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中医協 ケサンラの薬価収載を了承 1日薬価は8560円 留意事項通知で18か月超の投与は再評価求める

公開日時 2024/11/14 06:03
中医協総会は11月13日、早期アルツハイマー病治療薬・ケサンラ(一般名:ドナネマブ)を50mg20mL1瓶 6万6948円円で薬価収載することを了承した。1日薬価は8560円。収載日は、11月20日。最適使用推進ガイドラインとそれに伴う保険上の留意事項通知も同日の中医協で了承された。同剤は承認時に投与期間が「原則として最長18か月」とされていることや、最適使用推進ガイドラインで、中等度以降に進行した患者に投与を継続したときの有効性が確立していないため、18か月を超える投与については再評価などを求めている。留意事項通知は11月19日に発出され、20日から適用される。

ケサンラは、レケンビ点滴静注200mgを最類似薬として類似薬効比較方式(Ⅰ)で算定された。比較薬としたレケンビは18カ月間継続投与が求められるが、ケサンラは添付文書で投与期間が18か月間と定められ、「投与開始後12か月を目安に行われる評価で、アミロイドβ(Aβ)プラーク除去が確認された場合は投与を完了すること」とされていることから、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断された。市場予測は、ピーク時(10年後)に投与患者数2.6万人、販売金額796億円を見込む。

◎日本リリーは比較薬の1日薬価の算出に用いる体重、ケサンラの投与期間で不服意見

製造販売業者の日本イーライリリーは、「1日薬価の算出に用いる体重は比較薬の国際共同第3相試験における日本人被験者の平均体重を用いること」、「投与開始後12か月を目安に行われる評価で、Aβプラーク除去が確認された場合は投与を完了することとされていることから、本剤の投与期間の計算にあたっては臨床試験の結果(12か月で投与完了する患者割合)を考慮することが適切」とする不服意見が出た。これを踏まえ、算定組織で検討した結果、「体重当たりの投与量が設定された薬剤では、通常、成人の場合は50kgを用いて1日薬価を算出しており、臨床試験における平均体重を用いる合理的な理由はない」、「比較薬より早期に投与完了できる点は有用性加算の③-cですでに評価している」ことから、「比較薬の1日薬価の算出に用いる体重は50kg、本剤の投与期間は 18か月とすることが妥当」と判断したとしている。

◎最適使用推進GL MRI検査体制やARIA発生時の判断できる医療機関で

同剤の最適使用推進ガイドラインでは、対象患者として認知機能の低下および臨床症状の重症度範囲が一定の基準を満たすこと、MRI検査が実施可能であること、アミロイドPETまたは脳脊髄液(CSF)検査でAβ病理を示唆する所見があることなどを満たすことを求めた。特徴的な有害事象としてアミロイド関連画像異常(ARIA)が報告されていることから、施設基準としては、日本神経学会の専門医など十分な知識と経験を持つ医師を責任者として配置することに加え、製造販売業者が提供するARIAに関するMRI読影の研修を受講していることも求めた。体制としては、MRI検査が実施可能な医療機関で、ARIAが認められた場合に、画像所見や症状の有無から、本剤の投与継続、中断又は中止を判断し、かつ施設内で必要な対応ができる体制などを求めている。

◎留意事項通知を11月20日から適用 

これに伴って、保険上の留意事項通知も発出される。同剤は承認時に投与期間が「原則として最長18か月」とされており、「初回投与から起算して18か月を超える投与」については、投与の継続が必要と判断した理由の記載を求める。また、最適使用推進ガイドラインで、「中等度以降のアルツハイマー病 による認知症と診断された場合、中等度以降に進行した患者に投与を継続したときの有効性が確立していないことから、本剤の投与を中止し、再評価を行うこと」とされていることを踏まえ、中等度以降のアルツハイマー病による認知症と診断された患者に対して投与を継続する場合は、再評価を行った結果、投与継続を判断した理由の記載を求めている。留意事項通知は11月19日に発出され、20日から適用される。

