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【中医協総会 12月8日 議事要旨 令和6年度診療報酬改定に関する基本的な見解(各号意見)について】

公開日時 2023/12/11 06:00
中医協総会は12月8日、令和6年度診療報酬改定に関する基本的な見解(各号意見)について表明した。本誌は1号側委員(支払側)、2号側委員(診療側)の各発言について議事要旨として公開する。

小塩会長:令和6年度診療報酬改定に関する基本的な見解について議題といたします。12月1日の総会で医療経済実態調査の結果に対して、1号側委員(支払側)、2号側委員(診療側)それぞれの見解をいただきました。本日は各号側委員それぞれから次期診療報酬改定に関する見解が提出されております。短期間にまとめていただき本当にありがとうございました。本日はその資料の説明をお願いしたいと思います。最初に1号側委員から資料の説明をお願いいたします。

松本委員:それでは1号側委員を代表いたしまして健保連の松本から発表させていただきます。

令和6年度診療報酬改定に関する1号側の意見ということで、(お手元に)署名が配布されておりますけども、構成といたしましては、1ページ目の3つの段落については、過去、現在、今後に関する基本認識を示しております。

ポイントだけ申し上げます。社会活動が活性化してデフレ脱却に向けた兆しが見え始めている時期になっているということ。一方で医療費は一貫して増加基調にあり、令和4年度は過去最高の46兆円規模にまで拡大しているということ。さらには高齢化の進展に伴い医療費はますます増加する見込みであるということ。また最後に、前回導入されたリフィル処方箋の仕組みについては、まだまだ達成半ばであるということでございます。

次のページに移っていただきまして、一つ目の段落は、前回発表がございました医療経済実態調査結果の受け止めでございます。

令和4年度における一般病院の経営状況は損益差額が全体で1.4%の黒字となったということ。また一般診療所においては、黒字は拡大して損益差額が9.7%黒字となっているということ。歯科診療所と保険薬局は引き続き黒字基調であったということ。そして資産や負債の状況に目を向けると一般病院、一般診療所、歯科診療所、保険薬局のいずれも長期借入金を初めとする固定負債が減少して資本が増加しているという状況から、一般診療を中心に医療機関、薬局の経営も含めて堅調と言えるというふうに考えております。

次の段落でございます。特に重要と考える課題としていくつか挙げております。まずは再三述べておりますけども、医療保険財政が限界に近い状態にあるということ。さらには、保険の持続可能性を確保するためにも、医療の質を担保しつつ、効率化や適正化の取り組みが極めて重要であるということ。さらには医療機能の分化強化と連携を加速させることが必要であること。そして今回、医療、介護、障害福祉サービスの同時報酬改定を通じて、各制度において、各施設、各職種それぞれが機能を強化した上で、ICTを活用して円滑な連携を図らなければサービスの担い手が不足する中で、高齢化による増大する需要を賄うことは到底できないという問題意識でございます。

最後に我々の主張をまとめております。令和6年度診療報酬改定においては、賃金物価の動向を考慮しつつも、高止まりする医療費の自然増により、医療保険制度の持続可能性に懸念があること。限界にある国民負担の状況、診療所と病院の経営状況の違い、職種別の給与水準の格差などを総合的に勘案する必要がある。

したがって、患者の負担増や保険料の上昇に直結する安易な診療報酬の引き上げを行う環境にはない。一方で、令和6年4月からの働き方改革を踏まえ、救急も含め24時間対応可能な地域医療体制の確保に向けて、多様な医療人材の連携を促進するとともに、看護職員等の医療従事者の処遇改善は重要事項である。

まずは診療報酬と補助金、交付金との役割分担の整理検証を行い、その結果を踏まえた大胆な配分見直しにより実現を図るなど、真に有効で、メリハリの効いた診療報酬改定が不可欠である。

また、薬価・材料価格改定については、革新的新薬とイノベーションへの十分な配慮、後発医薬品等の安定供給の確保を着実に進めるとともに、市場実勢価格の低下に伴う引き下げ分を国民に還元にすべきである。以上であります。

