アインHD元常務に懲役10月求刑 弁護側は無罪主張 敷地内薬局巡る競売妨害公判
公開日時 2024/02/28 04:51
KKR札幌医療センター(札幌市)の敷地内薬局の整備入札を巡って不正を行ったとして公契約関係競売等妨害の罪に問われた、アインホールディングス(HD)元常務取締役の酒井雅人被告ら3人の論告求刑公判が2月27日、札幌地裁(井下田英樹裁判長)であり、検察側は酒井被告と子会社アインファーマシーズ元取締役の新山典義被告に懲役10月、センター元事務部長の藤井浩之被告に懲役1年を求刑して結審した。酒井、新山両被告の弁護人は「公募型プロポーザル方式の企画競争は刑法罪上の『入札』に当たらない」として無罪を主張した。判決は4月18日に言い渡される予定。
◎検察側論告 酒井被告は「差し替えの認識明らか」
論告で検察側は、国家公務員共済組合連合会が運営する同センターは事業に公共性があり、藤井被告がみなし公務員だったことなどから、「公の入札実施主体であることは明らか」と主張。また、公募型プロポーザル方式の企画競争は「契約締結を前提として競争性、公平性があり、競争入札にあたる」などとして、公契約関係競売等妨害罪が成立すると訴えた。
その上で、起訴内容を唯一否認している酒井被告に対しては、社内チャットのやりとりやセンターへのプレゼンを担う立場だったことなどを理由に「金額修正の差し替えを認識していたのは明らかであり、故意・共謀が認められる」と強調。これまでの供述は「不合理であり到底信用できない」とし、「自社の利益を確保しようとした身勝手な犯行」と断じた。
◎弁護側 再提出の認識「推認できない」 「故意・共謀の証明は不十分」
最終弁論で酒井、新山両被告の弁護人は、刑法の解釈や有識者の見解などを例に「センターの企画競争は随意契約の一種であり、刑法上の『公の入札』には当たらない」と主張。酒井被告については、全国の複数の案件を抱えていたことや、多忙を極める中で社内チャットの内容一つひとつまで承知していなかったことなどを理由に「金額を差し替える再提出を認識していたとの推認はできない。故意・共謀があったとする検察側の証明は不十分だ」として、無罪判決を求めた。
最終意見陳述で酒井被告は「この度の件で業界関係者ならびに多くの皆様方にご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」と述べた。
起訴状によると、3人は共謀して、2020年12月、センターの敷地内薬局を運営する事業者選定の公募を巡り、アインHDに優先交渉権を得させようと考え、公正な入札を妨害したとされる。元事務部長だった藤井被告が、当時北海道支店長だった新山被告に他社の提案内容を漏らし、当初の企画提案書を差し替えて再提出させた。酒井被告はアインHD開発統括本部長として事業を統括する立場にあった。
これまでの公判で、酒井被告は当初起訴内容を認めていたが、公判途中から「共謀とされる部分は私の記憶や経験に基づいたものではなく、認めがたい」として否認に転じていた。また、起訴内容を一貫して認めている新山被告とともに法解釈を巡って争う姿勢を示していた。