価格の恩恵をより受けやすくなる方向で対応することが考えられるが、具体的な対応方針は、下支え措置の検討状況を踏まえ整理する」とした。

◎安定供給への配慮求める声 診療側・森委員「企業規模によらない配慮も」

中医協委員からは「異論はない」との声が上がる一方で、安定供給への配慮を求める声が上がった。診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「安定供給に支障を生じている中、これ以上、安定供給に支障をきたさないよう配慮して運用することが必要だ」と指摘。「今の段階では様々な規模の企業が後発品の供給を担っている。導入当初の段階であれば、企業規模等により大きな優劣がつかないような配慮も必要」と述べた。

特に行政処分を受けた企業の評価については、「対応によって安定供給への支障や、予期せぬ影響が出てしまわぬよう、厚生労働省が企業の動向をしっかりと注視していく必要がある」(診療側・森委員)、「例えば法令違反をした企業が他を満たしていれば、B区分になるのであれば、少し疑問を持たざるを得ない。安定供給にも影響するので、その点については慎重に判断させていただきたい」(支払側・松本真人委員、健康保険組合連合会理事)など安定供給の観点から指摘があった。

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は情報を公表することの重要性を強調。「公表すべき情報については、その粒度や時間軸、例えば、対象期間や更新の頻度などについて、ある程度標準化を図り、企業間の適正な比較が可能となるよう留意いただきたい」と要望した。

支払側の松本委員は、供給実績の評価項目として、出荷量の増加・減少した品目割合や、出荷停止等の他社品に対する増産などが含まれていることについて、「企業にとっては、市場シェアの拡大による増収というメリットがあることを踏まえると、適切な評価方法を検討すべき」との考えを示した。

◎企業変化発言の業界に診療側・森委員「評価指標は“求められて当たり前”」と釘

業界代表の石牟禮武志専門委員(塩野義製薬渉外部長)は、「まず、早期に企業行動の変化を促すためにも、試行的に評価可能な指標から導入していただき、指標や薬価制度における影響とともに、企業の変化についても検証しながら進めていただきたい」と述べた。

これに対し、診療側の森委員が「指標を用いた評価を考えれば、評価されるよう取り組むわけではないですよね。ある意味ではここで上がる評価の指標というのは求められて“当たり前”のことだと思う」と釘を刺した。そのうえで、「改めて企業の変化を(専門委員が)発言されたが、改めてその評価で何が求められているのか、意識して取り組んでいただくことで、長期的な安定供給に結びつくものだと考える」と述べた。

◎少量多品目構造解消へ 初収載の内用薬“10品目超、0.4掛け”ルール 厳格化も検討

この日は、ジェネリックの構造的課題である“少量多品目”についても議論した。安定供給に向けて、新規収載品の品目数や既収載品の品目数削減などを視野に入れる。厚労省は、収載品目が多いほど、収載直後であっても平均乖離率が大きいとのデータを提示。現行ルールでは内用薬で10品目超の場合は初収載の薬価が0.4掛けとなることを提示し、品目数について議論した。

診療側の長島委員は、「大きな市場シェアが見込める品目に狙いを定めて参入し、低価格で一定程度販売した後に売り抜けるようなビジネスモデルが現在も通用するのであれば、参入時の薬価でも何らかのメッセージを示すことが必要」との考えを表明。10社超が参入する品目の初収載の薬価を引下げてきた経緯を踏まえ、「今回もその方向性を継続することも考えられる」と述べた。

支払側の松本委員は、「現行は10品目超となっている品目数の要件と、先発品の4掛けとなっている収載時の算定方法について、より厳格化する余地があるではないか。具体的な対応については直近の薬価調査の結果を踏まえて判断したい」と述べた。


このほか、診療側の長島委員は、「短期間での市場撤退はもちろんのこと、撤退しないまでも、製品をほとんど市場に供給していない企業もあると聞いている。個々の企業の出荷量をきちんとフォローし、企業評価に反映させていくことも重要ではないか」と表明。診療側の森委員は、「いわゆる安売りして逃げてしまう企業への対応は重要な視点だ。また、安定供給に配慮した上で、生産品目を減らし、例えば余剰生産能力を高めることや、そうしたことから不足品の生産を行った企業の評価を行うことも評価の視点と考える」と述べた。



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