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日医・松本会長 費用対効果を保険収載の可否に用いるのは「適切でない」 中間年改定の対象範囲検討を

公開日時 2024/04/18 04:53
日本医師会の松本吉郎会長は4月18日の定例会見で、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会の議論を踏まえ、「医学的に安全性・有効性が確認されたものについては保険収載を行うというのが国民皆保険制度の原則であり、費用対効果評価を保険収載の可否に用いるのは適切ではない」と主張した。また、2025年度薬価制度改革の議論を控える中で、「中間年改定においては少し対象品目を絞るなど、通常の改定年とは少し違う対応がやはり必要だと思っている。その主張は今も変わっていない」とも述べた。

財務省は4月16日の財政制度等審議会財政制度分科会で、「費用対効果評価の結果を保険償還の可否の判断にも用いることも検討すべき」と主張していた。日本医師会の松本会長は、安全性・有効性が確認された医薬品が速やかに保険収載されるのが原則だとしたうえで、「その前の保険収載の可否に使えば、審査の時間が相当かかると予想される」と指摘した。また、費用対効果評価を判断するためには、「単価だけでなく、予想される患者数を掛け合わせた総薬剤費の話になる。患者数も見極めたうえでの議論になると考えている。そういう意味でも保険収載の可否判断に用いるのは難しいのではないか」と指摘。「費用対効果評価はあくまで保険収載された医薬品の価格調整を行うもの」と強調した。

◎OTC議論「生活習慣病の薬剤の手法はその一部に過ぎない。幅広い視点を」

また、財務省はスイッチOTC化を推進する方向性を打ち出したほか、OTC類似薬についての薬剤自己負担のあり方も検討すべきと主張している。松本会長は、「診療は医師が日常生活を含めた患者の全体の状態をよく見て、しっかりと医学管理を行うことが必要であり、特に生活習慣病の薬剤の手法はその一部に過ぎない。数字だけを取り出して論じるのではなくて、やはり幅広い視点を持って議論を行う必要があると考えている」と述べた。

◎中間年改定 「少し対象品目を絞るなど改定年とは異なる対応を」

2025年度薬価制度改革については財務省が全てのルールを適用する「完全実施」を求めているが、「中間年改定と2年ごとの診療報酬の改定に合わせた改定では少し捉え方が違うと思っている」と表明。これまで中間年改定の範囲は、「平均乖離率の0.625倍超」とされてきたが、「中間年改定においては少し対象品目を絞るなど、通常の改定年とは少し違う対応がやはり必要だと思っている。その主張は今も変わっていない」と述べた。

◎長期収載品の選定療養「制度導入時の混乱」を危惧 安定供給へ補助金や税制活用も

医薬品の供給不安が続く中で、10月には長期収載品に対する選定療養が導入される。松本会長は、「制度導入時の混乱が生じることが予測されるほか、後発医薬品の支給状態がさらに悪化することが懸念される。まずは10月以降の動向をしっかり踏まえることが重要だ」と表明した。

原薬を海外からの輸入に依存する中で、「入手困難や価格高騰といった状況を回避するためにも、国産への回帰や、それが実現するまでは医薬品の原材料に関わるサプライチェーンの多様化等の対応も必要」と強調。経済安全保障推進法では、抗菌性物質製剤が特定重要物質に指定されていることにも触れ、「咳止めなどの日常診療で使用する薬に対しましても、安定供給に向けた支援を行うべきだと考えている。今後これらの取り組みを推進するためにも、国には補助金や税制を活用した支援の検討をお願いしたい」と要望した。

◎社会保障費の伸びを「高齢者の増加分に抑制」求める財務省に「デフレ下の遺物」と切り捨て

財務省が社会保障関係費の実質的な増加を「高齢化による増加分に相当する伸びに収めることを目指す」としたことについては、「デフレ下の遺物」と切り捨てた。松本会長は、「歳出の目安を示すということは、人件費に上限を設けるようなものであり、政府が重要政策として位置付ける賃上げを阻むものであると言っても過言ではない」と指摘した。

政府が“コストカット型経済からの完全脱却”を掲げる中で、「現役世代の手取りも増やしながら、現在の保険料率のままで保険収入も増え、社会保障はその中で十分行うことができている」と指摘した。国民医療費は高齢化の伸びよりも抑制できていると説明。国民医療費が過去の推計値を大きく下回っているとして、「インフレ下のコストカット型経済を踏襲し、国民に過度な不安を煽るべきではない」と述べた。

◎地域別診療報酬「人口分布の偏りを医療で調整させる極めて筋の悪い提案」

また、医師の偏在対策を是正する観点から、診療報酬に地域別単価を導入することが議論されたことに触れ、「我が国では国民皆保険である公的医療保険制度の下、誰もがどこでも一定の自己負担で適切な診療を受けられることを基本的な理念とし、診療報酬について、被保険者間の公平を期す観点から、全国一律の点数が公定価格として設定されている。この制度を今後も維持していくことが大切だと考えている」と表明。医療機関の分布は各地域の人口に応じているとして、「診療所の過不足の状況に応じて診療報酬を調整する仕組みは、我が国の人口分布の偏りに起因するものを、あたかも医療で調整させるような極めて筋の悪い提案だ。断じて受け入れられるものではない」と語気を強めた。


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