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中医協総会 エレビジスの議論見合わせ 安全性の薬事面からの再検討求める声 致死的急性肝不全報告で

公開日時 2025/06/19 05:30
中医協総会は6月18日、中外製薬の再生医療等製品・エレビジス点滴静注の安全性情報についてさらなる情報収集した上で、医療保険上の取扱いについて議論することを了承した。国内で条件・期限付き承認を受けた効能・効果とは異なるが、歩行の不能な患者で致死的な急性肝不全が海外で2例報告されたことを受けたもの。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「薬事で専門的に再検討していただくことも含め、厚労省としてしっかり情報収集・整理」する必要性を指摘した。厚労省医薬局の高江慎一医療機器審査管理課長は、「医薬局の立場としては条件・期限付き承認の安全性が確認されたことは揺るがないと思っている」と応じた。これに対し、診療側の長島委員が「まだ十分な情報の収集や分析もできていない」として合理的な説明を行うよう、釘を刺す場面もあった。

エレビジス点滴静注をめぐっては、エレビジス点滴静注をめぐっては、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを適応症として、5月13 日に条件・期限付き承認を受けた。歩行可能であることも条件となっている。高額薬剤となる可能性があることから、翌14日の中医協総会で、エレビジス点滴静注の保険適用に向けて議論が開始されていた。一方で、製造販売業者であるスイス・ロシュ社と中外製薬は6月16日、海外で歩行不能な患者で致死的な経過を辿った急性肝不全が2例報告されたことを公表した。国内で実施中の歩行不能な患者を対象とした臨床試験も投与を中断する。ただ、承認されている歩行可能な患者における本品のベネフィット・リスクプロファイルに変更はないとしている。

厚労省保険局医療課は、「安全性情報についての評価は現時点で明らかでない」として、今後の対応として、更なる安全性情報を収集したうえで、議論を行うことを中医協に諮った。

◎診療側・長島委員「承認された使用方法や対象患者など、薬事で専門的議論を」

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、条件・期限付き承認が有効性は推定であるものの、安全性は認められる場合に認められることを引き合いに、「本制度の大前提となる安全性が揺らいでいることから、保険適応に係る議論はできなくなったと理解している」と指摘。「承認された使用方法や対象患者の設定なども含め、薬事で専門的に再検討していただくことも含め、厚生労働省としてしっかり情報収集・整理した上で、丁寧で慎重な検討が必要と考える」と述べた。

◎診療側・森委員「安全性確認は米国のRWDも踏まえた慎重な検討を」

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)も、「条件・期限付き承認を受けた再生医療等製品については安全性が確認されていることが大前提。今回の報道で一度止めて、その前提が崩れたのか、崩れていないのか、しっかりと薬事で確認した上で改めて医療保険上の取り扱いについて判断すべき」と指摘。「安全性を確認する上では米国では2023年に本承認となっていますので、その後のリアルワールドでの状況も踏まえて慎重に検討いただきたい」と強調した。

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は今回の死亡例の報告を受け、「議論の前提そのものが変わったと感じている」と指摘。「保険給付する限りは最低限、安全性を担保が不可欠。メーカーにおかれましては、速やかに安全性の確認をお願いしたい」と述べた。

◎厚労省・高江機器課長「条件・期限付き承認の安全性が確認されたことは揺るがない」

厚労省医薬局の高江慎一医療機器審査管理課長は、「医薬局の立場としては条件・期限付き承認の安全性が確認されたというところは揺るがないものと思っている」との見解を表明。そのうえで、「再生医療等製品について審査時、治験時に予期しなかったものが市販後に出てくる時には、当然安全性情報を集めた上で必要な対策を取ることが前提。早急に情報の方を収集した上で、必要なリスクマネジメントについて、企業から情報収集した上で、対応を検討した上で、中医協に報告させていただければ」と述べた。

◎診療側・長島委員「これから丁寧で慎重に十分な情報を収集、専門的議論を」

これに対し、診療側の長島委員は、「まだ十分な情報の収集や分析もできていないと考えている。薬事承認された時点では得られなかった、新しい副作用情報が追加されたと考えている。したがって、これから丁寧に、慎重に十分な情報を収集し、専門的な議論を十分行って、安全性が揺るがないことを合理的に説明できることが重要だ」と釘を刺した。

なお、この日は薬価専門部会ではエレビジスの保険適用をめぐる議論が予定されていたが、前日に急遽中止となっていた。


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