富士フイルムHD・中計発表 バイオCDMOに積極投資でグローバル競争に打ち勝つ 30年度売上7000億円
公開日時 2024/04/18 04:50
富士フイルムホールディングスは4月17日、2030年度までの中期経営計画「VISION2030」を発表し、バイオCDMOへの積極的な投資を進め、30年度に売上高7000億円を目指す方針を示した。バイオCDMOは世界的にも成長市場だが、海外に生産を依存している現状がある。富士フイルムの飯田年久ライフサイエンス戦略本部長兼バイオCDMO事業部長は同日都内で開いた会見で、「豊富な供給能力がなくては、安心して製造委託をしてもらえない。潤沢な製造力と高い生産性を兼ね備え、パイプラインが成長した場合でも応えられることが絶対条件だ」と述べ、スイス・ロンザや韓国・サムスン・バイオロジクスといった競合企業を念頭にグローバル競争にも打ち勝つ意欲を示した。
中計では、バイオCDMOや半導体材料などの成長領域に26年度までの3年間で総額1.6兆円を投資すると表明。バイオCDMO事業単独の収益面では、設備投資は24年度をピークに徐々に減少し、新規設備の稼働による収益拡大で27年度にはフリーキャッシュフローをプラスに転換。生産性拡大による収益刈り取りを進め、最終的に30年度の売上高7000億円を目指すとした。バイオCDMO事業を含むヘルスケアセグメントでは、24年度に売上高1兆100億円・営業利益1120億円、26年度に売上高1兆2000億円・営業利益1400億円、30年度に営業利益率約20%―と掲げた。
◎樋口CFO「ADCや細胞・遺伝子治療薬への対応欠かせない」
バイオCDMO事業を巡る環境は、製薬企業の積極的な開発投資も背景に抗体医薬品市場では年率8%の成長が見込まれると説明。樋口昌之取締役・CFOは「競争が加速する中、潤沢な供給能力と高い生産性のみならず、豊富なトラックレコードと信頼を得ることの重要性が増している」と述べ、加えて「抗体薬物複合体(ADC)や、細胞・遺伝子治療薬など次世代医薬品への対応も欠かせない」と強調した。
その上で、事業戦略として、製薬企業のパイプラインをアーリー段階から商業生産まで一貫して支えるEnd to Endのサービス提供や、各種レギュラトリーや需要変動への迅速な対応などを通じて市場の信頼を得ていく方針を表明。すでに発表している米・ノースカロライナ拠点への12億ドルの新たな追加投資も合わせて、2万リットルの大型タンクを計36基まで増設、抗体医薬品の製造能力を75万リットル強まで拡張する考えを示した。