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日薬連 自主点検で承認書と製造実態に齟齬は44%、3796品目 「軽微」強調する業界に釘 安定確保会議

公開日時 2024/11/19 05:35
後発品を製造する製造販売業者172社が実施した自主点検の結果、対象品目の43.5%に当たる3796品目に承認書と製造等実態との間に齟齬があることがわかった。ただ、現時点では、品質や安全性の観点から自主回収を検討する必要があると判断された品目はないとしている。日本製薬団体連合会は11月18日の「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」に報告した。清田浩座長が「衝撃的な数字」と発言するなど報告件数の多さを指摘する声に加え、「軽微」を強調する製薬業界の姿勢に釘を刺す声もあった。自主回収や行政処分が供給不安につながっていることも指摘される中で、自主点検の継続的な実施による安定供給体制構築の必要性を指摘する声も複数の構成員からあがった。

◎必要な薬事対応終了184品目、薬事対応実施中3272品目、行政に相談中340品目

製薬業界が自主点検を実施するのは、化血研問題後に厚労省が一斉点検を指示した2016年、日本ジェネリック製薬協会が参加企業を対象に実施したのに続き、これで3回目となる。自主点検を繰り返してきたものの、品質問題による行政処分が後を絶たないことから、対象範囲や方法を拡大。日本ジェネリック製薬協会傘下の企業だけでなく、先発メーカーも含め、日薬連傘下の有無を問わず、すべての後発品を対象に実施。点検対象も製造方法に加え、製造の品質試験の方法などを追加したほか、製造担当者、試験担当者に別部門や第3 者がヒアリングを実施するなど、徹底的な自主点検を実施した。

自主点検の期限に設定された10月末までに、対象となる172社、8734品目について自主点検の結果は都道府県への報告を完了。このうち、43.5%に当たる3796品目に承認書と製造等実態との間に齟齬があると報告された。このうち、すでに必要な薬事対応が終了した品目は184品目、必要な薬事対応を実施中の品目数が3272品目、薬事対応が必要か否か行政に相談中の品目数が340品目。

製造方法では、「承認書の記載通りの原材料及び量を仕込んでいるが、全量を一度に投入し混合するところ、実態としては、少量ずつ分割して投入している」、規格及び試験方法では、「pH 測定時の試験溶液量について、承認書では10ml とされているところ、pH メータが浸漬できるように20ml としていた」などの事案が報告された。承認書の記載内容と製品標準書・製造指図記録書をLine by Lineで確認するなど、これまで見逃されてきた微細な例も齟齬があった事例として浮き彫りとなった。

◎平澤参考人「膿を出し切るという意味で細部まで点検し、徹底を求めた」

参考人の日薬連安定確保委員会安定供給検討部会部会長の平澤健司氏は、「今回確認された相違は、各製造販売業者による薬事対応、いわゆる一部変更申請や軽微変更届などが遅滞なく、適切に実施される必要がある。我々業界団体としても、製造販売業者の対応をフォローアップする」と説明。これらの品目の進捗状況も毎月進捗を管理するなど対応を進める考えも示した。

平澤参考人は、「これまでの点検は、製造方法を中心に行ってきたが、今回は規格および試験方法、さらには試薬や試液に関しても細かく確認した。膿を出し切るという意味で細部まで点検し、徹底を求めた。例えば、試薬メーカーの規格が日本薬局方(日局)の試薬規格の項目すべてを網羅しなければ相違であるという形に含めて報告させていただいている」と説明。「相違を解消していくことが重要だと考えている」と述べた。

◎日薬連・豊見構成員「相違があっても仕方ないという文化があるのか」

構成員からは厳しい声が相次いだ。豊見敦構成員(日本薬剤師会常務理事)は、「我々現場では、相違がないものとして患者さんに説明をしている。今のお話をうかがっていると、相違があっても仕方がない、相違があるけれども改善していけばいいというような文化があるという状況でいいのか」と質した。

