アストラゼネカ ARを活用した医師参加型イベント開催 医師とのエンゲージメントレベルの改善を確認
公開日時 2024/06/25 04:52
アストラゼネカは、MRと医師のエンゲージメント向上を目的とした手段の一つとして「XR:クロスリアリティ」に注力している。XRは「Extended Reality / Cross Reality」の略称で、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)など、4現実世界と仮想世界を融合し、新しい体験を作り出す技術の総称だ。同社はARを活用した医師参加型イベント「NSCLC症例検討 with AR」を昨年から開催。参加した医師側の反応も高評価だったという。
◎ARグラスを装着すると―リアル空間に肺の3D画像
ARグラスを装着すると、実際のリアルな会議室の空間に、肺の3D画像が投影される。ARグラスを装着している別の医師も同じ3D画像を同時に見ることができる。その画像に顔を近づけると肺の細部の血管を覗くことができ、肺がん患者の腫瘍の位置を確認することもできる。加えて、その画像をそれぞれが見たい方向に自由に操作して動かすことも可能だ。症例検討では、指導医師が3D画像に示された腫瘍の位置を示しながら、参加した医師同士で放射線を照射する位置や角度を話し合う。これにより実際のオペ場における放射線療法の手技や手順を参加者全員で認識することができるという訳だ。
◎武田営業部長:「多くの医師から高評価を頂くことができた」
同社オンコロジー事業本部肺がん領域第1営業部の武田誠之営業部長は本誌取材に対し、「当初はVRを使った講演会が目新しいということで先生方に興味を持っていただいた。肺がん領域も多くのWeb講演会が行われていたが、我々の企画に関心を持ってFace to Faceで集まりたいという医師側のニーズもあり、実際に参加した医師の多くから高評価を頂くことができた」と話してくれた。すでに、こうしたイベントの実施回数も10回を超えているという。
一方で、「営業側の立場から言うと、これまではパイロット的に行っており、肺がん領域の私の営業部の中で、まずいろんな発想を現場で展開している。それを今後は横展開できるようにしたい」と武田営業部長は強調する。その上で、社内のITチームのサポートを得ながら、「どういう手続きで進めたらこのイベントが他のエリアでもできるのか、他の領域でもできるのかっていうところを、オンコロジー事業本部の中で共有している」と述べ、今年はARセミナーをがん種に関わらず展開し、「今年は均てん化を進めたい」と語った。
◎ハーシュ・ガンディ氏が語るARの可能性
本誌取材に応じ、ARの可能性について語ったチーフインフォメーション&デジタルオフィサーのハーシュ・ガンディ氏は、「オンコロジー以外にバイオファーマ医薬品の領域への活用も期待している。その一つの候補となり得るのが慢性腎臓病CKDだ」と話す。続けて、「CKDの場合、腎臓の大きさを経時的にトラッキングすることが治療では求められている。腎臓のサイズの変化や病勢の進行を2Dではなかなかトラッキングするのが難しい現状がある。ARゴーグルを使えば、肺がんのときのように医師のモニタリングをサポートすることも可能になるのではないか」と明かしてくれた。
実際にARイベントに参加した医師の反応にも触れ、「“とても分かりやすかった”、“学びやすかった”という答えをいただくことも多い。それにプラスしてドクターのエンゲージメントのレベルも改善している。セッション通じて常にエンゲージメントを維持できているところが良い」と語ってくれた。
別の視点から同氏は、「透析中の患者さんにARゴーグルを装着して頂くことで、少しでも痛みを忘れることができるような仮想世界を体験するといったこともユースケースの一つになり得る」と述べた。このほか、COPD患者を想定した事例を紹介。「自宅でARゴーグルをつけて重症化予防の運動を行うことでアウトカムの改善が期待される。これもゲーミフィケーションの一環として活用できるのではないか」と語り、「社会にポジティブな貢献をしていきたいと考えている」と強調。さらに、「新しいテクノロジーで医師のサイエンスに対する学びを改善し、それが患者さんに対するケアの最適化につながると考えている」と述べ、胸を張った。