小塩会長:ありがとうございました。それでは続きまして、2号側委員から資料の説明をお願いいたします。

長島委員:2号側委員7名を代表して、長島より2号側委員の見解を読み上げさせていただきます。

診療報酬は全国一律の公定価格として、厚生労働大臣により定められ、国民にとって安全で安心できる医療を提供するための原資であることはもとより、医学の進歩、高度化に対応するための設備投資、患者ニーズの多様化に応える医療従事者の雇用の確保および拡充に不可欠なコストを賄っている。したがって、診療報酬は原則2年ごとに改定されることから、その間の賃金や物価の動向、適切に反映するものでなければならない。

また、これまでの改定に期待される役割に加え、令和6年度の診療報酬改定においては、政府の重要政策とされる医療従事者の賃上げおよび現下の食材料費、光熱費を初めとする物価高騰という極めて異例の状況に対応できる改定でなければならない。

医療の質を高めつつ、賃上げの好循環を全国の医療従事者に行き渡らせるためには、適切な財源が必要であり、令和6年度の診療報酬改定では従来以上の大幅なプラス改定が求められている。

医療機関薬局は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前と比較しても、厳しい経営を強いられている。新型コロナウイルス感染症(以下コロナという)に関する診療報酬上の特例や補助金、掛かり増し費用等の影響を排除した。病院、診療所の損益率を見ると、コロナ後3年間の平均はコロナ前の平均を下回っている。コロナ禍における診療報酬上の特例やコロナ補助金は一過性の収益であり、感染対策経費の増加、追加的人材の確保などの診療体制の整備に活用されており、また、全ての医療機関の収益となっていないものであるため、令和6年度診療報酬改定の議論は、これらの影響を除いた上で行うべきである。

令和4年度の損益率、コロナ関係補助金を除く分布を見ると、一般病院の7割弱、一般診療所の約3割が赤字であった。物価高騰、賃金上昇が続く中、現状、コロナ特例は大幅に縮小されてきており、さらに今後特例が廃止となって収益が下がることがあれば、赤字施設の割合がさらに増え、地域の医療提供体制が維持できなくなる。そもそも、経営基盤が脆弱な診療所では倒産が相次ぐ恐れがある。

費用については、病院、診療所ともに上昇し、特に物価高騰を反映して、水道、光熱費の伸びが顕著であった。また、紹介手数料も大きく上昇し、これは医療業界における人材確保の厳しさの表れである。令和4年度診療報酬改定を踏まえた個人立歯科診療所の直近2事業年の医業収益はマイナス0.9%と落ち込んだ。地域医療担う歯科医療機関の約8割が個人立歯科診療所であり、その経営は依然として回復傾向になく厳しい状況が続いている。

保険薬局の直近の損益状況については、コロナの感染拡大の影響から回復しつつある一方、物価高騰や賃金上昇への対応のため、損益差額ともに対前年比は減少傾向にあり、引き続き厳しい経営状況が続いている。

医療における賃上げが人材確保を支え、経済の好循環、地方再生をも生み出す。この3年間、多くの医療機関等では、不眠不休で未知のウイルスに立ち向かい、時間外に発熱外来やワクチン接種、自宅宿泊療養者の健康観察などになってきた。その際の補助金や診療報酬上の特例による一時的な収入増は、コロナ流行時にしっかり対応してきた証でもある。したがって、コロナ禍という特殊な状況で生まれたストックは、賃上げの原資となるものではなく、賃上げはフローで行うべきである。

令和3年10月の岸田内閣発足時の政府の方針に基づいて行われた令和4年度診療報酬改定では、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、収入を3%引き上げるための処遇改善の仕組みが導入された。しかし、民間主要企業の春季賃上げ要求妥結状況によると、令和4年には、令和3年の1.86%から2.20%に上り、さらに令和5年には3.60%に上昇している中で、医療介護分野の賃金上昇は一部に限定されたため、1%台にとどまり、他産業に大きく後れを取っている。

他産業の賃上げが進む中、医療従事者の賃金を引き上げ、サービスを提供するための人材を確保していくための原資を確実に担保することは、医療従事者が他産業へ流出し、人材確保が厳しくなっている現状も踏まえれば急務と言える。

