改正難病法 成立から1年の認知度 指定難病治療中の患者は5割超 難病指定医・協力難病指定医で2割に課題
公開日時 2024/03/27 04:50
改正難病法と難病医療費助成制度の浸透度を調べる目的で、指定難病を治療中の患者や難病指定医等にアンケート調査を行ったところ、5割超の患者と約2割の医師が改正難病法の成立を「今まで見たり聞いたりしたことがなかった」と回答していることが分かった。調査は日本ベーリンガーインゲルハイム(日本BI)とQLifeが実施したもの。日本BIは、「患者が難病助成制度を知る助けを進めることで、経済的な不安なく治療に専念できる環境づくりを進めていきたい」とコメントしている。
改正難病法は、医療費助成の開始を「申請時点」から「重症化時点」にまで遡ることなどを盛り込んで2022年12月に成立し、24年4月に完全施行する。調査は、改正法成立から約1年が経過したことから、医療現場や患者への制度の浸透度を調べようと実施され、間質性肺疾患に関連する指定難病と診断され治療を受けている患者500人と、こうした患者を診療している難病指定医・協力難病指定医200人を対象に、23年10月にインターネットを通じて行われた。
患者に対する調査結果によると、改正難病法の成立について認知していた人は、難病医療費助成制度の利用者で43.9%、非利用者では44.4%にとどまり、「今まで見たり聞いたりしたことがなかった」と回答した人が半数(利用患者:56%、非利用患者55.6%)を超えた。重症と診断された時点に遡って医療費助成を受けられることや、一部の指定難病で診断基準の見直しが進められていることについても、約7割の患者が認知していなかった。
一方医師側も、24%が改正難病法の成立を認知していなかったほか、医療費助成の時期の見直しは24%、診断基準の見直しについても32.5%が「今まで見たり聞いたりしていない」と回答し、法や制度の変更点が十分認知されていない状況が明らかになった。
◎制度を必ず紹介する医師は約3割 患者団体「主治医は確定診断時に情報提供を」
難病医療費助成を患者に情報提供しているかどうかについては、約9割の医師が行っていると回答したものの、「重症度に関わらず指定難病の患者には必ず紹介している」医師は26%にとどまっていることも明らかになった。最多は「要件を満たす可能性がある患者に紹介する」(52%)だった。これに対し、一般社団法人全国膠原病友の会の森幸子代表理事は、「体調が悪い時期に患者自ら情報収集をするのは難しい上、患者は診断時から将来不安が大きい。主治医にはぜひ確定診断がついたタイミングで情報提供をしてほしい。一方で医師も忙しいことから、難病支援センターの相談窓口を記載したカードを配布するなど、医師・患者双方に役立つツールの普及も必要ではないか」とコメントしている。
調査ではこのほか、難病医療費助成の申請では、多くの患者が申請書類にかかる費用の軽減や、受給者証の更新手続き頻度の低減などの改善を求めていることや、医師側も助成対象の条件の整備や軽症患者への助成などに改善点を感じていることが明らかになった。
◎日本BI「自治体、医療者等と助成制度利用の環境を整えていく必要がある」
調査した日本BIは、「調査対象となった患者が抱える間質性肺疾患は早期治療が重要で、治療費の自己負担が大きい。国や自治体、医療者などと一緒に助成制度利用の環境を整えていく必要がある」と指摘。「これまでにも医療費について相談できるコールセンターの設置や資材を通して情報提供してきたが、今後一層サービスの拡充に努め、患者が安心して治療に専念できる環境づくりを支援していきたい」とコメントしている。