梶山健一構成員(日本製薬団体連合会安定確保委員会委員長)は、「数字は重く受け止めながら、手続きを最後までやりきるということ、再発していかないよう、定期的に点検を実施し、対応していくということに重きを置き、今後解消することをしっかりやっていきたい」と応じた。まずは、薬事対応を一定期間で終えることを最優先に掲げ、日薬連としてもプロジェクトを通じて進捗を確認する考えを強調した。

今後、業務停止となる企業が出ないか念を押す声もあがったが、梶山構成員は、「仮に、今回の点検の中で不十分な姿勢の企業があるとすれば、今後厚労省の無通告査察も続く。今後はこうしたことは許されないということに、今回の点検を通じて切り替わったと考えている」と述べるにとどめた。

◎宮川構成員 日薬連のレベルを問う 清田座長「モラルの低下と言われても仕方ない」

宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、報告された相違が軽微であることを強調する製薬業界の姿勢に、「いかがなものか」と釘を刺した。「(不祥事などが起きた背景には)技術力の低下、曖昧さがある。一定のレベルにしっかり上げることが非常に重要で、これまでの日薬連の団体としてのレベルはそこまでに達していなかったことが、今回詳らかになったと理解してよろしいか」と述べ、業界団体としての役割を問うた。

清田浩座長(東京慈恵会医科大客員教授・井口腎泌尿器科・内科新小岩副院長)も、「厳しい表現だが、これが現実。かなり衝撃的な数字だと思う。モラルの低下と言われても仕方ない」と断じた。

◎限定出荷の解除へ 自主点検の頻度も議論に「定期的な実施で安心・安全の約束を」

自主点検の頻度も議論の俎上に上った。一條武構成員(日本医薬品卸売業連合会副会長)は、「自主点検は3回目。最初は酷かったが、いま整合性が取れたものがやっと出てきたということ。毎年継続してこれをゼロにしていく。それによって、具体的に限定出荷がどれくらい解除されたかも調べていただきたい」と述べた。

宮川構成員も、「私たち現場にとって重要なのが限定出荷の解除だ。これは、安全・安心なものを世に出せるという約束事ができなければ意味がない。自主点検の定期的に行うのか、今後の対策はどうするか聞いたが、はっきりしていない。日薬連として、安定して出荷することまで言葉にし、実行していただくことが重要だと申し上げている」と述べた。清田座長も、「皆さん思いは同じだ。そのうちに実施する、では困る」と釘を刺した。

梶山構成員は、日薬連が予定する再発防止のためのシステム化の実施状況に関する実態調査の中で、次の自主点検の予定について各企業に確認する方針であると説明。「極端にローテーションの回数に問題があるケースがあれば、日薬連として、信頼して使っていただくために、どのぐらいの頻度でやるのが適切なのか、各社にもメッセージを発信しながら対応していきたい」と応じた。また、自社都合による限定出荷が減ると見通し、これにより玉突きでの他社都合要因での限定出荷が減少することにも期待感を示した。

宮川構成員は、「色々なトラブルがあった品目を多く持っている企業はある程度頻回にやらないといけないし、それがなかったところは1年に1回でいいなど、日薬連と厚労省で情報を把握し、自主点検の回数や内容を定めてほしい」と述べた。

豊見構成員(日薬)も、「調査をするだけで終わりではない。業界をあげて自主点検の手順や体制がどうあるべきか、検討していただきたい」と述べた。

◎川上構成員「原因や背景調査しなければ再発防止や対策につながらない」

再発防止の必要性も指摘される中で、川上純一構成員(浜松医科大学医学部附属病院薬剤部 教授・薬剤部長)は、「なぜ、44%のものに相違がある状態でこれまで留め置かれていたのか、原因や背景を調査しないと再発防止や対策につながらない」と指摘。梶山構成員は、「なぜ起きたのかを詰めなければこれまで時間をかけて点検した価値が伴わない。日薬連としても継続して分析し、他社で起きたようなことが経験として再発防止につながるような共有財産となるようなイメージで分析をしていきたい」と述べた。

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