中医協総会が12月26日に「2026年度薬価制度改革の骨子」および「2026年度費用対効果評価制度改革の骨子」を取りまとめたことを受け、日薬連、製薬協など製薬業界のトップがコメントを発表した。日薬連の安川健司会長は、市場拡大再算定及び持続可能性特例価格調整における「共連れ」ルールの廃止、ならびに薬価の下支えの充実が示されたことに対し、「経営の予見性を高める内容と考えており、前向きに受け止めている」とコメントした。製薬協の宮柱明日香会長は、業界提案事項の対応が先送りされたことについて、「イノベーションの継続的な創出に負の影響を与えるもの」と指摘し、今後も継続して提案する姿勢を示した。

◎宮柱製薬協会長「市場実勢価に基づく薬価制度の運用は限界」　抜本的に見直す時期

宮柱製薬協会長はまた、平均乖離率が縮小する中で、「市場実勢価格に基づく薬価改定を基本にしてきた薬価制度自体を引き続き運用していくことはもはや限界にきており、抜本的に見直す時期にある。今後早急に議論を開始すべきと考える」との見解を示した。

【日薬連・安川会長コメントの要旨】

本年の薬価制度改革の議論において、市場拡大再算定及び持続可能性特例価格調整における類似品の適用(いわゆる「共連れ」ルール)の廃止、ならびに後発品を中心とした医薬品の安定供給確保に向けた薬価の下支えの充実が示された。これらは経営の予見性を高める内容と考えており、前向きに受け止めている。

しかしながら、本骨子は基本的に薬価引き下げに軸足を置いた内容となっており、産業界が求めてきた薬価のベースアップや革新的新薬の特許期間中の薬価維持など多くの課題が残されている。このままでは医薬品の安定供給や革新的新薬への迅速なアクセスの確保等に支障をきたし、日本の医薬品産業の持続性が危ぶまれる。

医薬品産業は、国民の命と健康を支える国家の重要なインフラであると同時に、資源の乏しい日本において、外貨を稼げる数少ない基幹産業だ。先般、日本成長戦略会議において、「創薬・先端医療」が 17 の戦略分野の一つに位置づけられたことは、国の高い期待の表れと受け止めている。国民の健康維持・増進と国の持続的な経済成長をともに支える体制構築に向け、従来の枠組みにとらわれない大胆な制度改革を進めることが重要だ。

【製薬協・宮柱会長コメントの要旨】

「2026年度薬価制度改革の骨子」および「2026年度費用対効果評価制度改革の骨子」において、①費用対効果評価制度の検証が実施されること、②市場拡大再算定（特例を含む）の類似薬への適用（共連れ）を廃止－が明記されたことについて評価する。なお、費用対効果評価制度については、見直されるべき論点を提示したうえで、検証の結果を踏まえた望ましい制度のありかたを目指して、今後も精力的に議論に参画する。

一方で、以下の業界提案事項に関しては、対応が先送りされており、今後も継続して提案する。① 革新的新薬の薬価算定方法（現行の原価計算方式をカバーする形で類似薬の選定を広く行うなどにより革新性が適切に評価される仕組みとする）、②革新的新薬薬価維持制度（平均乖離率が縮小している中で乖離率を基準に薬価維持品目を決める方式は改めシンプルに薬価を維持すべき）、③特例市場拡大再算定・持続可能性特例価格調整（合理性に乏しい再算定は廃止すべき）。

 現下の経済情勢において、公定価格も経済・物価の動向を踏まえるべきとの議論のもと、診療報酬本体が引上げとなることについては、医療の持続性の観点から評価されるべきであるが、この考え方が診療報酬の一部である薬価に反映されなかったことはイノベーションの継続的な創出に負の影響を与える。さらに、米国の最恵国待遇制度（MFN）に関しては骨子に記載された通り、国際情勢を考慮して、随時・機動的に対応がなされることを期待している。

最後に、平均乖離率が縮小していく中で、イノベーションを損なうことなく、財政持続性との両立を図るために、これまで行われてきた市場実勢価格に基づく薬価改定を基本にしてきた薬価制度自体を引き続き運用していくことはもはや限界にきており、抜本的に見直す時期にある。今後早急に議論を開始すべきと考える。