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製薬協・上野会長 24年度薬価制度改革による企業の行動変容を調査 費用対効果の本格活用は「断固反対」

公開日時 2024/05/24 07:00
日本製薬工業協会(製薬協)の上野裕明会長(田辺三菱製薬代表取締役)は5月23日、総会後の会見で、2024年度薬価制度改革の影響について、欧米製薬団体と合同で調査の準備を進めていることを明らかにした。今夏にも取りまとめて報告する予定。24年度薬価制度改革では、製薬業界の主張を踏まえて特許期間中の薬価が維持されるなど、イノベーション評価が拡充されたが、中医協委員からは「検証」の条件が付き、業界団体から改革影響について主体的な意思表示が求められていた。今夏に策定される骨太方針に向け、費用対効果が焦点となる中で、医薬品のアクセス阻害に懸念を示し、「断固反対だ」と強い姿勢を示した。
 
◎4月、5月の収載品目で「確実に今回の制度改革の結果が表れている」
 
24年度薬価制度改革は、製薬団体がドラッグ・ラグ/ロスを主張する中で、新薬創出等加算の見直しによる特許期間中の薬価維持や、迅速導入加算が新設された。上野会長は、「これまで以上にイノベーションが評価される制度になった」と表明。実際、改定後の4月と5月に薬価収載された品目では、有用性加算や小児加算を取得した品目が増加。加算の柔軟な運用が可能となったことから、従来よりも高い加算率を取得した品目があったほか、迅速導入加算を取得した新薬も複数あった。さらに、新薬創出等加算の対象品目となった品目も4月には約8割、5月には全品となるなど「確実に今回の制度改革の結果が表れていると認識している」と受け止めを語った。

一方で、イノベーション評価の導入に際し、中医協委員からは疑義を示す声もあがった。lこのため、24年度診療報酬改定答申書附帯意見に「ドラッグ・ラグ/ロスの解消等の医薬品開発への影響」について、「製薬業界の協力を得つつ分析・検証等を行うともに、こうした課題に対する製薬業界としての対応を踏まえながら、薬価における評価の在り方について引き続き検討する」ことが明記された。医薬品の承認や収載など形になるまでには時間がかかるとの声も製薬業界からあがるなかで、開発動向などの“行動変容”を示すことが求められていた。

◎製薬協、PhRMA、EFPIAで合同調査 今夏にも報告へ ベンチャーからヒアリングも

上野会長は、「製薬企業側が今回の薬価制度改革をどのように受け止め、個社としてどのようにビジネスに反映させているかも重要な点であると認識している」と表明。「当局と相談しながら、意識変容や行動変容について、PhRMAやEFPIAと3極合同で調査の準備を進めており、本年夏には取りまとめて報告するさせていただく予定だ」と述べた。制度改革による行動変容や意識変容を尋ね、その結果として実際の開発投資にどうつながっているか、複合的に調べる考えだ。ベンチャーからヒアリングも行う方針。

◎「投資優先度」や「予見性」で前向きな受け止めも 常任理事16社対象の予備調査で

調査に先立ち、常任理事16社を対象に予備調査を実施。薬価制度改革の受け止めを尋ねたところ、「各社とも今回の制度改革について前向きに捉えていることが確認できた。日本における今後の新薬開発や投資についても、全体としてポジティブな意見が多く見られた」と説明。「日本への投資優先度を上げる可能性がある」、「予見性が上がった」、「(予見性が)やや上がった」との回答が半数以上の企業から寄せられたことを紹介した。

また、「薬価上の措置が行われることにより、日本でのビジネスの予見性が高まる、あるいは日本での新薬開発を行う意思決定をする上でポジティブに影響を及ぼす」、「日本国内での創薬開発や投資に対し、より前向きに検討できる環境が整いつつある」などの自由コメントもあったという。

上野会長は、「今回の予備調査における各社の前向きな流れがとどまることなく、行政とも意見交換を行いながら、創薬力の強化やドラッグ・ラグ/ロスの解消に向けて取り組む」と強調した。

◎費用対効果評価の本格活用 「外資系企業のポジティブなムードに水を差しかねない」

今夏の骨太方針に向けて、費用対効果評価の本格活用が焦点となっている。財務省の財政制度等審議会が取りまとめた建議では、「真に革新的な新薬とそうでないものを区分し差別化した価格設定を行うことは、国民の革新的な医薬品へのアクセスを改善することにつながる」として、費用対効果評価の本格活用の必要性を指摘。5月23日に開かれた経済財政諮問会議では、岸田文雄首相が「薬価制度において費用対効果の高い革新的新薬への重点化を図る」と指示している。

上野会長は、費用対効果評価の本格活用について、「患者さんの医薬品へのアクセスが大きく阻害され、患者さんや国民に対し不利益をもたらす。断固反対ということを伝えていきたい」と強調した。24年度薬価制度改革により日本がイノベーションに舵を切ったと外資系企業でもポジティブに受け止められる中で、「日本は薬事承認された後、非常に短期間で償還される点も非常に透明性が高いと評価を受けている。それを今回大きく覆すことによって、ポジティブなムードに水を差しかねないと危惧している」と述べた。

◎「中間年改定は廃止すべき」

25年度に予定される薬価改定については改めて、「中間年改定は廃止すべきだと思っている」と話した。毎年薬価改定導入時には“乖離幅の大きい品目”が問題視されていたが、23年の薬価調査は乖離率が約6.0%に圧縮されたと説明。さらに、物価上昇や賃金上昇など、製薬企業を取り巻く環境も変化する中で、「新薬メーカーだけでなく、ジェネリックメーカーも含めて安定的に医薬品を提供する意味でも中間年改定の要否については慎重に考える必要がある」と強調した。

◎創薬力構想会議の中間取りまとめ 実行フェーズで「これからが正念場」

内閣官房の「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」が5月22日に公表した中間とりまとめについての受け止めも語った。上野会長は創薬力強化に焦点が当たり、中間取りまとめに「医薬品産業・医療産業全体を我が国の科学技術力を活かせる重要な成長産業と捉え、我が国の今後の成長を担う基幹産業の一つとして政策を力強く推進していくべき」と明記されたことから、「私どもに対しても非常にエールをいただいた。ぜひご期待に答えるようにやっていきたい」と意欲を見せた。今後実行フェーズに移る中で、「これからがまさに正念場。今後これらの施策をいかに実現していくか、実行に移していくかに期待しているし、我々も積極的に協力したい」と語った。

日本の創薬エコシステムについては、「日本の中に閉じたものではなく、いかに海外とつながるか、海外の投資や技術を呼び込むかが重要だ。そこにつなげることが重要だ」との考えを表明。海外ベンチャーやスタートアップに日本の薬事制度を積極的に発信するほか、日本にあるバイオクラスターの人材や技術を見える化するなど、製薬業界としても協力していく姿勢を示した。


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