同時に改定により、医療従事者の賃金が引き上げられることで、雇用の拡大、地方創生さらには経済の好循環を生み出すことにも繋がることから、医療機関等がそれぞれの状況に応じて幅広くかつ恒久的に賃金を引き上げることができるだけの原資を確保するため、十分な手当がなされる必要があることは論を待たない。

食材料費、光熱費等の物価高騰への対応。今般の食材料費、光熱費等の物価高騰は、国民のみならず医療機関にも大きな影響を及ぼしている。特に入院中の食事療養費は約30年間も据え置かれ、もはや経営努力のみでは良質な食事の提供が極めて困難な状況である。実際、学校給食委託単価は令和3年時点で既に公定価格の単価3食分で1920円を上回る状況で、令和4年にはさらにその差が広がっている。

入院患者への質の高い食事提供ができないことは患者にとって不幸なことであり、良質な食事の提供継続していくためにも、対応は待ったなしの状況となっている。

医療従事者の負担軽減、医師等の働き方の改革の推進。令和6年4月から始まる医師等の働き方改革に関しては医師の健康確保、地域医療の継続性、医療医学の質の維持向上といった重要課題にしっかり取り組むことが重要である。そのためには、これまでに働き方改革を目的として設定された地域医療体制確保加算や医師から他の医療関係職種のタスクシフト・シェアに活用された医師事務作業補助体制加算など、多くの診療報酬項目により医師等の働き方改革の推進、医療従事者の負担軽減が図られてきた。

これらの診療報酬項目はまさにこれから始まる医師等の働き方改革の確実な実行において、その効果を発揮するものであり、令和6年度診療報酬改定においても、この歩みを着実に継続し、さらに加速させていくため、現場に有効に活用されるような見直しと評価の継続が求められるものである。

ICT活用や医療の高度化は、政府の成長戦略として必須。医療の高度化やAIやICT等と言った技術の医療への活用は、医療の質の向上だけでなく、医療現場で働く医療従事者の負担軽減を図り、更なる効率化に繋がることが期待されている。これはすなわち、患者さん自身にとって直接感じられるサービスの向上となるものであり、診療報酬改定ごとに不断に医療技術として取り入れることが必要で、歩みを止めてはならない。

さらに、ICTを活用して広くインフラを整備することに係る経費については、政府の成長戦略として重要な一角を担っているところであり、その発展を促進すべきである。

薬価改定財源等も合わせ異例の診療報酬改定を乗り切る。ここまで述べてきたように、今回の診療報酬改定は異例の状況を乗り切るため、非常に重要な改定である。その中で薬剤料には、薬価制度発足時に十分な技術評価ができなかった不足分に相当する潜在的技術料も含まれている。

しかし、平成26年度で薬価改定財源が消費税対応に活用され、その後、薬価改定財源は、診療報酬本体に活用されていないものの、診療報酬と薬価は不可分一体の関係にある。

令和6年度の診療報酬改定では、国民の安心安全を守るために、医療の質を向上させる取り組みを進める中で、ここ何年かの改定とは明らかに異なる状況である物価高騰と賃金上昇の影響に加え、医療DX対応に向けた環境整備の必要性もあることから、薬価改定により生じる財源を診療報酬に充当するなど、十分な財源を確保し、この局面を乗り越え、乗り切るべきである。以上です。

小塩会長:どうもありがとうございました。ここで前回の令和4年度改定を振りかえてみます。まず医療経済実態調査に対する各号側の見解、それから次期診療報酬改定に関する各号側のご見解、それから薬価調査の結果等を踏まえまして、公益委員の方で、厚生労働大臣に対する意見書の素案を作成いたしました。

その上で、総会でそれを議論していただき、意見書を取りまとめて、中医協から厚生労働大臣への意見として提出いたしました。

今回の令和6年度改定でも、同様に中医協の意見を取りまとめて、厚生労働大臣に提出したいと思いますが、それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは本件につきましても、そのように進めさせていただきます。

本日の議題は以上です。次回の日程につきましては追って事務局より連絡いたします。それでは本日の総会はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。


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