ファイザー ヘルスリテラシーの醸成で “患者中心の医療実現へ” メディカル部門に「PEP」チームを設置
公開日時 2024/06/07 04:52
ファイザーは、メディカル部門に「ペイシェント・エクスペリエンス・パートナー」(PEP)というチームを23年1月に発足させた。“真”の患者中心の医療(ペイシェント・セントリシティ)を実現することが目的。改めて患者の声に耳を傾け、患者と医療従事者のコミュニケーションを円滑に行うことで、最適な治療方法の選択や安心して治療を継続できる環境を支援する「ヘルスリテラシー」にフォーカスした取り組みを進めている。これまでに患者・家族向けに2つの冊子を作成しており、患者団体等の協力を得て患者との交流の機会を重ねている。
同社執行役員でメディカル部門の藤井幸一部門長(医学博士・写真中央)はPEPの活動について、「この間、ヘルスリテラシーの冊子を制作したり、患者さんの声に耳を傾けるアドバイザリーボードを開催したりした。こうした活動を通じて患者さんが、医療従事者の前で自分では声を上げづらいことが分かり、例えばアバターのようなものを使って、声を上げやすくする環境づくりも支援した」と語る。一方で、社内他部門とも患者の声を広く共有することで、「我々は本当に患者さんのために仕事ができているのか? 患者さんの声を聞いているか? ペイシェント・セントリシティってどういうことかを改めて考える社内イベントの開催などにも取り組んでいる」と話してくれた。
◎「ヘルスリテラシー」に関する2つの冊子を作成
特に力を入れた活動が患者向け冊子の制作だ。冊子は「ヘルスリテラシーって何だろう?」と基本的な考え方を解説したタイトル版と、同じタイトルの「コミュニケーション編」の2冊が用意され、一部は患者団体等を通じて患者さんに配布され、活用されているという。
メディカル部門メディカルプラットフォームの五十嵐元リード(写真左)は、「希少疾病とがんのサーベイの結果を見ていて、患者さんとのシェアードデシジョンメイキング(Shared Decision Making:SDM、共同意思決定)がますます重要になっていることが分かった」と強調。「弊社も医療関係者向けの教育に力を入れて、患者さんの声を届ける活動を行ってきたが、やはり患者さんにも働きかけなければいけないだろうという考えに至り、この取り組みを開始することになった」と明かしてくれた。
冊子について五十嵐氏は、まずヘルスリテラシーに関する「情報収集」のところに注力したと振り返る。近年増加するネット情報の信頼性や、信頼できる情報の見つけ方(“か・ち・も・な・い”チェックリスト)など、患者自身が十分理解できるよう漫画を交えて冊子に掲載。加えて、情報の評価と意思決定について、“誰が”、“どうやって”意思決定するか、さらに合理的な意思決定「胸にお・ち・た・か」を掲載し、患者自身が価値観発見シートを使って自身の考え方を整理できるような「意思決定ガイド」も掲載した。
次のステージでは、「コミュニケーション編」の作成に発展する。五十嵐氏は、「正しい知識を持っていても医師に対し、遠慮してしまって、うまく伝えられないことが患者さんにある」と指摘。「忙しそうな医療従事者に質問してもいいの?」といった例示を示しながら、患者側の心構えや、先述した「意思決定ガイド」の活用、さらには相談する家族や友人などがいない場合の対応などについて、こちらも漫画などを用いてわかりやすく解説した構成となっている。
◎患者自身が治療の価値観と経過を振り返る
冊子制作に関わったメディカル部門メディカルプラットフォームPEPの市川円花さん(写真右)は、「治療後に継続して使っていただけるように、“価値観発見シート”のところで、自分の生活で大切にしていることなどを自由に記述できるようにした。例えば患者さんがいまの価値観と、治療が経過して少し経ったときの自身の価値観を振り返ることを想定している」と語る。「いま冊子に日付を書く項目はないが、何年、何月、何日と書くだけで患者さんが自らを振り返る頻度が上がるという話を聞いている。そうした声を今後も取り入れながら(改訂版などを)作っていこうと思っている」と話してくれた。
◎患者自身が自分にあったものを選んで判断する
藤井部門長は、「いま情報が溢れる中で、自分にとって本当に合う治療方法を患者自身で判断するのが難しいと感じている。ヘルスリテラシーという言葉自体はまだ新しく、今から広がっていくと思うが、やはりいつの時代になっても、その時に入手できる治療方法を医療従事者と患者さんが正しく認識し、その中で自分に合うものを選んでいく。ここは時代が移っても同じような感じで進むのではないか。そこを突き詰めていくと、やはりヘルスリテラシーに関する情報を入手し、理解し、患者自身が自分に合ったものを選んで判断するというところで製薬企業もつながっていけるのではないかと考えている」と語ってくれた。