スズケン・浅野社長 患者起点のデマンドチェーン発想をデジタルで構築 新たな事業利益基盤を構築へ
公開日時 2023/12/06 04:52
スズケンの浅野茂代表取締役社長は12月5日、東京都内で開催した「スズケン デジタルヘルスフォーラム」で挨拶し、医薬品卸として培った経験を活かしながら「デジタル卸」に発想を転換すると明言した。具体的には、従来の川上から川下の流れをデジタル化することで従来の“サプライチェーン”発想で生産性向上を促すスマートロジスティクスを推進する。一方で、医療従事者や患者、地域軸を起点に情報やサービスを川下から川上の製薬企業等にフィードバックする“デマンドチェーン”の発想を構築し、新たな事業利益基盤の構築を目指す考えを強調した。浅野社長は、「メーカーとデジタルヘルスを提供する企業をつないでいく。そして社会のためになる。そしてスズケングループが変わっていく。これが我々の世界観だ」と意気込んだ。
この日のデジタルヘルスフォーラムには、スズケングループが描くデジタルプラットフォーム構想に共感し、業務提携したヘルステック企業等12社の社長を含む代表が出席し、各社の取り組みとグループ提携への期待などを披露した。
浅野社長は冒頭のプレゼンで、「中長期にかけて新しいスズケングループがどう変わっていけるのかを考えると、グループの経営資源だけで良いかという疑問がずっとあった」と指摘。「長年かけて築いた顧客接点や経営資源と、パートナー企業が持つ素晴らしいアイディアや情熱をミックスして日本に新しいヘルスケアのデジタルの世界を作っていきたいと考えた」と振り返った。その上で、スズケングループが生み出す「3つの鼓動」として、①地域住民の健康を守る、②需要調整機能で社会の無駄を削減する、③未来価値の創生できる人材を育成する-を掲げた。
◎廃棄ロス削減や配送効率の向上を目的とした「スマートロジスティクス」
このうち廃棄ロス削減や配送効率の向上を目的とした「スマートロジスティクス」については、納品予定アプリや発注提案アプリの導入をすでに進めているところ。医薬品の安定供給が社会問題化する中で、デジタル情報を活用した在庫状況や納品情報を顧客に可視化することで、業務の省力化を図るほか、急配や頻回配送などのコスト改善などの課題解決に期待を寄せた。一方で、病院内における在庫管理を自動化することで、管理業務を効率化できるだけでなく、医療機関内における医薬品等の消費データを取得することで、その情報を製薬企業にフィードバックし、生産調整や生産計画に役立てることができるなど、“デマンドチェーン”発想に基づく新たな事業利益基盤の構築を目指すことができとの発表もあった。
◎執行役員の比木氏 スズケングループのデジタルプラットフォームは“オンタイム型“
24年1月1日付でデジタルプラットフォーム事業本部長に就任するスズケン執行役員の比木武氏(Welby代表取締役)は、同社が目指すデジタルプラットフォームのポジショニングについて、エムスリーのビジネスモデルを引き合いに説明した。比木氏は、エムスリーは「医師が診療の合間に臨床目的で利用する“オフタイム”型」と分析したのに対し、スズケングループのデジタルプラットフォームは、「医師が診療中に臨床目的および業務支援等で利用する“オンタイム型”」と表現し、「基本的には住み分けだと思っている」と述べた。
さらにオンタイム型の中でも、臨床目的で利用するパートナー企業のソリューションとして、UbieのAI問診や中部電力の「MeDaCa」、フロンティア・フィールドの「日病モバイル」、エンブレースの「メディカルケアステーション」などをあげた。一方でオンタイム型で業務支援のパートナー企業のソリューションについて、スマートショッピングの「スマートマット」やスズケンの「Cubixx」などをあげた。スマートロジスティクス構想について比木氏は、「デマンドチェーンへの拡大をしっかり果たすために各社と連携しているところ。健康創造事業体として、このバリューチェーンをしっかり拡大するというのが中期戦略だ」と強調した。
◎コラボポータル 「触媒」としての提供で連携ツールの利用促進と医療DX化を推進
このほか連携企業のソリューションをつなぐ「コラボポータル」に触れ、「医療者向けのソリューションとしての連携ツールの“触媒”として提供することで、各社のサービスの更なる利用促進と、ツールを使う医療者等の煩雑さを無くすことで医療のDX化を推進していきたい。コラボポータルを中心に各社と新しいソリューションを創りたい」と語った。