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キッセイ薬品 23年度に営業利益の黒字化達成 ベオーバや22年度以降の新薬4製品がけん引

公開日時 2024/05/08 04:51
キッセイ薬品は5月7日、2023年度(24年3月期)に営業利益の黒字化を達成したと発表した。23年度連結業績は、売上高は前年度比12.0%増の755億7900万円と過去最高を記録。営業利益は前年度の11億円強の赤字から、23年度は40億1700万円の黒字とした。主力の過活動膀胱治療薬・ベオーバが堅調に伸長したほか、22年度以降に発売したカログラ、タブネオス、タバリス、コルスバ――の新薬4製品が業績をけん引。23年4月の薬価改定による6%台のマイナス影響も吸収した。同社はこの日の決算説明会で「業績は上昇基調に転じた」と報告し、24年度も増収・営業増益と予想していると説明した。

◎直近2年間の営業損失からV字回復

同社は18年度以降、営業減益が続き、21年度と22年度の2年間は営業損失を計上した。薬価改定影響に加え、当時主力だった排尿障害改善薬ユリーフの特許切れ・後発品影響や、将来の成長に向けた研究開発への積極的な投資が主な理由だった。23年度はそれまでの投資が功を奏して業績のV字回復を達成し、再び成長軌道にのせた。

◎23年度売上 ベオーバは30%増の153億円 タブネオスは約5倍増の51億円

23年度の主要製品の売上を見ると、ベオーバ錠は前年度比30.0%増の153億3500万円としたほか、▽22年5月発売の潰瘍性大腸炎治療薬・カログラ錠は118.1%増の10億9100万円、▽22年6月発売の顕微鏡的多発血管炎(MPA)・多発血管炎性肉芽腫症(GPA)治療薬・タブネオスカプセルは約5倍増の51億6100万円、▽23年4月発売の慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)治療薬・タバリス錠は8億1800万円、▽23年12月発売の透析そう痒症治療薬・コルスバ静注は7億5700万円――と22年度以降発売の新製品群も堅調に伸ばした。

このうち急拡大しているタブネオスの好調な要因について、同社は、「もともと有効性と安全性が非常に評価されていた」ということに加え、ターゲット施設での採用が進み、「順調に我々が想定する患者層に投与いただいているため」と説明した。

また、タブネオスのピーク時売上予測は、これまで27年度に90億円としていたが、24年度は前年度比35.6%増の70億円との計画を立てた。ピーク時売上予測を引き上げる可能性に関しては、まず24年度に70億円を達成することを目指すとした上で、「90億円との目標値は、(24年度の)状況を見ながら見直したりする」と述べ、ピーク時売上の引上げに含みを持たせた。

◎24年度予想 売上は9.8%増の830億円 営業利益は4.6%増の42億円

24年度の連結業績予想は、売上は9.8%増の830億円、営業利益は4.6%増の42億円とした。24年4月の薬価改定で6.7%のマイナス影響を受けたが、ベオーバや新薬4製品の更なる伸長のほか、自社創製品・リンザゴリクスの24年度上半期の欧州での発売開始によるロイヤルティ収入なども見込み、増収・営業増益を達成する計画だ。

製品別の24年度売上予想は、ベオーバは14.1%増の175億円、カログラは64.9%増の18億円、タブネオスは35.6%増の70億円、タバリスは205.5%増の25億円、コルスバは375.1%増の36億円――としている。

◎中計目標値は未達の見通し リンザゴリクスの欧州発売の遅延、研究開発投資の拡大で

一方、同社にとって24年度は、現在の5カ年の中期経営計画の最終年度にあたる。中計では24年度に売上870億円、営業利益90億円を目指すとしており、現時点では売上、営業利益とも中計目標値には未達となる見通し。同社は目標未達の理由として、▽自社創製のリンザゴリクスの海外発売の遅延、▽将来の成長に向けた研究開発投資の拡大――の2つを挙げている。

リンザゴリクスは22年6月に欧州で、当時のパートナー企業が子宮筋腫を対象疾患に承認を取得した。しかし、このパートナー企業が経営難に陥ったことからキッセイ薬品が全権益を引き継ぐとともに、海外のビジネススキームの再構築を行った。当初予定から約2年の遅延となるが、現在は英国セラメックス社が24年度上半期の欧州発売に向け準備を進めている。

研究開発投資の拡大に関しては、詳細は非開示だが、「新たな創製品のテーマの臨床試験を開始するとともに、新規開発テーマを導入する予定」だとし、24年度は研究開発費として前年度比26.7%増の120億円を投じる予定だとしている。

【23年度連結業績 (前年同期比) 24年度通期予想(前年同期比)】 
売上高755億7900万円(12.0%増) 830億円(9.8%増)
営業利益40億1700万円(-) 42億円(4.6%増)
親会社帰属純利益111億6000万円(6.0%増) 113億円(1.2%増)

【23年度の国内主要製品売上(前年同期実績) 24年度通期予想、億円】
ベオーバ 153.35(117.95) 175
ミニリンメルト他 36.62(37.03) 32
ユリーフ 20.76(23.45) 14
ピートル 52.41(56.65) 53
コルスバ 7.57(-) 36
ダルベポエチンアルファBS 40.77(43.86) 36
エポエチンアルファBS 23.36(30.55) 18
グルベス、グルファスト 38.06(40.61) 33
マリゼブ 10.73(10.59) 11
サラジェン 9.80(10.73) 8.50
タブネオス 51.61(10.29) 70
カログラ 10.91(5.00) 18
タバリス 8.18(0.21) 25
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