◎診療側・長島委員 レカネマブとの使い分けや切り替えで「検証、検討可能な体制整備」求める

ケサンラをめぐっては、すでに上市されているレカネマブとの使い分けや切り替えなどについて中医協で指摘されてきた。厚生労働省医薬局医薬品審査管理課の中井清人課長は2剤の使い分けについて、「かなり(両剤が)似ているということだが、用法用量が違うなど条件が違うので、条件を踏まえて、医療現場でご判断いただけると思っている」と説明。良材の切り替えについては、「基本的にはこれは一つの製剤でずっとやっていただくということが大前提」と説明した。

これに対し、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「使い分けや位置づけについては、例えば関係学会等に協力をお願いして、何か参考となるような資料の作成について協力をお願いできればと思っている」と述べた。また、2剤の使い分けについては、「今後そういうような事態が発生した場合に備え、保険診療の扱いはどうするのか、あるいは最適使用推進ガイドラインにどのように記載するのかも検討いただければと思う。しっかりと検証、検討が可能な体制を整えていただくことを検討いただければと思っている」と述べた。厚労省老健局は現在、両剤の使い分けについて研究事業を進めており、今後学会でガイドラインを定める方向で検討を進めていると応じた。

◎支払側・松本委員「当面の市場規模は3万人超、1000億円程度で極端に拡大するものではない」

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、同剤の市場規模に言及。市場予測は、ピーク時(10年後)に投与患者数2.6万人、販売金額796億円とされている。「今後認知症に関する治療の環境が充実していけば、投与患者数が増加する可能性はあると思うが、最適使用推進ガイドラインに沿って安全を十分に確保しながら使用していくことを考えると、当面は2つの薬剤を合わせた全体の市場規模は、レケンビの薬価収載時に想定された3万人を超えるレベル、金額レベルで1000億円程度から極端に拡大するものではないと受け止めている」と述べた。また、「医療現場でケサンラを使用する場合には、ガイドラインに基づきまして、ぜひ適切なタイミングでの投与の完了についてもご判断をお願いしたい」とも述べた。

◎認知症治療薬は原則薬価算定前に個別算定ルールなど行わず

ケサンラをめぐっては、薬価算定や市場規模拡大時の対応について、薬価収載に先立って中医協で議論がなされてきた。この日の中医協総会では、ケサンラを含む高額医薬品に該当する可能性のある認知症治療薬について、薬価算定や急激な市場拡大に際しての対応ルールが了承された。レケンビやケサンラは、薬価算定前に個別に議論がなされたが、今後、同様の医薬品が新規に収載される場合は、原則として認知症治療薬について薬価算定に先立つ中医協での審議は行われないことになる。

具体的には、薬価算定時には通常通りの算定方法で算定し、補正加算は既存のルールに従って評価する。ただし、適切な患者選択や投与判断、ARIAなどの重篤な副作用に対して迅速な安全対策を行う観点から、最適使用推進ガイドラインを策定し、留意事項通知で保険上の取り扱いを明示する。一方で、市場規模については急激な拡大は想定しにくいことから、薬価調査やレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)に基づき市場拡大再算定、四半期再算定の適否を判断するとした。ただし、使用実態の変化により急激な変化が起きる可能性や投与期間の影響を踏まえ、薬価収載後に投与した全症例を対象とした使用成績調査の結果を「注視する」と明記。「四半期での速やかな再算定の適否を判断するため、薬価算定方法又は2年度目の販売予想額にかかわらずNDB により把握することとする」とした。また、費用対効果評価については、レケンビに準じて進める。

また、今後、想定をしていないような特徴を有する新規モダリティの医薬品等が開発され、薬価収載を検討する場合は、必要に応じて中医協総会で取扱いを改めて検討するとした。

◎支払側・松本委員「市場全体の動向も注視していくべき」

中医協総会に先立って行われた中医協薬価専門部会・費用対効果評価専門部会合同部会で、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「医師の知見や新しい検査技術を含めて、今後認知症の治療環境が整備されていく中で、認知症の医療費が全体として拡大していくということが予想される。個別の薬剤だけではなく、市場全体の動向も注視していくべき」と指摘。厚労省保険局医療課の清原宏眞薬剤管理官は、「初期の立ち上がりについてNDBで追っていく。全体の市場規模についても、大きな拡大があればこの場でご審議いただこうかと考えている」と応じた。

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